指先

ベランダの窓を開け
編み戸越しに外を見つめていると

時々
自分が雨で
雨が自分のような錯覚をおこす

しとしと
しとしと

空からこぼれ落ちていったものが地面をぬらす

京都は梅雨入り

たとえばすれ違ったひとと目があったり

迷い混んだ道の脇にシロツメ草を見つけたりすること

恋人と別れました

もう２ヶ月くらいになるけど案外けろりと日々をすごしてる
隣にあのひとがいない未来なんて考えられないと思ってたのになあ


はじめてあのひととキスをしたのは20歳の誕生日の６日前で
今年の夏、私は22歳になる

後期試験も今日で終わり
うれしさと後悔を天秤にかけたら、後悔のほうが少し重かった

３回生になっても寺山修司とのかくれんぼは続く
見つけたと思った瞬間、ひらりとかわされて残像だけが瞼に映る

今日の月は大きくまるい
宇宙船が迎えにきても、乗り込めない理由ができた

ずっと一緒にいようね
なんて言葉は、砂糖菓子みたいに口のなかで溶けて消える
たとえ何回ゆびきりしてもどんなに好きだと伝えても、
先のことなんて誰にも約束出来ないから

いま私はあのひとが好きで、あのひとも私と一緒に居てくれて
そんないまをひとつひとつ重ねていって、
いつか振り返った時に

ずっと一緒にいたね
って、笑いあえるふたりになりたい