目を覚ますと世界が一変していた。
居間の一室で、窓ガラスに反射する自身の姿を見て宿儺は唖然とする。
呪印のない顔、呪力のない幼い身体。混乱する中、襖が開く音がして後ろを振り返ると、見覚えのある顔が現れた。
「宿儺、あのさ…」
何か言いかけたのを無視し、宿儺は反射的に相手の胸倉を掴みかかった。
「小僧…!何だこれは…!」
自身と同く幼い姿の虎杖の顔は恐怖に引きつる。堪えようのない殺意に促されるまま、宿儺は虎杖を引き倒し馬乗りになると、首を絞め始めた。体重をかけながら力を込めていく。
「答えろ…!何をした!」
虎杖が苦しそうに呻きながら目尻を濡らす。
「おい!何をしてる!」
割って入った声と共に、宿儺は身体を後ろから引きはがされた。見ると、祖父のワ助が血相を変えている。
「放せ!」
宿儺は暴れるが、振りほどけない。
「お前な、兄弟喧嘩の範疇超えてるだろうが」
その言葉に宿儺の動きが止まる。今、なんと言った?と祖父の顔をまじまじと見る。
「悠仁を殺す気か!」
正面を向くと、倒れ込んだままの虎杖が咳込んでいる。
次の瞬間、強烈な頭痛と共に脳裏に覚えのない記憶が走る。宿儺は頭を抱えてしゃがみ込む。
いや、覚えのある記憶とも言えた。
それは、宿儺と虎杖は双子で祖父と三人で暮らしているというものであった。
虎杖は怯えた目で宿儺を見上げている。
大丈夫か、と叱咤から心配に切り替えている祖父の横をすり抜けて、ふらふらと宿儺は自分の部屋へと行った。
「何が起きている」
宿儺は額に手を当てて考える。2つの記憶が混濁しているようだった。
呪いとして生きた記憶、人間として今まで生きた記憶。だが、どちらも本物の記憶であると知覚している。
今いるここが自室である事も知っているのだ。だからこそ、異常だった。
部屋の隅にベッドが2つ並んでいる。いつも窓際のベッドで自分は寝ている。全て知っている。
判然としない中、虎杖がそろりと部屋を訪れた。
「宿儺、ごめん」
じろりと睨むと虎杖は怯えた顔をする。
「冷蔵庫に入ってた宿儺の分のプリン食べたの怒ってるんだろ?」
「は?」
何を言っているんだオマエはという顔を向けるが、虎杖はぎゅっと自分の服の裾を握りながら謝る。
ふざけている様子ではない。本気で勘違いして謝っているようだった。
強烈な違和感。嫌な予感が脳裏をよぎる。
「…小僧、オマエ、まさか覚えていないのか?」
「…?何を?」
きょとんとした瞳。宿儺はここにきて虎杖が自身に対して全く敵意がない事に気付く。
「俺とオマエは…何だ?」
「え」と困惑する虎杖。「兄弟だろ?」
不思議そうに答える虎杖に宿儺は驚愕する。そして、目の前の虎杖は前の世の記憶を有していないと確信した。
何とかしなければならないと頭の中で警報が鳴っているかのようだった。
この悪夢から早く冷めなければならない。
宿儺は入り口に立っていた虎杖を部屋に引き入れドアの鍵を閉めた。今度こそ邪魔は入れない為だ。
入口横にある机のペン立てからハサミを掴むと、素早く虎杖の胸に突き刺した。
ドッという感触と心臓に達する感触。
虎杖は目を見開き苦しげに吐血する。宿儺はハサミを引き抜くと再び胸に突き刺す。何度も何度も、何度も。殺しきるまで何度もハサミを振り下ろした。
悪夢はこれで覚めるだろう、そう思って。
はっと意識が覚醒する。
寸前まで確かに握っていたハサミが見当たらなかった。それどころか、場所が自室ではない。居間である事を認識した瞬間、背後の襖が開いた。虎杖が立っている。
「宿儺、あのさ…」
恐々と口を開く虎杖は先ほどの惨状を知らない顔だった。
何故だ?オマエは今、俺に殺されただろう。
虎杖は言葉の先を紡ぐ。
「宿儺の分のプリンだけどさ…」
宿儺は虎杖の首を掴み、壁に押し付けた。無言できりきりと締め上げる。
動揺を内に、状況を考える。全てが理解できないでいる。
苦しむ虎杖の顔を見つめながら、ふいに廊下を踏み鳴らす音が耳に入った。宿儺には誰が来るのか分かった。
現れた祖父は二人を見ると「こら!何してる!」と顔色を変え、宿儺を引き離した。
受ける叱責を他所に、宿儺は確信した。時間が巻き戻っていると。
ちらりと虎杖に目を向ける。怯えた顔がこちらを見ている。
宿儺はぎりっと歯を鳴らし、俺に呪いをかけたな、と目で訴えた。
その後、常用確認と整理の為に何度か虎杖に手をかけるが、必ず時間が元に戻る。どんな殺し方をしてもだった。
虎杖の死を感じた瞬間、自身も引きずられるように死に時間が戻る。
コイツの事だ、まだ何かある筈だと考え、試しに、居間で昼寝をしていた祖父を殺そうとした。案の定だった。
殺意を持って近付いた瞬間、尋常ではない頭痛に苛まれ断念する。
そして、それは殺意だけではなかった。
思い返せば、祖父に後ろから羽交い絞めにされた時、力が全く入らなかったのだ。
宿儺は虎杖以外の人間に対して、危害を加えられない身体になっていた。ならばと、宿儺は自死を試みた。
だが、すぐに目が覚めて時が戻っている事を目にし、自死も叶わない世界だと知る。
「宿儺、ごめん」
自室の一室で、何度目か分からない謝罪を虎杖は口にしていた。宿儺は同じ内容の謝罪にうんざりしていた。
謝罪するならこの世界をどうにかしろ、と目でなじる。
厄介なのは、虎杖が記憶を全く持っていない事だった。宿儺の事をやや気難しい弟とでしか思っていない。
だが、自分が自分であるようにコイツもコイツな筈だと宿儺は思う。
ずっと下を向いている虎杖に一瞥をくれ、苛立ち交じりに溜息を付く。
「もう、良い」
目障りだった。だが、完全に突き放す訳にもいかない。まずは記憶を取り戻させる事が重要と考えた。
しかし、記憶を取り戻したところで、はい分かりましたと呪いを解くとは到底思えない。
だが何もしない訳にはいかない。
記憶を取り戻させる事で、何か手掛かりになるかもしれないと僅かな可能性に賭けるしかない状態だった。
呪力がなく、力も振るえず、死すら叶わない。全ては虎杖の呪いである。
自由を得る為に、宿儺はしばらく人間として、兄弟として生活する事を選ぶ。
因果を断ち切り、自由を得た暁には、必ず虎杖に報復すると心に決めて。
小学校。クラスの一室にて虎杖は友達と楽しそうに談笑している。後ろの席で宿儺は頬杖をつきながらその様子を眺める。
記憶が戻らないか常に監視するようにしていた。この日課を何度も繰り返す日々。宿儺は飽いていた。
ふと虎杖と視線が合う。宿儺はうっとうしく感じて目を逸らす。
虎杖が友達と輪から外れ寄ってきた。
「なぁ、宿儺。宿儺もみんなと遊ぼうぜ」
この誘いも幾度目か、遠慮のない舌打ちが零れる。
「寂しくね?」
「話しかけるな、目障りだ」
そう言うと宿儺は立ち上がり教室の出口へと向かう。
あっという虎杖の声を無視する。ずっと監視していても疲れるだけであったし、油断すると衝動的に殺しかねなかった。
実際兄弟ごっこをする羽目になってからも何度か殺めた事がある。
宿儺が廊下に出る時、入ってきたクラスメイトの4人集団の一人とぶつかる。
「いって!」と大げさな声を漏らすクラスメイトを無視して宿儺は出て行く。
その様子を見ていた虎杖の元に友達が集まる。
「お前らって双子だけどホント正反対だよな。性格全然似てねぇ」
「うーん。それもだけど、なんか嫌われてるんだよな俺」
「喧嘩でもしたん?」
虎杖は困った表情を浮かべる。
「そんな覚えないんだけど、…でも多分なにかしたんだろうなって思ってる。それに…」
そこまで言いかけて虎杖はやめた。
ふと、廊下を見ると先程、宿儺とぶつかったクラスメイト達が何か話した後、教室に入らずどこかに去っていたのが目に入った。
校舎の裏庭で風に当たりながら宿儺はため息をつく。
「疲れる…」
人間の真似事は退屈であると痛感する。変わり映えのない日常。いつ終わるとも知れない空虚な日々をいつまで続ければ良いのかと、つくづくうんざりせざるを得ない。
このまましばらくここで落ち着くかと思っていると人の気配を感じる。
「あ、いたいた」
先程、ぶつかったクラスメイトの集団が宿儺に向かってきていた。
宿儺は変わらず無視を決め込んでいたが、一人が宿儺の肩を押す。明確な敵意を感じる。
「虎杖、お前、生意気なんだよ」
残りの3人が宿儺の周りを囲む。
「兄貴の方もムカつくけど、お前はもっとムカつくんだよ。いっつも一人のくせして、偉そうな顔してよ」
くだらん、群れで気が大きくなるのは、どうしてこうも哀れなのかと内心言い捨てる。
「こいつ!」
表情だけで馬鹿にしている事を察した一人が、宿儺は強く突き飛ばす。
思いのほか力が強く宿儺は地面に倒れた。4人が楽しげに見下ろしている。
宿儺の拳に力が入る。地面の土が爪に入るのも気にせずに。
呪いにより、この4人には殴りの一つも喰らわす事は叶わない。何と非力な事かと宿儺は苛立つ。
ギロリと睨みを向けると、4人は一斉にビクりと怖気付く。
「おい!お前ら何やってんだ!」
声のした方を全員で見ると、遠くから虎杖が走ってきていた。
「げっ」という声を漏らす面々。迎え撃とうと体勢を整える前に、虎杖の飛び蹴りが一人に炸裂する。
助走のついた一撃は相手を軽々と吹っ飛ばす。羽交い絞めにされが、正面に立つ者に殴られるが蹴りを入れ返す。
「弟に手を出すな!」
そう言いながら後ろの者に肘で脇腹を付き、振り返りながら拳を入れる。
宿儺はその光景を地面に座り込んだまま、見ている。
何だこいつは、というのが率直な感想だった。
虎杖には、自身はやり返す事もできない非力な弟にでも見えるのだろうと思う。
そして、自身にはない力を振るうその姿に羨望ではすまない明確な殺意が湧く。
ふと、宿儺は気付く。圧勝かと思われた虎杖の後ろにゆらりと立つ者が見える。最初に飛び蹴りを受けた者が起き上がっていた。
軽く助走を付けると、背後から力一杯、虎杖を突き飛ばした。
「うわっ」と虎杖が短く声をもらす。
意図してかは不明だが、そこには泥の入った水たまりがあり、勢いよく倒れ込む。
ばしゃりと大きな水音がする。
「い…行こうぜ!」
4人は今の内だと言わんばかりに一目散に走って去って行った。
「いってぇ…」
虎杖はそう言いながら、上体を起こす。そんな全身泥まみれの虎杖を見て、宿儺は思わず口元が緩んだ。
立ち上がり虎杖に近付くと、改めてその姿を見下ろす。
「間抜け」
愉快でたまらず、遠慮なく笑って見せる。やはり、オマエは醜態がよく似合う、と。
この無様さを見ただけで少しは留飲が下がったと宿儺は思う。
だが、虎杖はそんな宿儺を見て笑った。
「オマエの笑ってる顔、初めて見た気がする」
瞬間、宿儺の顔が引きつる。
苦笑いですらない、純粋に喜んでいるようだった。
「それに、本当は強いのに、やり返さないなんて宿儺は優しんだな」
以前の殺されかけた事すら、過去の話として笑って済まそうしている虎杖に宿儺は言葉を失い、二度と笑わない事を決めた。
度々見る夢があった。真っ暗な空間の中、宿儺は倒れている。
意識はあるが指一つ動かせない状態。声すら奪われているようだった。
そんな自身を虎杖は見下ろしている。憎しみ、怒り、そしてどこか疲れた顔。
酷く不愉快に感じて、唯一、動かせる目で虎杖を睨んで見せる。
虎杖は表情を変えない。
オマエは何がしたいのだ、囚われて辛いのはオマエの方だろう。
そう目で語り掛ける。それが伝わったのか定かではないが虎杖は少しだけ顔をしかめた。
「お前を離さないからな」
虎杖は何度目か分からない呪詛を口にした。
パチっという音と共に視界が明るくなった。
「わっ、何やってんの、寝てた?」
部屋の入口で虎杖が少し驚いた顔で立っている。宿儺は明るさに慣れず目をしばたく。
宿儺は居間で眠っていたようだった。壁にかけてある時計を見ると18時を少し過ぎたところだった。
学校から帰ってきた時はまだ明るかったが、冬はすぐに日が落ちる。
「ストーブくらい付けろよ、風邪引くぞ」
虎杖は手をこすりながら、部屋の隅にあるストーブをいじりだす。虎杖のコートに雪が積もっている。
「爺ちゃんの見舞い行ったんだけど、ちょっと症状重いみたい。本人は何ともないって言い張ってるけどさ」
点火したストーブに手を当てて暖を取りながら続ける。
月日は経ち、二人は中3になっていた。一向に記憶を取り戻す気配のない虎杖との生活は未だ続いていた。
不随して苛立ちは募るばかりであったが。
祖父は先月の年末に体調を崩し病院にかかったところ、そのまま入院する事となった。それから兄弟二人での暮らしが始まった。
「なぁ、宿儺も今度見舞い行こうぜ」
「一人で行け」
そう言い捨てながら、宿儺は立ち上がり居間を出ていこうとする。不満気な顔を見せていた虎杖はふと思い出したかのように、あ、そうだと引き留めてきた。
「宿儺さぁ、進路希望の紙、まだ出してないだろ。先生から出すよう言っとけって言われたんだけど」
宿儺はそんなものあったなとぼんやりと思い出す。
「オマエと同じ高校を書いて出しとけ」
「え、俺が書くの?…ってか同じ高校?」
入り口で足を止め、虎杖をじろりと見る。
「問題あるか?」
「いや、問題ってかさ…」と少し口ごもりながら続ける。「頭良いんだからもっと上の高校目指せば?」
「は?」
ピリッと空気が張り詰める。宿儺は自身のこめかみに青筋が浮くのが分かった。
「適当に俺と同じところ選ばなくてもさ。大体、俺の事嫌いなんだろ」
「くだらん」
「くだらなくないだろ。お前の為を思って…」
瞬間、抑えがたい怒りが沸いた。
「何が俺の為を思ってだ!」気付けば、虎杖に掴みかかっていた。首に手をかけながら組み敷く形となる。
「だったら、さっさとこの世界をどうにかしろ!」
今までにない剣幕に驚く虎杖。ふと宿儺は、その表情に状況に既視感を覚える。
領域内で散々、凌辱した事を思い出した。
(参考1)
試してみるかと考え、虎杖の衣服を引き破り始めた。混乱し暴れる虎杖を抑えつけて行為に及ぶ。「いい加減思い出せ。小僧。俺を、オマエを」
虎杖の身体や体温、匂い、苦痛に喘ぐ声、全てが懐かしく感じる。気付けば途中から虎杖は抵抗を止めていた。
虎杖が思い出す事はなかった。大きなため息をつきながら項垂れている宿儺の隣で、虎杖は横になりながら聞く。「…俺、なんか忘れてたりする?」声が少し掠れている。
「なんで普通に話しかける」「いや…」言葉につまりながらも虎杖は続ける。
「何か理由あるんだろ。お前が、あんなしんどそうな顔するなんてさ」
虎杖を横目で見る宿儺。
「お前に言って何になる」
腰の痛みを庇いながら上体を起こす虎杖。
「俺に関係ある事なんだろ?とりあえず言ってみろって。協力するから」
宿儺は考える。実際、手詰まりだった。本人に協力をあおる他なかった。必要なのは手がかり。
僅かでも良いから必要だった。しかし全てを話すわけにもいかないので言葉を選ぶ。
(協力を断られる可能性があるから。思い出さない方が良いかもとならない為に)
「俺とオマエはこの世界より前に会った事がある。オマエは俺を呪い、オマエも呪われた。その呪いを解きたい。その為にはオマエが記憶を取り戻さなければならん」
話している最中、虎杖の顔が呆けていくのが目に入っていたので、これは駄目だなと感じる。
時間を無駄にしたと、立とうとした時、虎杖は「うーん」と唸った。
「呪いか。そりゃ解かないとまずいわな」
「は?」
「よっしゃ、分かった。俺、記憶を取り戻せるように頑張るよ」
「おい」
「前の世って前世ってやつ?俺、どんな奴だったの?」
「おい、待て。…何で信じられる」目をぱちくりする虎杖。
「や、だってお前、冗談言うタイプじゃないし」
「………」
「なぁ、俺らってどういう関係だったの?」
「…常に一緒にいた」
常にか、と虎杖は考える。宿儺が自分の事を小僧と呼ぶ事がある。という事は、兄弟ではない。
「……恋人同士だったとか?」
宿儺が露骨に嫌そうな顔をしているのを見て違うなと思った。
(参考2)
試してみるかと考え、虎杖の衣服を引き破り始めた。混乱し暴れる虎杖を抑えつけて行為に及ぶ。「いい加減思い出せ。小僧。俺を、オマエを」
虎杖の身体や体温、匂い、苦痛に喘ぐ声、全てが懐かしく感じる。気付けば途中から虎杖は抵抗を止めていた。
虎杖が思い出す事はなかった。大きなため息をつきながら項垂れている宿儺の隣で、虎杖は横になりながら聞く。
「…俺、なんか忘れてたりする?」
「なんで普通に話しかける」
言葉につまりながらも虎杖は続ける。
「何か理由あるんだろ。お前が、あんな…」
「お前に言って何になる」
腰の痛みを庇いながら上体を起こす虎杖。
「俺に関係ある事なんだろ?とりあえず言ってみろって。協力するから」
宿儺は考える。実際、手詰まりだった。
本人に協力をあおる他なかった。
必要なのは手掛かり。僅かでも良いから必要だった。しかし全てを話すわけにもいかないので言葉を選ぶ。
(協力を断られる可能性があるから。思い出さない方が良いかもとならない為に)
「俺とオマエはこの世界より前に会った事がある。オマエは俺を呪い、オマエも呪われた。その呪いを解きたい。その為にはオマエが記憶を取り戻さなければならん」
話している最中、虎杖の顔が呆けていくのが目に入っていたので、これは駄目だなと感じる。
時間を無駄にしたと感じたが、以外にも虎杖は承諾した。何故信じられるのか問うと、冗談言うタイプじゃないから、あと頼られて嬉しいからと答える虎杖。それに、と言いかけてやめる。
「なぁ、俺らってどういう関係だったの?」
「…常に一緒にいた」
常にか、と虎杖は考える。推理して導きだした答えを口にする。
「……恋人同士だったとか?」
宿儺が露骨に嫌そうな顔をしているのを見て違うなと思った。
なんで普通に話しかけてくるんだ
ダメ元で打ち明けてみるか
なんで信じるんだ
馬鹿かオマエは なんか理由あるんだろ。
話してくれよ
なるほどなぁ
冗談言うタイプじゃないし、信じたいから。頼られて嬉しいから。
恋人同士だったの?