連れ立って来店したのは銀髪の青年と緑髪の娘だった。娘は赤ん坊をあやすように抱いている。
「いらっしゃいませー!」
フィルがにこやかに告げると、娘もまた微笑んだ。
「こんにちは、フィルちゃん」
「よお。イルにソーマ、一家揃って買い物か?」
「やあ、ヘリオス。早速訂正させてもらうがこれはただの買い物ではなく夫婦間の愛情に基づくデートだよ」
青年は表情を変えずに淡々と告げる。
即座にヘリオスの眉間に皺が寄った。げんなりと額に手を当てる。
「頼むソーマ。惚気話は他所でやってくれ」
「それは独り身のやっかみかい?」
「やかましい」
ソーマの言葉は意味ありげな響きを含み店内を流れ落ちたが、フランにはその意味がわからない。
ヘリオスは困ったように苦笑するイルに鉾先を変えた。
「笑ってんじゃねえぞイル。お前の夫が愛情とかなんとか恥ずかしいこと抜かしてんだからどうにかしやがれ」
イルは指先で赤ん坊をあやしながら肩を竦めた。
「ごめんね、ヘリオスくん。わたし、ソーマくんのこういうところも含めて好きになっちゃったから、あんまり強く言えないの」
「こいつら……」
ヘリオスが頬をひきつらせるのを眺めながら、フランはなんとなくヘリオスとイルは相性が悪そうだと思った。