SS第五弾です!
今回はシスト視点。
2人で行動していませんが…
まぁ、"何でも来いよ!"な方は、追記からどうぞー!
Side シスト
パートナー組んでる、といったって、ずっと一緒にいるわけじゃない。
無論、単独任務もあるし、どっちかかたっぽだけが休日、って時もある。
もっとも、騎士って仕事上、休みの日の方が少ないんだけどな。
今日は珍しくフィアが休み。
最近は厄介な魔獣もあまり出ないし、ということで、俺かフィア、どっちか休め、とルカに提案された。
で、俺は応えたんだ。
―― フィア休みにしてやってよ。どっちか、なんて言ったらあいつは絶対俺に譲る。
あいつの性格は、ルカの次くらいに理解しているつもりだ。
放っておけば、無理をする。
ルカに言われた言葉の意味は、重々理解した。
最近、フィアは若干頑張りすぎな気がする。
任務の時はもちろんだが、城にいる間も何かと雑用をしている。
食器を片づけるのを手伝っていたり、医療部隊の手伝いをしていたり。
中庭で花の手入れをしていることもあった。
おい、お前はいったい何の仕事をしているんだ、と突っ込みたくなったが……
あいつの性格だ。頼まれりゃ断れない。
そして、疲れてることは絶対顔に出さない。
それでぶっ倒れるからアルに叱られるんだろうに……
ルカもわかってたみたいで"サンキューな"といっていた。
「さて、と。俺は街の巡回にでも行きますか」
魔獣討伐の任務がなければ、街の見回りに行くのも俺たちの仕事だ。
犯罪者を捕えるのは、俺たち騎士の仕事じゃないけれど、治安を守るのは俺たちの仕事。
騎士が闊歩してる、ってだけで犯罪抑制になるらしい。
単純なもんだな、人間って。
でも、役に立てるならなによりだ。
そう思って、繰り出した街。
活気のある城下町には、声があふれかえっている。
楽しそうな子供の声、店の店主の客寄せの声。
そういった声を聴いてると、なんだかほっとする。
俺は、孤児だった。
親だと思っていた人たちは、俺たちを孤児院から引き取ってくれた養父母で。
初めて、その話を姉貴から聞いた時は驚いたけど、
でも、ここまで育ってこれたのは、俺が"父さん""母さん"と呼んできた人たちのおかげ。
そして、傍で守ってくれた姉貴のおかげ。
……その恩返しのためにも、俺は強くなりたいんだ。
強くなって、みんなの幸せな生活を守りたいな、なんて。
クサいけど、そんな風に思ってる。
と、その時。
前方に見慣れたやつを見つけた。
亜麻色の髪、独特の雰囲気。
思わず苦笑した。
何で休みの日にまでパートナーに遭遇するんだろ。
まぁ、いい。
声くらいかけようと思った時、目の前で信じられないことが起きた。
急に、女性の悲鳴が聞こえたと思ったら、
駆け出してきた男がフィアを人質にとって、わめき始めたんだ。
何を言ってるか、わからない。
強盗か何かだろうか。
―― まったく……
命知らずだな。
というか、"女"って言われてんぞ、フィア。
今日は騎士服じゃない。だからきっと、フィアが"ひ弱な女性"に見えたんだろう。
とりあえず、あの男に若干同情する。
お前が人質に取ってんのは、騎士団内でもトップクラスの力を持つ騎士様だぞ、おい。
フィアは動かない。ナイフを突きつけられても平然としていた。
その余裕が気に食わなかったのか、ちょっときつくナイフを突きつける男。
フィアの白い首筋に、血がにじむ。
俺は小さく舌打ちした。
―― 傷を負わせんのは許せねぇな。
そう思って、氷の魔力を男にぶつけた。
男は驚いて手を緩める。
「犯罪者の確保は騎士の仕事じゃないんだけどなぁ……」
呟きながらそいつに近づいていく。
「大丈夫か?フィア」
「ああ、平気だ」
あっさりと答えると、フィアは男を背負い投げした。
周りから歓声。
当然か。
ひ弱な女性、が男を一本背負い。
誰でも、拍手したくなる。
恐れ戦いた顔をして逃げようとした男を、睨みつけた。
おせぇっつの。
―― 逃しはしないさ。 ――
俺のパートナーを傷つけた罰、ちゃんと受けてもらうぜ?
さっさとそいつを縛り上げてフィアの傷を診る。
傷は浅いし、出血も少ない。大丈夫だろう、多分。
またアルには叱られるだろうけど。
まったく、どうしてこいつはこうすぐに無茶をするのか。
ああ、性格的なものだった。仕方ない。
そう思っていれば、見ていた子供にかけられた声。
それに俺は思わず笑う。
フィアは顔を真っ赤にしていた。
―― お前は本当に、"女っぽく"見える。
でも俺が"護りたい"って思うのは、騎士が敬愛すべき女性に見えるから、ではない。
理由は、わかりきってんだろ?
― 大切な、パートナーだから。 Fin ―