話題:浮気
続き。
寝ている彼に触れるか触れないかくらいのキスをした。
最後だから、と言い聞かせて。
そしたら、キスをされ返された。
私を逃さないかのようなキス。
必死だった。
いつまで続くのかわからない、貪るようなキス。
それに酔いしれていたいのに。
酔いしれて忘れてしまうのが怖くて、理性を保って、必死に身体に刻み込もうとした。
時間が、止まればいいのにって。
あなたと二人、この世界に取り残されていたい。
幸せすぎた。
泣きながらキスをした。
あなたに気持ちなんてないのにね。
それでも構わなかったの。
あたしはあなたに溺れてた。
走馬灯のように駆け巡る思い出。
初めて会った時。旅行に行った時。喧嘩した時。彼女がいるとわかった時。わかって離れようとした時。その後も隠れて浮気し続けた日々。
全部、幸せだったなんてお世辞にも言えない。
でも、大事だった。
あたしには消したい過去なんかじゃないよ?
今でも元カノって言ってくれること、あたし誇りに思ってるよ。
浮気相手だと自覚してるから。
都合のいい女だとわかってるから。
ああ、あなたにもう会いたい。
もう、会えないのにね。
話題:浮気
彼と会ってきました。
数ヶ月ぶりに会う彼。
相変わらずの遅刻。
相変わらずの会話。
あまりにも、全てが普通すぎて。
ありきたりで。
何も違和感もなくて。
この時間がまた来週、再来週って続いていくんじゃないかってくらい。
彼との時間は居心地が良かった。
でも、最後だから。
ふとした瞬間に、あたしは一点を見つめて、涙がこぼれるのを我慢した。
行ってなんかほしくなかった。
あたしには彼が必要だった。
大好きだった。
会ってやっぱり思い知った。
離れたくなんかない。
そう思った。
もう手遅れだけれども。
時間はどんどん過ぎていって。
店を出ることに。
そこで、あたしは帰るべきだったんだ。
でもあたしは彼についていった。
彼との最後の時間、少しでも多くしたくて。
それがもっと自分を苦しめることになるのにね。
あたしはやっぱりバカだ。
家に着いて、彼の片付けようとして片付けられてない荷物を見て。
彼の部屋を見て。
匂いを吸い込んで。
目に、鼻に焼き付けようとした。
相変わらずの彼は、いつものようにあたしの膝枕の上でテレビを見て。
眠り始め。
あたしはその彼の寝顔を見て、頭を撫でながら、泣いた。
もう会えなくなる彼を想って。
静かに泣いた。
まだ忘れられない。
そう思った。
ああ、あたしきっとずっとこの人を好きなんだろうなって。そう思った。
風邪をひくよって言って、布団に潜り込む彼。
あたしは躊躇したけれど、その隣にそっと寄り添った。
当たり前のようにね、彼は私を包み込むの。
あたしにはもう気持ちなんてないくせにね。
それを知ってても、受け入れてくれる彼にあたしはいつも甘えていた。
彼をずるいというけれど、あたしも同じくらいずるいんだ。
ごめんね、いつもあなたのせいにして。