アドリアーノさんとアクロのお話です。
先程の「信じてきたもの」の続き的なノリで…
こういうお話好きです&この二人の関係もちょっとずつ進歩したらなって←おい
*attention*
アドリアーノさんとアクロのお話です
シリアスなお話です
「信じてきたもの」の続き的なお話です
全てを知ったアドリアーノさんの反応を書きたかったのです…
アクロはこういう時一生懸命慰めようとするだろうな、と…←
これから少しずつ各々の関係が変わっていったらいいなと言う願望←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
穏やかな夜。
柔らかな月明かりだけが、城のなかを照らしていた。
そんな時間帯……
任務を終えて帰ってきたアクロは城内を歩き回っていた。
いつもならば自分の部屋にいるはずの、赤髪の少年。
彼の姿が、部屋になかったからだ。
大分遅い時間。
彼の部屋を訪ねて、彼が寝入ってしまっていたら、
自分もさっさと部屋に戻って寝ようと思っていたし、
もし起きていたら少しだけ話をしてから部屋に帰ろうと思っていたのだが……
「アドリアーノ、どこいっちゃったんだろう……」
部屋に彼の姿はなく、自分の部屋にも来ていない。
図書館と中庭を探した末に彼がたどり着いたのは、静かな食堂だった。
さすがに深夜のこの時間、此処にいる人間は決して多くない。
しかし確かな気配をひとつ感じて、アクロは食堂のなかにはいったのだった。
部屋の中の明かりはすでに落とされている。
しかしすでに夜の闇に目を慣らしたアクロにはそんな状態でも室内が見える。
部屋の中にはひとつの影。
短い赤髪の少年の姿……――
アクロはその影に歩み寄りながら、彼に声をかけた。
「アドリアーノ?こんなとこにいた」
やっと見つけた、とアクロは言う。
しかしその声にも、アドリアーノは振り返ろうとしない。
声をあげることもしない。
ただ、びくりと一度体を跳ねさせただけで。
そんな彼の様子に、アクロは怪訝そうな顔をした。
いったいどうしたのだろう?
そう思いながら、アクロは彼に歩み寄っていった。
「……どうしたの?」
そういいながら、アクロはアドリアーノの顔を覗き込んだ。
そして、驚いたように大きく目を見開く。
「!アドリアーノ?!何で、泣いて……」
アドリアーノの顔を覗き込んだ彼は、そう呟いた。
アドリアーノは、泣いていたのだ。
静かに、涙をこぼしていた。
立ったまま泣いている彼に、アクロは問いかける。
いったいどうしたのか、と。
彼が泣いているところは、今まであまり見たことがなかった。
しかも、この様子……
ただ事では、なさそうだ。
アクロの声に、アドリアーノはそっと顔をあげた。
そして、小さく掠れたような声で、言う。
「俺……今まで一体、何のために……っ」
震える声で、アドリアーノはそう呟いた。
それを聞いて、アクロは赤い瞳を細める。
静かな月明かりに照らされたプラチナブロンドの髪が柔らかな風に揺れる。
アクロはそっと、アドリアーノの肩に手を置いた。
びくりと跳ねる、彼の体。
それを見つめて少し眉を下げつつ、アクロは彼にいった。
「アドリアーノ、落ち着いて?
いったいなにがあったの……?」
一体何があって泣いているのか。
一体どうしてこんなところに一人で……
そう、アクロは問いかける。
アドリアーノは俯いたまま、自分の顔を覆う。
そして、弱い声でいった。
「誤解、だったんだ……全部」
「え?誤解?」
何のこと?とアクロは彼に問いかけた。
彼の言葉の意味が、よくわからない。
アクロの反応を見て、アドリアーノは弱い声で言葉を続けていった。
「彼奴が……リエンツィが悪いんじゃ、なかった……
俺の、勘違いだったんだ」
クオンに言われたこと。
気づいた真実。
自分がしたことの、重さ……
それを思い知って、アドリアーノは泣いているのだった。
泣きながら、彼はクオンに聞いた話をする。
アクロはそれを聞いて、目を丸くした。
「勘違い……誰から、その話を?」
アドリアーノに、アクロは問いかける。
その問いに、アドリアーノは答えた。
「お前の、上官……クオンに。
リエンツィから聞いた話から、推測して……」
彼は、話してくれた。
本当に、お前が恨むべき相手はリエンツィなのか、と。
お前のその憎しみは果たして正当なものなのか、と。
そんなアドリアーノの説明を聞いたアクロは何度か赤い瞳を瞬かせた。
そして小さく息を吐いた後、彼に言う。
「クオン様に聞いたのか……
それから誤解だって、そう思ったの?」
リエンツィさんのこと、とアクロは訊ねる。
その言葉にアドリアーノはゆっくりと首を振った。
そして掠れた声で言う。
「思った、んじゃなくて……
確信した、んだよ……俺が、間違ってた……」
自分の誤解だった。
リエンツィに攻撃を仕掛けたのは間違いだった、と彼は言う。
そして彼は深々と溜め息を吐き出しながら顔を覆って、震える声でいった。
「誤解で、勘違いで、俺は……彼奴を、殺したんだ。
俺は彼奴に人殺しだっていったけど……」
そこで彼は一度言葉を切る。
そして、絞り出すような声で、いった。
「人殺しは、俺の方だよ……」
その言葉にアクロは大きく目を見開く。
かすれた、苦しげな声。
そこにはありありと後悔が滲んでいた。
アクロはそんな彼を見て、顔を歪める。
そして暫し言葉に悩んだ末、そっとアドリアーノの体を抱き寄せた。
いつもならば慌ててもがく彼。
しかし今日はそれがない。
アクロが抱き締めた瞬間にびくっと体を強張らせはしたけれど。
「大丈夫だよ、アドリアーノ……
良かったじゃない。
ちゃんと、誤解が解けて」
誤解だとわかって良かったではないか。
アドリアーノも嫌いたくて彼のことを嫌っているようには見えなかったから。
だからよかったじゃないか、とアクロは言う。
彼を責める気は毛頭なかった。
寧ろ、ほっとしていた。
彼とリエンツィが和解したら、自分もアドリアーノともっと表でも仲良く出来る。
リエンツィとだって、話すことが出来るだろう。
すべてが、丸く収まるはずと思っていた。
けれど、アドリアーノはふるふると首を振る。
そして、涙で滲んだような声でいう。
「でも……っ、俺は……これから、どうしたら……
ずっと……彼奴に、リエンツィに復讐するために此処にいたのに……」
そう。
この世界に、この城に飛ばされて以来、
アドリアーノはいつもリエンツィをおっていた。
彼に復讐するつもりで。
でも、その必要性はなくなった。
むしろ、今までとっていた行動の意味も……――
だから、思うのだ。
これから一体どうすれば良いのか、と。
自分が此処に居た意味は?
自分が此処に居る意味は?
アドリアーノはそう呟く。
アクロはそれを聞いて顔を歪めた。
そしてそのまま、アドリアーノを抱く腕に力を込める。
「そんな悲しいこと、言わないでよ」
まるで此処に居る意味がなくなったみたいな言い方。
そんな言い方はやめてくれ、とアクロは言う。
「アドリアーノが此処にいる意味、あるよ。
……俺の傍にいてよ」
アクロの言葉に、アドリアーノは大きく目を見開いた。
その瞳からもう一筋、涙が伝って落ちていく。
アクロは一度腕を緩めた。
そしてアドリアーノの目の端から伝い落ちる涙をそっとぬぐった。
そしてにっこりと微笑みかけながら、いった。
「これからは色々、変えていけるだろ……?
リエンツィさんとだって仲良く出来るだろ。
クオン様とだって話せるようになるだろうし……
俺は、昼間には部屋から出られないけど……
食堂で一緒にご飯食べるのだって、見咎められなくて良くなるだろ?」
色々変わるじゃないか、とアクロは言う。
アドリアーノはそれを聞いて"それもそうだけど、さ……"と呟く。
それはそうだと思う。
けれど、自分のしたことは変わらないわけで……
「……大丈夫だよ、アドリアーノ。
きっとリエンツィさんはお前のこと嫌わないだろうし、
何より……なにがあったって、俺はお前を嫌わないし、離さないからさ」
そういって、アクロはアドリアーノを抱き締める。
アドリアーノはそんな彼の肩に顔を埋めて、震える声で泣き出した。
いつもならば羞恥を感じて離れるけれど、今はこの温もりに安心出来た。
何をどうしていいのかわからない。
そんな思いを拭ってくれる、目の前にいる、白金色の髪の少年の温もりに……――
―― ほどけたものとみえなくなったもの ――
(ほどけた誤解。見えなくなった目標
嗚呼、俺は一体何のために……?)
(どうして良いのかわからなくなったと言うのなら、その目標を作り直せばいい。
俺は、ちゃんと此処にいるから。お前のことが、好きだから…)