今日は天使の日ということで、天使組のお話書いてきてしまいました。
天界でのやり取りは書きたいな思っていたので…←
メインはリリエルとラフィニア、ついでに天界時代のサーレル…って具合です。
あとこれを書いているうちに設定が生えましたね←
フィアが天界に上った際に拒絶を示した一人が彼、ということになりました。
実際、彼奴は反発しそうだなぁと思ったので…(笑)
仮にも大天使様ですしね、はい。
ラフィニアのキャラがだいぶ固まったかなぁ?と思いつつ…
どうにも気さくでのんびり屋なおにーさん、て印象ばかりが強くなってしまいました←
そして天界時代のサーレルは実はあんな具合でした。
今の姿を知っていると信じられないかと思います(^q^)
ともあれ、追記からお話です!
柔らかな百合の香りが満ちる、屋敷。
そこは、大天使が住まう空間。
百合の香りはガブリエルの象徴。
大天使ガブリエルの血を引く天使……リリエルはそこで、いつも通りに仕事を進めていた。
平和そのものの天界。
争いも穢れも存在しない世界。
そこが穢されないように守り、管理することが彼らの仕事であった。
とはいえ天使同士で争い等起きない。
良く言えば平和、悪く言えば暇な仕事である。
そんな時。
リリン、と一度軽い鈴の音が響いた。
来訪者を告げるその音に、リリエルは顔を上げる。
ふわりと風を纏わせて、部屋に入ってきたのは彼の仲間。
亜麻色の髪を海色のリボンで束ねた青年だった。
「お疲れ様。甘いものでもいる?」
にこりと笑って何かを差し出す青年……ラフィニア。
気さくな雰囲気を湛えた青年ではあるが、彼も立派な大天使の一人。
ラファエルの血を引く彼は、天界でトップクラスの地位にある天使だった。
大きな金色の翼が、揺れる。
彼が差し出しているのは、小さなガラス瓶だった。
その中にはきらきらと煌めく球体……基、飴玉が入っている。
地上では見ることがないそれをみて、リリエルは小さく溜息を吐き出した。
「また地上に降りていたのですか」
無機質な中に呆れを滲ませた声音で、彼は言う。
飴玉を受け取る様子を見せない彼を見て手をひっこめながら、ラフィニアは首を傾げた。
「そうだけど、それがどうかしたかい?」
彼はつい先ほどまで、地上、人間界にいた。
そこで見つけた気にいったものを買っては持って帰ってくるのがこの天使の癖なのである。
故にリリエルは"また"といったのだった。
ラフィニアの様子を見て、リリエルはすぅとサファイアの瞳を細める。
そして溜息を吐きながら、軽くペンを揺らして、言った。
「……何が面白くて人間界などに降りるのか、私には理解しかねますね」
地上は到底面白いものとは思えない。
リリエルは冷たくそういい放つ。
ラフィニアは彼の口調に苦笑を漏らしながら、いった。
「リリエルはもうちょっと柔軟に生きた方が良いよ。
ただ黙々と務めこなすだけじゃ面白く無いでしょう」
小瓶から一つ飴玉を取り出して、口の中に放り込む。
リリエルの領域を示す百合の香とは違う、甘い香りが口内に広がった。
美味しいなぁと呟いて微笑む呑気な天使の顔を見て、リリエルは咎めるような声音で言った。
「面白がって生きることが天使のあり方だとは思えないのですが」
「あぁもう本当に固いなぁ……」
ラフィニアはゆるゆると首を振る。
そして適当にそのあたりにあった椅子に腰かけながら、いった。
「人間って見ていて面白いじゃないか。
色んな者がいて、色んな過ごし方をしていてさ。
僕はそんな人間を見ることが好きだし、人間自体のことがとても好きだよ」
そう、彼は人間を愛する天使。
人の営みを見守ることも、その中に入ってみることも好む。
天界の天使たちが滅多に地上に降りないことから考えれば、とても変わった天使である。
リリエルから見ても、そう。
ただの天使ならばいざ知らず、ラフィニアは強い力を持った、聖天使。
そんな彼が地上にわざわざ降りて、挙句遊んで帰ってくる等、到底信じられないかつ理解出来ないことなのであった。
理解出来ないといえば、もう一つ。
"人間が好きだ"という発言。
「……我々の務めを果たすために必要な人材が揃えばそれで良いのです。
好きも嫌いも必要ありません、必要か不要か……ただそれだけです」
人間の中には天使の天敵である悪魔を滅することが出来る力を持つ者がいる。
そうした人間は天使にとっても"必要"な存在であり、庇護すべき存在である。
けれどもそれ以外は、別段天使の、天界の、もっというならば神のために必要な存在という訳でもないのだ。
リリエルはそういいきって見せる。
「相変わらずだなぁ」
ラフィニアはそういいながら肩を竦めた。
リリエルのことを悪い奴とは思わないのだが、こうした思考はどうにも合わない。
そんなラフィニアの反応を見て、リリエルは少し眉を寄せる。
基本的に無表情な彼にしては珍しい表情だった。
「それは此方の台詞ですよラフィニア。
貴方は少し天使としての自覚が薄れているのでは?」
「というと?」
落ち着いて問い返すラフィニア。
リリエルはその温和なサファイア色を見つめ返しながら、言う。
「ミカエルの血筋の天使がいない今、ラファエルの血筋の貴方とガブリエルの血筋の私とが……」
「あぁそういうことね、わかってる、わかってるよ」
そうした説教はたくさんだというように苦笑して、ラフィニアはリリエルの言葉を遮る。
確かに現在、天界にいるべき聖天使三人のうち一人が欠けている。
一番強い力を持つはずの存在、ミカエルの血を引く天使が事情があって、天界にいないのだ。
だからこそ残りの二大天使が"らしさ"を保たなくてはならない。
そうリリエルは言いたいのだろう。
「っていうか、ミカエルの血筋の天使に関してはいるじゃないか、地上にだけど」
ラフィニアはリリエルにそういう。
実際居るにはいるのだ、ミカエルの血筋の天使は。
今は、地上にいるのだけれど……
そうラフィニアが言うと、リリエルは小さく鼻を鳴らした。
「堕天使に穢された天使を聖なる天使と呼んでも良いのなら、ね」
ミカエルの天使を引く子供は二人いた。
一方は悪魔の魔術を習得した挙句親殺しという大罪を犯し、堕天した。
もう一人は第二子ということで地上に下ろされ、育っていた。
もし穢れなく育っていたのなら彼……否、彼女をミカエルとして迎えることは勿論リリエルも考えた。
しかし、その天使は自身の兄の魔力を注がれて、その魔力を穢されてしまったものだから、天界に迎え入れることを良しと出来なかったのだ。
そういいながら彼はペンを握り直す。
用事は終わったと言わんばかりに自分の仕事を再開する彼を見て、ラフィニアは苦笑を漏らしながら、緩く首を振った。
「意地が悪いなぁ、あの子が天界に来るのを反対したのも君だろう」
ミカエルの血を引く天使が天界に昇ってきた時、リリエルは天界にその天使を迎え入れることを良しとしなかった。
穢れたものを入れてはならないと。
それに同調する天使も多かったために、結局あの天使は地上に戻ったのである。
……それが悪い結果だけを招いただけではないことはラフィニアも知っているのだけれど、それでもああまで拒絶する必要はなかったのではないかと、ラフィニアはいう。
咎める口調のラフィニアの声にリリエルは一度ペンを止める。
しかしそのペンをすぐに動かしながら、呟くように言った。
「当然ですよ。穢れたものを天界に入れることは平穏を揺るがす事に繋がります」
真顔でそういう彼は、譲る様子がない。
ラフィニアはそんな彼の様子に苦笑を漏らし、肩を竦めた。
「やれやれ……」
これ以上話してもきっとわかり合うことは出来ないだろう。
そう思って溜息を一つ。
と、その時。
「ラフィニア様」
そう呼ぶ声。
ラフィニアはそれを聞いて顔を上げる。
彼の視線の先には、亜麻色の髪を三つ編みに結った少年が立っていた。
凛とした蒼の瞳がラフィニアを見つめている。
「あ、サーレル。帰ったの」
そういって微笑むラフィニア。
少年……サーレルはその言葉にこくり、と小さく頷く。
リリエルはくん、と鼻を鳴らして……眉を寄せた。
天界とは異なる臭い。
それは紛うことなき、人間界のものだった。
「……貴方部下まで連れ回しているんですか」
少し呆れた声音で、リリエルはいう。
彼の発言にラフィニアは緩く首を振って、軽くサーレルの頭を撫でた。
「連れ回した訳じゃないよ。自分で見ておいでって」
ね、といって微笑むラフィニア。
サーレルはこくんと頷く。
それだけ聞けば良かった、で済むのだろうが、リリエルはラフィニアのその発言の意味を理解している。
だから、呆れたような顔をして、いった。
「……おいてきた訳ですね」
その言葉にも、サーレルは頷いた。
彼の言う通り、ラフィニアはサーレルを地上に置いてきたのである。
そのまま、自分で世界を見て来いと。
体よく言えば自由にしてやった、のだけれど有体に言えば、置き去りである。
リリエルのそう言いたげな表情を見てにこりと笑うと、ラフィニアは自分の部下の顔を覗き込んだ。
ゆったりと首を傾げながら、彼の頭を撫でて、問いかけた。
「それで、サーレル、何か面白いものあった?」
そう問われて、サーレルは無表情な顔に微かに困惑の色を灯した。
「面白い、ということがよくわからないのです」
申し訳ありませんと詫びる彼。
それを聞いてラフィニアはぱちりと一度、蒼い瞳を瞬かせる。
それから少し困ったような顔をした。
「あぁ……うーん、確かにそうか。
なかなか難しいよね、うーん……」
唸りながら、ラフィニアは腕を組む。
そして小さく溜息を吐き出すと、苦笑まじりにいった。
「僕はね、君をつまらないものにしたくないんだよね。
ずっと天界に引きこもっていたら見えないものもある。
そう言うものに気が付ける子になってほしいなぁと思ってさ」
だから地上に行ってほしかったんだよねと彼は言う。
サーレルはそれを聞いても今一つ、ピンと来ない顔をしている。
「……良く、わかりません」
「あはは、そうかそうか、ならしょうがないね」
きっとそのうちわかるよ。
そう言いながら、ラフィニアは彼の頭を撫でてやる。
サーレルはそれに頷くと、帰っていった。
その背中を見送りながら、ラフィニアは目を細める。
リリエルは彼に声をかける。
「あの子はきっと優れた天使になるでしょう。
何を変える必要性があるのですか?」
そんな彼の問いかけに、ラフィニアはにこりと微笑む。
「リリエルと同じにしたくない、っていったらわかる?」
「……どう言う意味ですか」
少し皮肉めいた言い方に、リリエルは微かに表情を変える。
ラフィニアはそんな彼を真っ直ぐに見つめて、いった。
「一つのことに執着しすぎるのはよくないんじゃないか、ってことだよ」
「…………」
リリエルは無言でラフィニアを見つめる。
しかしすぐにふいと、視線を逸らした。
「……やはり貴方とはわかり合えないみたいですね」
そうとだけいって、彼はもうラフィニアの方を見ず、仕事を再開した。
ラフィニアもそれを見て軽く肩を竦めて、彼の空間を出る。
「確かに、わかり合えないなぁ……」
やれやれ、と彼は肩を竦め、歩みを進める。
同じ天使でも、こうも思想が違うものか。
どちらが正しいということもないだろうけれど……ラフィニアからすると、彼の思想に合わせようとは思えない。
―― まぁ、それも面白いこと、の一つかもしれないけれど。
そう思いながら、ラフィニアは緩く笑みを浮かべたのだった。
―― 天使としての… ――
(天使としての、在り方。
それは理解しているつもりだけれど)
(そんなの、面白くはないだろう?
折角なのだから楽しく面白くやっていきたいじゃないか)