※創作キャラでアリスパラレル
ある昼下がり、木陰でフランがウトウトとしていると、
「遅刻だ!遅刻だ!」
突如、大きな声が響き渡りました。ビックリして飛び起き、見ると、なんだか白くて大きなものがこちらへ走って来ます。白いクマでしょうか?
いえいえ、時計を確認しながら慌てているそれは、まさしく白ウサギのラザでした。
「なんだわん太か」
フランは早くも二度寝の体勢です。だって、ラザことわん太が二足歩行で外套を着て人語をしゃべるなんてちっとも珍しいことでは無いからです。
「……ってそんなわけないじゃん!!?」
フランの知るわん太はただの白くて大きな犬です。そのはずでした。
二本の足で立ったり、あまつさえ走ったりしません。
犬耳がウサギのそれになっているはずありません。
しっぽはもっと長くてフサフサでした。
チョッキなど着ているはずもないから懐中時計を取り出すことは不可能です。
何より、人間の言葉を理解してもしゃべれませんでした。それも渋く低い声でなんて。
いっそ他人(?)の空似ならどんなに良かったか。フランの知るラザとは全然違うのにーーでもそれは間違いなくラザ以外の何者でもないのです。
「ああ遅れた!ああ遅刻だ!」
余程焦っているのか、ラザはこちらに気付くことなく通り過ぎていきました。
「まってよ!!」
フランは慌てて立ち上がりーーおかしなことに気付きました。
白と青な半袖なエプロンドレス、そのスカートがふんわり広がりました。おろした髪をリボンカチユーシャが、足をポップなしましまタイツが飾っています。
「なにこれぇ!?あたし、一体いつきがえたの!?しかもこんな服なんて持ってないのに!!」
フランにはわけがわかりません。だけどグズグズしているとラザが行ってしまいます。
彼を追いかけ、フランもまたウサギの穴の中へ飛び込みました。
戻る時はどうするのかなんてまったく考えもせず。