フィアとフォルの学パロでのお話です。
Twitterでほのぼのが読みたい、と言っていただけたのと、
あまりに私の住んでいる地域が寒すぎて…
このやり取りは私と弟のやり取りにも似てる気がします(笑)
流石に私の弟は腹を殴ってきたりはしませんが私の寒がりぶりに呆れていたり←
そんなこんなで追記からお話です♪
携帯電話のアラームが鳴り響く。
だんだん大きくなるその音に、亜麻色の髪の少年……フォルは小さく呻いて、手だけを出して携帯を探し当てた。
「んぅ……」
そう呻きながら、フォルはアラームを止めて小さく息を吐き出した。
そしてそのままもそもそと布団に潜り直して、目を閉じる。
目覚ましの意味など理解するつもりもなく、彼は再び温かい布団の中で心地よい温もりの中に沈もうとしていた。
と、その時。
バンッと音を響かせて、ドアが開いた。
ドアに引っかけてあったプレートがドアにぶつかって、カタカタと音を立てる。
「おい馬鹿兄貴起きろ」
そういいながら、フォルの布団を無理矢理引きはがすのは、彼の実の妹であるフィア。
双子のようによく似た容姿の彼ら。
実際はフォルが兄なのだが、フィアの方がしっかり者で、双子、或いは年上のように見えてしまうのだった。
冷えた部屋。
こんな季節、こんな日のフィアの一番最初の仕事は、部屋基布団に引きこもっている兄を叩き起こすことだった。
フォルは寒さにめっぽう弱い。
目を覚ましはするのだが、布団から引きずり出すのに一苦労なのだった。
「ったく……おい起きろ馬鹿兄貴!
何度お前を叩き起こせばいいのやら……」
やれやれ。
そういうように溜息を吐き出すフィア。
フォルはもそもそと布団の中で動いて、呟くように言う。
「……だって寒いよフィア、これだったらきっと学校休みだよ……」
呟くようにそういうフォル。
フィアはそれを聞いて呆れたような顔をした。
そして布団越しに兄の腹あたりを殴りながら、言った。
「馬鹿者。
この家は学校から徒歩十数分だろうが。
諦めて出て来い。卒業できなかったらどうするつもりだ」
受験生の癖に。
そういって溜息を吐き出すフィア。
フォルは布団から顔だけ出すと、顔を顰めながら、言った。
「ううう……だって寒いよ、フィア」
「それは数十回聞いた。
寒かろうが雪が降ろうがあられが降ろうが関係ない。
さっさと起きて、支度をしろ、朝食はもう出来ているんだからな」
そういってフィアはフォルの布団をべりっと引きはがした。
普通の女子よりもずっと力がある彼女。
兄が巻き込んでいる布団を引きはがすくらいどうってことはない。
流石にこれはフォルにも堪らなかったらしい。
ひぃっと哀れっぽい悲鳴を上げて、フォルは恨めしげに妹を見た。
「……薄情者……大事な兄さんが凍死したらどうするつもりなの」
「この程度で死ぬんならお前はマンボウ以下だな。
ほらさっさと起きろ無能、私だって毎日毎日馬鹿兄の世話をしたくなどないのだから」
フィアはそういうと兄の布団をベランダに干してしまった。
こうすればもう一度かぶり直すことは出来ない。
流石のフォルも毛布一枚にくるまって寝るようなことはしないだろう。
この点、彼が極度の寒がりで助かったと思いながらフィアは口角をあげた。
「うぅう……仕方ないなぁ、起きるか……」
そう呟いてフォルは体を起こす。
そしてのろのろと服を脱ぎ始めた。
「さっさと降りて来いよ、スープあっためておくから」
フィアはそういうとフォルの部屋を出ていく。
フォルはそんな面倒見の良い妹の背中を見送りながらくすりと笑みをこぼしたのだった。
***
「うううう……寒いよぅ……」
フォルはマフラーに顔を埋めて息を吐き出した。
やっぱり家なんか出たくなかった……
そういってぼやくフォル。
フィアは彼の発言にじとりとした視線を向けながら、言った。
「あのな……いい加減に自力で起きて、準備をして、学校に行ってくれ」
やれやれ。
フィアは軽く肩を竦めてそういう。
フォルは彼女の発言に苦笑を漏らしつつ、首を振った。
「無理だよ……フィアは寒さに強いけど僕は寒いの大嫌いだもの。
何でだろうねぇ、同じ兄妹なのにさ」
僕だって出来ることなら寒さに強い方が良かった。
そういって溜息を吐き出すフォル。
フィアは"私だってそうだよ"といった。
「何が悲しくて朝っぱらから寝起きの悪い馬鹿兄を叩き起こさなければならないのやら」
「起こさなくて良いったら。
僕は僕で目が覚めたら学校に行くからさあ」
「そんなことを言って家を出るはずがないだろう」
事実、前に放置しておいた時、彼は一日中布団の中から出てこなかった。
食事さえも部屋に持ってきてくれといったほどだ。
そんなことは厄介なことこの上ない。
ああなるくらいだったら、朝ちゃんと叩き起こした方がよほどましだと思っていた。
びゅうと風が吹く。
ぴぃ、と18の少年らしからぬ悲鳴を上げたフォルは首を竦める。
「うぅうう……やっぱり家に帰りたい」
「返すか馬鹿」
引き返そうとしたフォルの首根っこをフィアは掴む。
フォルは哀れっぽい声で"離してよぉフィア"といった。
「寒いよう、外にいるのさえ辛いよぅ……」
「もう此処まで来たら帰るより学校向かった方が早いだろう、ほら早く歩く!」
フィアは必死に兄を叱咤しつつ歩みを進めていく。
フォルはぐだぐだと文句を言いつつも、妹にくっついて歩いていく。
―― まったく……
こんな調子だから弟だとか言われるんだぞ。
そう思いながらフィアは溜息を吐き出した。
「ほらあと少しだ、頑張って歩け、学校付いたらココアでも買ってやる」
「!ほんと?!」
そう声を上げるフォル。
ぱぁっと顔を輝かせた彼を見て、フィアは苦笑を漏らす。
扱いやすいだけまだましかこの兄は。
そう思いながらフィアはぽんと一度兄の背を叩いてやったのだった。
―― ある冬の日の… ――
(これは私たちの中ではいつも通りのやり取り。
ほら今日も、いつも通りの冬の一日が始まる)
(寒いのは苦手だと文句を言う馬鹿兄。
ココア一つで釣れるというのもどうかと思うがなぁ…)