──この場所では誰の声も上手く聞こえなくて。
まるで昔の無声映画みたいに声はあたしの耳には届かなくて、街はたくさんのノイズと無音で構成されていた。
あたし だけ、 取り残されている
気が、していた。
【ハウリング】
「 」
自分の名前でさえ耳に聞こえる響きは伴わなくて、呼ばれた感覚だけがあたしの脳を動かした。
「え?あ、何?沢田くん」
「えっとさ、修学旅行の実行委員!とりあえず今日放課後話し合わないかって話になったんだけど」
「……、うん。わかった」
どうでもいいと思っているうちにいつの間にか決まっていた修学旅行の実行委員は完全なハズレくじ。
初めにみんなが沢田くんに押し付けて、するともれなく山本くんと獄寺くんがついてきた。
山本&獄寺というクラスの人気2トップという特典つきでもなお決まらなかった女子の実行委員にお人好しの笹川さん(あの子ってある意味私なんかよりずっと変わっている)が立候補して、それに伴って黒川さんが仕方ないと引き受けて。
…気付けば私が加えられていた。
簡単に言えばみんな、考えたプランがつまらないと言われた時の責任を背負うのがイヤなだけだ。
だから人に押し付けて、自分はその他大勢の享受者になろうとしている。
そんな彼らの声が私には聞こえない。
どこか遠くて、見えないガラスを一枚挟んでいるような。そんな感じ。
「………っていうのはどうかな?」
ねえ 、と呼び掛けられてふと我に返る。
「……うーん…」
「何なんだよお前さっきから!せっかく10代目がアイデアをお出しくださってるのに曖昧な返事ばかりしやがって!!」
「だって何ていうか…ありきたり。というか」
「だったらテメーも何かアイデア出しやがれ!」
なぜか教室には私と男子の四人のみ。聞いていなかったのでよく知らないが他二人は何か用事があって先生に呼ばれているらしい。
「んー…そうだなぁ……こういうのは?」
適当に思い付いたアイデアを提示すると、三人がぽかんとした表情で私を見た。
「………あれ、ダメだった?」
「ううん、ダメじゃないよ!すごくいいと思う」
「お前っておもしれーこと考えつくのな!オレもその案、賛成」
山本くんが爽やかに笑う。獄寺くんはまぁ…10代目がいいとおっしゃるなら…とか何とかぶつぶつと呟いている。
「じゃあとりあえずこれで決定でいいかな?」
まだぶつぶつと言っている獄寺くんに困り笑いをしながら沢田くんがまとめた。
「…なんで沢田くんはこの役引き受けたの?本当に嫌なら断れたと思うんだけど」
「う、ん……そりゃめんどくさいなとか思うけど、まぁいつものことだし」
「でもさ、これって失敗したら全部自分のせいにされるポジションじゃん。損だとか思わない?」
そうだなぁ…と困ったように彼が笑う。
「でも、それよりもオレは がすごいと思うよ。勝手に決められたのにこうしてちゃんとやってさ」
「そう?そんなにすごくはないと思うけど」
「いや、本当すごいよ!絶対オレたちだけじゃ何も決まらなかったもん」
ありがとう、と沢田くんが言った瞬間。
頭の中でぶつっと音がして、聞こえるものが急にクリアになった。
「…… ?」
彼の声がまるでハウリングのように耳に痛く響いて、全ての音を私に届けてくる。
私にもまだわからない何かが、始まっていた。
(もしもし、聞こえますか?)
(感度良好、ノイズはクリア)
* * * * *
というわけで何の脈絡もなく綱吉夢でした。意味不明すぎて私にもよくわからん。
明日から修学旅行いってくるので何となく思い付いたネタ投下。
そんなわけで29まで生存確認とれないかもです。出来そうだったら上がってきます。
…誤解を招くといけないので一応言いますがサトウ、社会人です(笑)