イーア・アストライアー
男。
銀髪緑眼。
一人称は、ぼく。
父親に似て思慮深く、母親に似て純朴で、いつも面倒を見てくれたロジーに似て面倒見が良い。良いところを受け継いだお子さん。
エクセドラさんちの姉弟とよく遊ぶ。
下に妹や弟がいてもいいかも。まだ考えていないけど。
※フランの話の時間軸から十年後
※息子から見たアストライアー夫妻
※途中で力尽きました。
「プロポーズはやっぱり父さんからだったの?」
「な、なな、何いきなり!?」
母さんの手から音を立てて食器が滑り落ちた。お皿は木製だから割れなかったけど、そんなにうろたえることだろうか。確かに夕飯の後片付けをしながらする質問じゃないけど……。でも、それでも、母さんはちょっとうろたえやすいところがある。
ぼくは母さんを見上げた。優しい眼をした女の人。
ぼくの髪と肌の色は父さん譲りだけど、眼や顔立ちは母さんとおんなじだとよく言われる。
「そんなにびっくりする? 父さんといつもいちゃついてるくせにさぁ」
父さんは職業柄、夕飯を食べてから出勤する。出かける前にはちゅーとかしている。それは構わないけど、いい加減息子の前では止めて欲しい。ぼくはもう十歳だ。ついでに、あと五年もすれば成人だ。子供の頃は何とも思ってなかったけど、段々と気まずさを感じるようになってきた。
「年甲斐とか、色々とさ、あるよね……」
「イーア……?」
母さんが怪訝そうな顔をしたので、話を戻すことにした。
「今日、広場に行ったらさ、フランちゃんがいてさ、『今日はプロポーズの日なんだよ』って語り口でヘリオスさんのプロポーズ事情を語ってたのさ」
とても成人済みとは思えない程に幼い少女の姿を思い出す。いつも彼女は弟と老犬を伴い、昼下がりの広場にやって来てはお茶会をしている。紅茶と手製のお菓子をみんなに振る舞い、おとぎ話を語っている。その内容は今日みたいに昔話の時もあれば、まるっきり創作の時もある。
ぼくだけじゃない。町の子供たちもフランちゃんのお話がだいすきなんだ。
「きっとね、あの話を聞いた人はみんな、自分の親はどうだったんだろうって思うに決まってるよ!」
母さんは「あの子には作家の才能があるのかな」と笑った。
「で、母さんたちのプロポーズはどんなだったの?」
「待って。わたしに訊くよりソーマくんに訊いた方が……」
「父さんにそんなの訊いたら、夜明けまで延々と語り続けちゃうよ。父さんは母さんのことならいっぱい語れるんだから。……だから母さんしかいない時をねらったのさ」
ぼくが身を乗り出すと、母さんは苦笑を返した。降参、と言うように手を上げる。
「洗い物しながらでいいなら……話そうか?」
「うん!」
「わたしはね、人生で二度もプロポーズされたことがあるの。イーアの予想通り、ソーマくんからね」
母さんはちょっと照れくさそうに、でも幸せな顔をして語り始めた。
「これは、ある男の子が好きな女の子と、その女の子が好きな男の子のお話。今もずっと続いている物語」