「小さなおじいちゃんが住んでる家でね。よく呼ばれたんだけど評判悪かったんだよ」
江崎先輩はからから笑った。
先輩というのは鐘子のデリ嬢としての、である。
「そうなんですか。私は別に嫌いじゃないけどな、高齢の方って体力がなくてこっちに任せっきりだから楽だし」
「ううん、おじいちゃんはいいのよ。ただね、その家、刺されるの」
江崎先輩、顔色ひとつ変えず。
「……ヤバイじゃないですか!」
「そう、ヤバイの。やっぱさ、住んでるのがおじいちゃんだけだと、若い子に飛び付いてくるのよね。新鮮なのを求めて」
「なんなんですか、その家! 何が出るんです!?」
珍しく取り乱す鐘子。
他人事で話を聞くのと違い、自分の身に降りかかる可能性があるんだから当然ではある。
「何がって?」
きょとん。江崎先輩は不思議そうな顔をした。
「だから、何に刺されるんですかっ!?」
「や、だから」
江崎先輩は腕をまくって、ムヒを塗りながら言った。
「蚊だけど……?」
「まるっきし、星のカービィだったんだよ」
河渡さんが荒い息で話す。
「ピンクで丸くてふわふわして、そんなのが浮いててさ! びっくりした! 初めて見た! 膨らむとは聞いてたけど、ああなるんだな!」
「なんの話なんです?」
興奮する河渡さんを鐘子が制した。
「溺死体!」