フランはわん太を連れて町へ出かけました。商店街を歩いていると、オープンカフェの一角にテロルの姿が見えました。
「さがす手間がはぶけたね」
テロルはメニュー表を前に悩んでいるようでした。彼女の頭上で大あくびをしていた使い魔サルファーが、近づいて来るフランに気付いて尻尾を逆立てました。
「テロルちゃん、テロルちゃんはまほうつかいだよね。まほうでわん太とお話することってできる?」
テロルは大きく伸びをしました。
「動物と意思疎通する魔術、あたし習得してないのよね」
「ええっ、なんで!?」
驚くフランを尻目に、テロルはしれっとした顔をしています。
「だって地味じゃない。そんなの覚えるくらいなら、その時間を他の魔術の習得に回すわ」
「うはぁ……。テロルちゃんはまほうでドカーンドカーンてする方がすきなんだったね」
フランは呆れをこらえてサルファーを見上げました。
「サルファーならわん太とおしゃべりできる?」
「無理よ。だってこいつ犬じゃないし、そもそも動物でもないし、魔物だし。動物との通訳なんて出来ないわ」
「そっかぁ……」
「まぁニュアンス程度ならわかりますけどね。でもそれだって、人間さん達と精度は変わらないと思いますよ」
悄然とするフランに、サルファーがやんわり言いました。