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大晦日24 vol.5


PM20:22



「はい、そのままあげて……よし、終了ー!みんなおつかれー」

脚立の上でまひろが手を叩く。

「やっと終わったな…」

「しかしな、ボス。これが毎年続くんだぜ」

「そっか……でもとりあえず来年のことは考えないようにしようぜロマーリオ……」

昔からずっとこの習慣を続けているまひろとその護衛たちはやりきったと言わんばかりに清々しい表情を浮かべているがキャバッローネ側は皆、慣れない掃除で体力も精神力も使いきってぐったりとしている。

「いやーこれで無事に新年が迎えられるわー」

「やはり徹底的にしないと物足りない気がいたしますねお嬢様」

(奴らタダ者じゃねえ……!)

習慣の違い、という一言では片付けられない歴然たる差がそこにはある。

「さーてあたしは年越しそばでも作ろうかな……っわ!?」

まひろが脚立を降りようとしてバランスを崩した。

「まひろお嬢!」

普段、温和で冷静なロマーリオが焦りの表情を浮かべる。
それほど高い脚立ではないが、落ちればさすがに無傷というわけにはいかない。

けたたましい音を立てて脚立が倒れた。

「いった…」


「ってぇ〜」

まひろの下から声がする。

「……ディーノ!?」

「はー…間一髪。ケガねぇか?まひろ」

身を呈して下敷きになった上、脚立を鞭ではじき飛ばしたディーノが笑う。

「ディーノこそっ…」

「あぁオレは大丈夫。こんくらい慣れてるし」

部下が居ない時によく階段から落ちたりしているせいか、出来るだけ被害を少なくする方法を体得しているらしい。少し肩をぶつけたくらいで怪我という怪我はしていない。

「掃除に熱中するのはいいけど、ケガだけはしないでくれよな。寿命が縮む」

「…ごめんなさい」

「お前がケガしなくてよかった」

ディーノが起き上がると、部下たちから冷やかしの交じった賞賛の言葉が飛んできた。


夜はいつもと何ら変わらないが、暦はだんだんと新しい始まりの瞬間に近付いている。




──────

大晦日24、これにて終幕!
しかし名前が悪いなぁ……(笑)

ヒロインの名前が決まってますがサイトに載せる時は変換します。

それでは皆様よいお年を!来年もよろしくお願いいたします(>∪<)
Buon Anno Nuovo!

大晦日24 vol.4


PM4:14



ようやく終わりも見え始め、ゆるゆると下降していた全員のやる気も少し上向きになってきた頃。
まひろは今まで手をつけていなかった部屋にたどり着く。

「まひろ」

開きかけたドアをディーノがそっと押した。
頭一個分ほど高いディーノがドアに片手をつくと、ちょうどまひろを閉じ込めるような形になる。

「……この部屋は、いい」

「誰の部屋?」

今は誰のものでもない、とディーノがつぶやく。

「見てもいいけど、掃除はしないで」

過去を振り返るための、思い出を納めた部屋。
母親の面影、父親が大事にしていたもの。
だんだんと積み重なる「過去」は、楽しかった記憶だけではない。
ただ、絶対に忘れたくないものや忘れてはいけないもの。ディーノがしっかりと立って歩くために、自分の場所を見失わないように時々振り返ってみるための記憶を収納した部屋だ。

「わかった」

ドアから離れて、まひろがディーノを振り返る。

「じゃっディーノ、あそこの掃除手伝って!」

にっこり笑って彼女が指差したのは、エントランス上のシャンデリア。

「………本気なのか?」

「うん。イワンはしご持ってきて!それからロマーリオはシャンデリア降ろして!」

司令塔は敵のゴールキーパーでもあったらしい。
ゴールが少し遠くなった。



──────

甘夢じゃ終わらせねぇぞ、と。

どんだけ掃除する気だ。

大晦日24 vol.3


PM0:36


ディーノ他キャバッローネファミリーに天の声。

「お嬢、そろそろ休憩にしませんか。朝からずっと休みなしってのはさすがに…特にディーノ様はゆうべあまりお休みになっていないわけですし」

よく言ったフェデリーニ。何だかダシに使われたような気がしないでもないが、まぁいいだろう。
とりあえず、休ませてくださいお嬢。

口には出せない色々な言葉を頭の中でだけつぶやいてディーノはまひろの言葉を待っている。
動きやすくするため長い髪を邪魔にならないようアップにした白いうなじを凝視しつつ(こんなことをやっているから仕事が捗らないのだ、とディーノ自身が一番よく理解している)。

「んー?……そうね、もうお昼だし…」

ちら、とまひろがディーノを振り返る。
ディーノが疲れているように見えたかどうかはわからないが、少なくとも邪な思考は届いていないらしい。

「…ディーノ、さっきからどこ見てるの?」

否。
何となくバレている。

「……まひろがそういうの着てるのって珍しいなって思って」

苦し紛れの回答。
自分の婚約者は細身のジーンズも似合うんだなぁと本当に思っていたのだがまさかそれを口にしてしまうとは思わなかったディーノである。

「…………ディーノ」

「はい?」

やばそうな気がする。

「……午後からはちゃんと働いてね」

「…Si.」

除夜の鐘は人間にあるという108の煩悩を払うそうだが、生憎とイタリアにはそれがない。
とにかく休ませてもらえそうなのだけはありがたいと思ったディーノだった。



──────

今日、出勤指定時刻が6:35で8:20くらいに仕事終わったんだ…

出勤とJRの時間合わなかったせいで4:30起きの5:54のJR(始発)だったから眠い……(ρ_-)。゜ピーク過ぎちゃったけど…


※フェデリーニ…Mezza voce本編参照。まひろの護衛。本編で「お嬢」と呼んでるのはこの人。

大晦日24 vol.2


AM9:10


「まひろー、これどこだ?」

「そこのはしっこー!」

まひろを司令塔に、キャバッローネファミリー総出で大掃除。
だいたいの場所は終わっているとは言え、やはり屋敷は広いもので。
こまめに掃除をしているはずなのだが、念入りにやるとこうも汚れていたのかと言うほどに次から次に汚れやゴミ、埃が出てくる。

まひろによって長めの金髪を半分ほどの髪をまとめるような形でくくられ、その上から埃よけのタオルを被ったディーノはとてもじゃないがボンゴレ同盟ファミリーの第三勢力として五千人を束ねるボスには見えない。
先程はディーノをこの姿にした張本人から
『…日本によく居るちょいワルの鳶職だわ』
という言葉を頂戴したばかりである。
長めの金髪にタオル、ひじのあたりまで袖をまくった左腕には大きなタトゥー。そう言われればそう見えなくもない。
だが。

(なんか悲しいのはオレだけか…)

「ディーノ!手が止まってる!」

アズーリのトッティをも凌ぐ優秀な司令塔は、掃除に大変厳しい。
ロマーリオ(彼もまたいつもの黒いスーツではない)が窓拭きをしながらディーノを見やり、含みのある笑いを浮かべた。





──────

今更ながら説明。
大晦日24は我が家の夢ヒロインまひろ嬢を主人公にした変換なし夢です。年明けてからまとめてフリー夢(変換あり)でUPするかも知れません。

ちなみにまひろ嬢のご贔屓がアズーリ(イタリア代表の愛称)の司令塔、トッティ。(笑)

大晦日24。

あんな細切れにやんないけど ね!(笑)



AM6:27

「ディ〜ノ〜」

「ん、今何時……だから早ぇよ起こすのが…」

昨日何時に寝たと思ってんだ、ディーノは寝ぼけたままの頭でまひろに言う。
元々少しくせのある金髪には更に寝癖がついて、あちらこちら好き勝手な方向に跳ねている。

「で、今日は何すんだ?」

「大掃除」

そういえば日本にはそんな習慣があったな、と寝ぼけたままの思考は続く。
見た目以外は何もイタリア人家庭と変わらないのに、ところどころで日本の習慣が入ってくるまひろの家がディーノは結構好きだ。国籍はイタリア人だが、日本の血をひいていることに誇りを持っているのがわかる。

「昨日もやってなかったか?」

と、いうかここ三日くらいやっているような気がする。

「だってキャバッローネのお屋敷って広いじゃない」

さあさあ起きて、と急かすまひろをじっと見やってディーノは薄く笑む。

「しゃーねえな…お嬢につきあってやるか」

こうして、一日が始まる。
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