ついったのノリで書かせていただきました、吸血鬼×神父様なパロ小説です。
三部構造にしようと思っていましたが、真ん中がすかすかになるので、
結局二部構造で。
前編は比較的にシリアス少なめですが後編で一気に落としていきます(予告)
*attention*
・フォルスタで吸血鬼×聖職者パロ(BL注意)
・パロディです
・とりあえず、前編です
・設定は色々と捏造されております
・フォルの発言が色々危ない
・後編急展開へのフラグを立てたつもりがフラグがこけてるという
・…とりあえず妄想クオリティ
・パロディなんです!(大切なことなので二回言いました)
・ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「十字架が平気な吸血鬼、か……」
街外れの教会の中。
一人の神父が小さく呟いていた。
長い浅緑の髪が揺れる。
小さく溜息を吐いて、彼は窓の外に視線を投げた。
―― 既に夕暮れだ。
「そろそろ、か」
彼はそれを見つめ、目を細める。
小さく呟いた声は静かな聖堂内に響くだけ。
燃えるような夕日が空を彩っている。
その後ろからは既に宵闇が迫っている。
外に出ている人間が少ないことは、街に出かければ充分窺えた。
その理由は、彼……スターリンもよく知っている。
此処のところ、この街で頻発しているとある事件があった。
夜……陽が落ちてから、街の人間が何者かに襲われるという事件だ。
襲われる、といっても命を奪われるわけではない。
襲われた者もすぐに意識を取り戻し、体にもさして異常はないという。
ただ、軽い貧血を起こしている程度で。
その犯人が誰……否"何"であるかも、明確だった。
証拠は襲われた人間の首に残る、小さな牙の痕。
―― 吸血鬼の仕業だと、皆言っていた。
おそらくそうだろうとスターリンも思っていた。
宵闇の中唐突に人間を襲い、血を飲むという伝説上の生き物……
当然皆恐れ慄き、日没後の外出は避けていた。
十字架を携帯する者さえ出てきているという。
しかし最近では日没前にもちらほらと被害が出ているという話を聞いていた。
挙句、襲われた者の中には十字架を持っていた者も。
その話を聞いて怪訝に思ったのは何もスターリンだけではあるまい。
一般に吸血鬼や悪魔と呼ばれる類の生き物は光を嫌い、十字架を恐れるはず。
それなのに、その吸血鬼は違うらしい。
困り果てた街の人間たちの声を聞き、
この教会の神父であるスターリンも調査を進めていたのだった。
「陽の光も恐れない、十字架も平気な吸血鬼なんて、存在するのか……?」
いくら文献を漁っても、そんな資料は何処にもない。
吸血鬼の仕業に見せかけた人間の仕業なのだろうかという考えも出来るが、
それはいくら何でも難しい話だろう。
スターリンが溜息を吐いた、その時。
「君が探しているのは僕のこと?」
不意に聞こえた声にスターリンはハッとした。
そこに立っているのは黒衣の青年だった。
背は高く、肌は白い。
亜麻色の髪とサファイアの瞳を有する、
世間一般に言わせれば美青年と呼ばれるであろう容姿。
その姿を見て、スターリンは目を細める。
「お前だな?街の人間を襲っているのは」
スターリンが問うと、蒼い瞳の少年はこくりと頷いた。
儀式っぽく一礼して見せてから、軽く微笑む。
「僕の名前はフォル。君の推測通り……僕は、吸血鬼だよ」
フォルと名乗った青年は、小さく笑いながらいう。
「襲う、なんて物騒な言い方をしないでほしいな。
君たちが食事をするのと何ら変わらない……
現に、僕がひとりでも人間を殺したことがある?」
そう言われてしまうと、弱いといえば弱い。
ただ、そういった行為……吸血という行為は普通ではないし、
人間が恐れるのも至極最もな話である。
スターリンは少し言葉に悩んだ末、彼にこう持ちかけた。
「なぁ、フォル。街の人間を襲うのはやめてくれないか?
お前が人間を襲うから、街の者たちは皆恐れて外に出ない。
このままでは街が廃れてしまうのだよ」
スターリンの言葉にフォルは"なるほどね"と言って悩む顔をする。
「そう言われても、困っちゃうな……
人間の血を飲まないと、僕は死んじゃうんだよ。
食事を取らないのと同じことだからねぇ……」
彼の言葉を聞きながら、スターリンはあることを懸念する。
もしこの街からこの吸血鬼が出て行ったとしても、
ほかの街に行って同じことをしたら、意味がないのではないか?
自分の街は守れるかもしれないが、ほかの街が被害に遭うのは……
しかし、フォルが口にしたのは驚くべき言葉だった。
「……いいよ。街の人間から血をもらうの、やめてあげる。
その代わり、ひとつ条件があるんだ」
「条件……?」
スターリンは怪訝そうな顔をする。
フォルはニッコリと笑って……スターリンの顎に手を当てた。
「な……」
「僕が一生飢えないように、君の血を頂戴?
そうしたら、街の人を襲うのやめてあげるよ」
彼の言葉にスターリンは目を見開く。
あまりに予想外の、発言だった。
―― 自分が、彼に?
思わず目が泳ぐ。
街の人たちを助けたいのに違いはないが、
流石に"はいそうですか"、と聞ける条件でもない。
この条件というのはある種の契約だ。
いくら街の人間を守るためとはいえ、吸血鬼と契約など……
スターリンが躊躇う表情を見せていると、フォルは小さく笑って言う。
「それ以外の譲歩案はないよ?
君がこの条件を拒むなら、僕は他の人たちに血をもらうしかないから」
どうする?と問いかけるサファイアの瞳。
スターリンはそれを見つめ返す。
フォルは彼の表情を見て、すっと目を細めた。
「迷うことなんて、できないでしょ?
君に道はひとつしかない……
吸血鬼(ぼく)の花嫁になるという道しかね……?」
フォルはそう言って、スターリンを見つめる。
しばしこの街に留まっていたフォルはスターリンの性格はよく知っていた。
街の人々を見捨てることが出来るような性質(たち)ではないことも。
フォルの言葉に、スターリンは溜息を吐いてから訊ねた。
「……本当に、街の奴らには手を出さないんだろうな?」
「勿論。君がちゃんと僕の傍に居てくれるならね」
「……わかった」
スターリンが頷いたのを見て、フォルは嬉しそうに笑う。
そして、愛しげに彼の髪を漉くと、耳元で囁いた。
―― 契約成立、だね?
その低い声に、スターリンは体を強ばらせる。
「やっと……――」
彼は何か呟いたようだったが、よく聞こえない。
フォルはくすりと笑うと、"じゃあ、早速いただこうかな?"といった。
スターリンは少し表情を固くする。
吸血鬼の噂を耳にしてはいても、実際に血を吸われるのは無論初めて。
恐怖を感じないといえば、嘘になる。
フォルは暫しそんな彼の表情を見つめていた。
なかなか動こうとしないフォルを睨んで、スターリンは言う。
「な、んだよ……早く、しろよ」
「怖い?」
フォルはそう訊ねた。
一瞬動揺した表情を見せるも、スターリンはすぐに視線をそらした。
「べ、つに……」
怖くなんかない、とスターリンはそっけなく答える。
フォルは彼の言葉が虚言だと見抜いているかのように笑みを浮かべて……
それから、スターリンの体を抱き寄せた。
驚きに見開かれる琥珀の瞳。
フォルは愛しげにスターリンの髪を撫でながら、囁くように言った。
「怖いことなんて、何もないよ?
ふふ、吸血鬼はね……
人間から血を貰うとき、相手が逃げないように快楽を与えるんだ。
勿論普通の人間は虜になるんだけど……
聖職者である君は、きっともっと凄いことになるんだろうねぇ……?」
楽しみだよ、と囁くように言って、フォルはスターリンの体を押し倒した。
驚きと先刻とは少々意味の違う恐怖に少し藻掻くスターリン。
しかしフォルはおかまいなしに彼の唇を塞いだ。
反射的に拒もうとするも、フォルはそれを許さない。
彼のキスに体の力が抜ける。
唇を離せば、荒い息をつく浅緑の髪の神父。
スターリンの抵抗が緩んだのを見計らって、
フォルは器用に彼の服を緩めて、手を差し入れた。
「ひぁ……っ」
ひやりとした手が胸に触れた瞬間、スターリンは小さく悲鳴を上げた。
冷たさと同時に襲ってくる、感覚。
それが何であるか、スターリンにはわからない。
少し怯えた顔をする彼を見て、フォルは穏やかに微笑んだ。
優しく彼の頬を撫でて、言う。
「大丈夫……怖いことなんか何もないんだから……
ただ、僕に全てを委ねてご覧?」
フォルはそう言いながら彼の白い肌を優しく愛撫する。
晒された肌に軽く口付けて、舌を這わして。
びくりと、彼の体が跳ねる。
開いた口から漏れるのは、甘い甘い嬌声。
「ん、ぁ……あぅ……っ」
「大丈夫だよ。痛くしないから……」
宥めるようにそう言いながら、亜麻色の髪の彼は微笑んで。
胸元から顔を離すと、柔らかく舌先でスターリンの首筋を舐めるフォル。
彼の声が高くなるに連れて、容赦なくなる彼の愛撫。
手とは違う、温かく濡れた感覚に体が強ばる。
「あ、はぁ……んっ」
スターリンは甘い吐息を漏らした。
琥珀の瞳には恐怖故……或いは快楽故にか流れた涙が滲んでいる。
フォルはそれを見て"そろそろいいかな……"と小さく呟く。
そして、すっと目を細めると……彼の首筋に歯を突き立てた。
「ひ、ぁ……ああぁ……っ!」
一瞬の甘い痛みと強い快楽にスターリンは悲鳴にもよく似た嬌声をあげる。
ぞくりと一瞬走った冷たさが抜けるとじわりと体に広がる熱さ。
体が痺れているのは彼に血を吸われている所為か、それとも……?
彼が優しく髪を撫でているのを感じつつ、スターリンは意識を手放した……
***
―― 夜が明けて。
差し込んでくる、眩しい朝陽。
その眩さに、スターリンは目を開けた。
目に映ったのは見慣れた質素な自室の天井。
一体いつ自分は部屋に戻ったのかと、混乱した記憶の中で考える。
体をおこしかけた、その時。
「おはよ。気分はどう?僕の花嫁さん」
くすくすと笑う声で、スターリンは目を見開いた。
あわててそちらに視線を向ければ、自分の机に腰掛けて笑っている黒衣の青年。
一瞬飛んでいた記憶が蘇る。
十字架の効かない吸血鬼。
持ちかけられた取引。
大丈夫だからと囁く甘い声と、妖艶なサファイアの瞳。
一瞬の痛みと抗いようのない快楽と……
全てを一瞬にして思い出した。
体の気怠さも首に残るかすかな痛みも、
それが現実であったとありありと示している。
昨夜のことを、彼に散々乱された自身を思い出し、
思わず羞恥に赤面する彼にゆっくりと歩み寄ると、
追い討ちをかけるようにフォルは言った。
「昨日は御馳走様……なかなか、可愛かったよ?」
そんなことを耳元で囁かれ、スターリンは思わず身を固くする。
その表情を見て小さく笑うと、フォルは言った。
「あはは、そんなに頻繁に噛み付いたりしないさ。
せいぜい週に一回とか二回でいいんだよ」
「……被害報告じゃ毎日のように襲ってたらしいが?」
スターリンが問うと、フォルは可笑しそうに笑って答えた。
「あれはねぇ……ま、なんていうか……
僕にもね、好みというものがあるんだよね。
美味しくもない相手からたくさん血をもらったって嬉しくないし」
そう答えたフォルは一瞬瞳を揺るがせる。
散々ないいようである。
「……とことん悪魔だな」
スターリンが溜息混じりにそう言うと、
フォルは楽しそうに笑って"褒め言葉として受け取っておくよ"といった。
「悪魔で結構。こうして君を手に入れられたんだから……」
彼は相変わらずの笑みを浮かべつつそう言いながら、
未だベッドの上に座ったままのスターリンを抱きしめて、その首筋に顔を寄せる。
昨夜彼につけられた小さな噛み傷に吐息が掛かり、スターリンは体を震わせた。
「……っ!頻繁にはしない、っていっただろ……!」
「あぁ、"食事"はね。
でも、こうやって君を"可愛がる"ことは別にいつだって出来るんだよ?」
そう言いながらフォルはスターリンの首筋の傷に舌を這わせる。
逃れようとするも、ベッドの上……
挙句、まだ思い通りに動かない体ではうまくいかず。
スターリンは小さく息を漏らした。
フォルはそれを見て、少し嗜虐的に笑ってみせる。
「ほら、君だって満更でもないでしょう?
昨日だってあんなに可愛く乱れてたし……禁欲は体によくないよ?」
「黙……っひ……や、めろってば!」
「ふふ、ごめんごめん。少し体を休めた方がいいよね」
フォルはそう言いながら彼の体を離す。
スターリンは羞恥と怒りに顔を赤くしつつ、ベッドに体を沈めた。
これでは仕事どころじゃないのだよ、とぼやくもフォルはお構いなし。
そんな彼を呆れたように見ながら、スターリンは言った。
「吸血鬼ってやつは、揃いも揃ってお前みたいなのかよ?」
「んー……どうかな。違うかもね。
昨日言ったとおり、快楽に酔わせて血を飲むのは事実だけど、
僕は少し特殊だからねぇ……」
「特殊?」
スターリンは不思議そうな顔をする。
特殊……確かに、特殊だろう。
十字架は効かないわ、教会には普通に入ってくるわ、
挙句、神父であるスターリンと……
フォルはくすっと笑ってから、とんだ爆弾発言をした。
「僕、ハーフだからねぇ……吸血鬼(ヴァンパイア)と淫魔(サッキュバス)の」
「……は?!」
とんでもないことを口走った目の前の彼を見て、スターリンは固まる。
思わず、ベッドの上に体をおこしていた。
驚いた様子のスターリンを見て、フォルは首をかしげる。
「そんなにびっくりした?まあ、珍しいだろうからねぇ……」
「違……もう、いい……」
はぁ、と溜息を吐くスターリン。
とんでもない吸血鬼と契ってしまったものだ。
彼の言葉を聞いて、昨日の彼の行為の巧さにも納得が行った気がする。
「何はともあれ、大丈夫だよ。
君のことは、本当に大事にしてあげるから……」
フォルはそう言って、目を細める。
その眼差しは優しく、暖かく、愛情の篭ったもので……
思い返すに、昨夜の行為も強引ではあったものの、
彼はちゃんとスターリンを気遣ってくれていた。
怯える彼に大丈夫だと声をかけ、穏やかに髪を漉いていて。
その声に、ぬくもりに、安心していたのは……?
彼が与える快楽に抗おうと思えなくなっていたのは……?
―― 嗚呼、ダメだ。
これは間違いだ。
僅かに残った理性が警鐘を鳴らす。
この行為は本来許されざるもの。
受け入れるなんて、間違っている。
スターリンは必死にそう思おうとした。
しかし。
「ねー、神父様?」
甘えるような声で、自分を呼ぶ彼。
なんだよ、と返すと子供のごとく純粋な笑顔を向けられて面食らう。
「やっと、手に入れた……」
彼は、そう言う。
"やっと"とは、一体どう言うことだろう?
その問をぶつけるよりも先に、フォルはスターリンにキスをしていた。
慈しむように、愛するように。
そんな彼の表情を見て、スターリンは静かに目を閉じる。
戸惑いと驚きの狭間でも思わずそれを受け入れてしまったのは、
彼(フォル)が持つ魔力故だと、そう自身に言い訳をして……
二人は契約の名のもとに、禁忌を犯す。
聖なる場所で交わされる視線は、口づけは……
罪に彩られた禁断の行為。
―― 契約という名の… ――
(魔に魅入られた聖職者とそれを愛する吸血鬼)
(契約の名のもとに今宵も交わされる禁断の行為…?)
2013-4-30 22:35