「追いつきたいの。」の続きなシュタウフェンベルク兄弟のお話です。
お兄様たちに追いつきたくて精一杯背伸びするペルとそれを不思議そうに見るお兄様たち。
こういう兄弟のやり取りって可愛いと思うのです←
*attention*
シュタウフェンベルク兄弟のお話です
本家Laurentia!設定のお話です
ほのぼのなお話です
「おいつきたいの。」の続きなお話です
精一杯大人ぶるペル
それを不思議そうに見守るお兄様たち
結局追いつけるはずなんて…ねぇ?
勝手に完結してる弟にきょとんなお兄様たちならいいなって妄想です(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
いつも通りの、穏やかな放課後。
四人の兄弟はいつも通りに一緒に帰る。
帰りに寄った夕食の買い物の荷物を降ろしながら、ふぅっと息を吐き出す長兄……ベルトルト。
彼はふり向きながら、弟たちに問いかけた。
「さて、とりあえずお茶にしようか。
ペルは何がいいかなぁ?
カフェオレがいい?」
末っ子の少年にそう問いかける。
ほかの弟たちは飲むものが何かは分かっている。
一番下の弟だけは甘いものの方が良いだろう、そう思って問いかけたのだけれど……
ペルはふるふると首を振った。
それから、クラウスとアレクサンダーの方を見ながら、いった。
「僕も、兄さんたちと一緒がいい」
彼の発言にベルトルトは少し驚いた顔をした。
彼が首を振ったから、てっきりコーヒー系でなくジュースがいいのではないかと思ったのである。
「一緒?」
どういうこと?
そう首を傾げるベルトルト。
「ブラックコーヒーってことか?」
鞄を置きなおしたクラウスはペルにそう問いかけた。
自分たちと同じものを飲みたい、ということはつまり、ブラックコーヒーを飲みたいということで。
その言葉にペルはこっくりと頷く。
そして少し興奮したように言った。
「ん」
それがいい!とペルはいう。
それを聞いて、兄たちは少し不思議そうに瞬きをした。
「苦いぞ?」
アレクサンダーは少しからかうように笑いながら言う。
ペルは甘いものを好むから、ブラックのコーヒーでは苦すぎるだろう、と。
しかしペルは彼の言葉にむっとした顔をした。
そして、むくれたように唇を尖らせながら、いう。
「良いの……」
コーヒー飲むの、というペル。
それを聞いて幾度か瞬きをしたベルトルトは小さく笑って、いった。
「ペルがそういうなら、いいけど……」
そういいながらベルトルトは四人分のコーヒーを用意した。
今日は暑いから、とアイスコーヒーにして。
ペルは真っ黒い飲み物をじっと見つめる。
いつも身慣れているのはミルクや砂糖が入ったそれだから何だか酷い違和感だ。
違和感というよりは、不安というのか……
ちら、と兄たちを見る。
彼らはいつも通りにコーヒーを飲みながら話をしている。
そんな兄たちを見て小さく息を吐き出すと、ペルは覚悟を決めたようにグラスに口を付けた。
ごくっと、一口飲み込む。
そして、盛大に顔を顰めた。
「……っ」
言葉を失い固まるペル。
その姿を見て、アレクサンダーは"いわんこっちゃない"と笑う。
クラウスもペルの様子を見て苦笑しつつ、いった。
「苦いだろう?砂糖とミルク……」
持ってきてやって、とベルトルトにいおうとするクラウス。
しかしペルはクラウスの言葉を遮るように首を振った。
「要らない……飲める」
そういいながらもう一口コーヒーを口に含むペル。
やはり苦そうに顔を顰めている。
そんな彼を見て、兄たちは顔を見合わせる。
それから、ベルトルトは少し困ったような顔をして首を傾げた。
「そう?」
それなら良いんだけど、と呟くベルトルト。
アレクサンダーは近くにあったクッキーの箱をペルの方へ寄せてやる。
「ほら、これおやつのクッキーな」
そういうと、ペルはクッキーを取り出した。
それをさくさくと齧っている。
元から甘いものが好きなのもあるけれど、今のはおそらくそれとは別の理由だろう。
「もう少しクッキーとってこようかなぁ」
ベルトルトはそういいながら席を立つ。
クラウスとアレクサンダーもおかわりが欲しいからといって席を立った。
いつもならばこの時点で拗ねてしまうペルなのだが、今日はクッキーに集中している。
そんな彼をおいてキッチンに立った兄たちは顔を見合わせた。
「……ペルはいったいどうしたんだ?」
そう呟くように言うクラウス。
その言葉にベルトルトは肩を竦める。
「さぁ……普段ならカフェオレ飲むのにね」
いつもなら何の躊躇いもなしに甘い飲み物を飲む。
あんなふうに無理をしてブラックコーヒーを飲みたがったりしないし……
一体どうしたことだろう?
そう言いたげな顔をするベルトルト。
「何かあったのかな……」
アレクサンダーはやや心配そうに弟の方へ視線を向ける。
ペルは相変わらず苦いコーヒーと格闘している様子だった。
「何があったんだろうねぇ……」
そういいながらベルトルトとクラウスもそんな弟の方へ視線を向ける。
しかし彼の唐突な行動の理由は分からないままであった。
***
そんな夜。
ペルは自分の部屋に戻り、ベッドの上のもの……基ぬいぐるみたちとにらめっこをしていた。
自分の部屋。
そこにも、"おとな"になれない要因があった。
それは、ベッドの上に詰まれているたくさんのぬいぐるみ。
先程ちらっと覗いてきた兄たちのベッドの上にはそんなもの一つもなかった。
きっとこの子たちを片付けたら良いだろう。
そう思いながら、ペルは一つぬいぐるみを手に取る。
「……あと、はこれを……」
これを片付けたら、少しは大人になれるかな。
そう思いながら、ペルはぬいぐるみを抱きしめる。
近くには、大きな箱。
そこにぬいぐるみたちを移そうとした。
……のだけれど。
「……うぅうう……」
ペルはそう唸って、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめた。
愛しげに。
ベッドの上のぬいぐるみたち。
彼らの多くは、まだペルが学校の寮に居た時から居た子たち。
それも、今一緒に暮らしている兄……クラウスに買ってもらった子たちが多い。
それを片付けることが出来るはずがなかった。
ぎゅう、とぬいぐるみを抱きしめる。
温かくて、安心した。
と、その時。
トントン、と軽いノックの音が響いた。
それと同時にドアが開いて、ひょいとベルトルトが顔を出す。
「ペル?夕飯だよ」
「あ、うん……」
わかった、といいながらペルはぬいぐるみをベッドの上に置く。
そして、兄と一緒に部屋を出た。
一緒に歩きながら、ベルトルトはペルの方を見る。
そして"あのさペル"と声をかけた。
ペルは顔を上げて、そちらを見る。
ベルトルトは穏やかに微笑みながら、いった。
「何を悩んでるのか良く分かんないけどさ……」
彼がそういうと同時。
後ろから誰か……基アレクサンダーがわしゃっとペルの頭を撫でた。
「何かあったんなら、俺たちに言えばいいからな?」
そういって微笑むアレクサンダー。
彼の言葉にペルはぱちぱちと瞬きをする。
そんな彼の傍に歩み寄ってきた三男……クラウスもそっとペルの頭を撫でてやりながら、言った。
「力になるから……」
何でもいえばいいからな、といって微笑むクラウス。
彼の言葉にペルはふわりと微笑む。
そして、いった。
「うん……もう、大丈夫」
もう、大丈夫。
……変に大人ぶった所で無意味だということは、理解出来たから。
そう思いながらペルは兄たちと一緒にリビングに行った。
ベルトルトは食事の支度をしながら、弟に問いかける。
「新しいぬいぐるみでも欲しいの?」
さっきペルは大事そうにぬいぐるみを抱きしめていたから。
ベルトルトはペルにそう問いかける。
ペルは彼の言葉に少しだけ困ったような顔をしながら、いった。
「……それとは、ちょっと違うけど」
そういうわけじゃない、というペルはいつも通りだ。
そんな彼の様子と、昼間の少し様子がおかしかった彼……
それを想い起こしながら、アレクサンダーは首を傾げる。
「?何があったんだ?」
「秘密……」
そういってペルは微笑む。
大好きな兄たちを見つめ、"いつか追いつけたらいいな"と思いながら……――
―― 精一杯の背伸び ――
(背伸びしたって、兄さんたちには届かない。
でもいつか、いつか…追いつけたらいいな)
(何やら一人考え込んで、一人で解決した様子の弟。
…彼はいったい何を考えていたんだろう?)