ぼくは化け物だった
小さな箱庭で石を投げつける人々
ぼくの背中は視線と消しカスで爛れ汚れた

ぼくは憎しみを抱いた
同じ真っ黒な顔をして嘲笑う奴等を
ぼくはすべてを消そうと思った

ぼくは殺意を抱いた
はじめての感情に震えた
自分自身が恐ろしかった

ぼくは狂気を抱いた
どうせ化け物でしかないのなら
ぼくは人間を辞めた

ぼくの狂気とは血塗れになった箱庭
後ろ指指される狼
おかしいのはぼく以外のすべて

イカれた目をしたぼくを彼女は笑った
それで良いと笑った
ぼくははじめて言葉を耳にした

彼女は誰をも気にしなかった
ただの興味だと笑う
人の笑顔を初めて美しいと思った

ぼくらはふたりでいる時間が増えた
夜になると彼女は落ち込んだ
安っぽい励ましすら言えない自分がもどかしかった

ぼくらは社会の隅で夢をみた
誰も危害を加えず安心して暮らせる世界があれば良いのに
彼女が笑うからつられてぼくも笑った

ぼくはただの嫌われもので
彼女は忌み嫌われた存在
だから、ぼくらは手を取り合った


ぼくは知ってしまった
すべての人間に生きる価値などないことを
ただ一人だけ生きるべき人のことを

彼女は泣きじゃくった
殺されるのは嫌だとすがる
彼女を変えてしまったのは、きっと僕だ

生きたいと願ってしまったぼくらは夜明けに手を取り合った

朝日が眩しく照らすから
非難しかないぼくらが祝福された気がした

この手だけは離したくないよ
失いたくないよ

いつか社会的に殺される日が来たとしても

ぼくらは人間だったんだ