「何してるの?」
寒い冬の灰色の空の下、テントの裏で休憩していたオレに、見知らない女の子が話し掛けてきた。
見るからにお嬢様といった感じの服を着てて、長いダークブラウンの髪を高い位置で縛ってて、可愛い女の子だった。
「…休憩だよ。そっちこそ何してんだよ、こんなサーカスの裏まで来て」
「家族とサーカス見に来たんだけど、はぐれちゃったんだ。気が付いたらここに居て君を見付けたの」
…なんだ、ただの迷子か。
ふーん、と女の子の言葉を軽く流すオレに対して、女の子はキョトン、とした顔をして大きな金色の目でオレを見つめてくる。
「なんだよ」
「君…どうしてそんなに痣だらけなの?痛くない?手当しようか?」
「いらねぇっつの。これは………玉乗りの練習しててできただけ」
仮にもお客である女の子に本当の事を話すわけにもいかず、嘘を吐くオレを女の子はまだじーっと見つめてくる。
なんで嘘を言うの?とでも言うように。
「…オレの事より自分の心配しろよ。あっちに真っ直ぐ行けば表に行けるから行」
「わー!これが玉乗り用の玉!?すごーい!」
「人の話を聞け!!」
オレの話も聞かず玉に嬉しそうに駆け寄る女の子に思わずつっこむ。
なんとも自由奔放な女の子だ。
「ね、私もやってみていい?」
「初心者が出来るわけねぇだろ。ましてやアンタみたいなお嬢様がさ」
何故か口から出るのは憎まれ口ばかり。
きっと、羨ましかったんだ。
純粋で綺麗なこの子が。
ちょっと言い過ぎたか、とオレが罪悪感を感じていると…
どてっ。
何かがこけるような音がした。
見てみると、女の子が玉乗りをしようとしたのか玉の横でひっくり返っていた。
「何やってんだよ、下手したら怪我すんぞ!?」
「あいたた…やっぱ難しいね…」
「だから言っ「でも、お嬢様だからって何も出来ないわけじゃないよ」
つい彼女に手を貸すオレの言葉を遮って、彼女が言う。
立ち上がってスカートについた砂埃をはらいながら、オレに笑いかけて。
「最初から出来ないって決めつけたら出来る事も本当に出来なくなっちゃうでしょ?それに私お嬢様じゃないよ」
「は?」
「だってこの格好、お姉ちゃんに無理矢理着せられたんだもん」
「お姉ちゃん、私に色んな服着せるの好きなんだ」と笑う彼女。きっと、その姉の事が大好きなんだろうなと思った。
オレにはそんな気持ち、わからないけど。
「私ね、ちょっと事情があって友達いないんだ。だから、」
彼女はまたオレに笑って、右手を差し出してきた。
「私と友達になってください」
正直、驚いた。まさかこんな急にそんな事を言われるとは。
この赤い腕が見えないのだろうか。皆が忌み嫌うこの赤い腕が。
「…この赤い腕が見えねぇの?」
「え、見えるよ?」
「気持ち…悪くないのかよ」
「全然」
キッパリと言い切る彼女。
こんなの、初めてだ。
初対面で、この腕を見て表情一つ変えず、ましてや『友達』になってくれなんて言われたのは。
「君がなんでそんな事聞くのかはわかんないけど、私は全然そんな風に思わないよ?
こけた私を助けてくれた優しい手だと思う」
どうしてだろう。
彼女の言葉が心にじんわりと暖かく染み渡って、涙が出そうになる。
初めて優しくされたから?
笑いかけてくれたから?
嫌ったりしなかったから…?
「また明日も来てもいい?」
「……好きにすれば」
嬉しくて緩む顔を隠すようにそむけながら言ったら、彼女はまた笑った。
初めて、人の温もりと優しさ、明日への希望を知った気がした。
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これいつ書いたし……挿絵は1月くらいに写メってるからやっぱ1月か(笑)←
途中でわけわかんなくなって無理矢理終わらせた感があるなオイ(´∀`;)
さてこの二人は誰でしょうねぇ?ふふふ…(モロバレ)
……しかしよくまぁ携帯の下書きに残ってたなこれ←