西さんとメイアンのお話です。
メイアンの意地悪の所為で散々悩む西さんが書きたくて…
とりあえず色々すみません西さん←
*attention*
西さんとメイアンのお話です
本家Laurentia!設定のお話です
シリアスめなお話です
メイアンのちょっとした悪戯
それに凹んだり悩んだりな西さんが書きたくて…
とりあえず西さんすみません←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
誰もいない、静かな屋上。
その冷たい壁に寄りかかりながら青空を見上げる、黒髪に金の瞳の少年……西。
彼は深々と溜め息を吐き出した。
綺麗な青空。
夏を示す大きな雲が浮いている。
じりじりと肌を焼くような陽射しが降り注いで、屋上のコンクリートを焼く。
その様子を見つめて、彼は目を細めた。
現在はまだ授業中。
だからこそ、此処……屋上はとても静かだ。
休み時間、昼休みならばなお、此処は生徒でいっぱいになるのだから。
……いつもならば、彼が此処で授業をサボることはない。
保健室、或いは恋人がいる化学準備室に居る。
しかし今日は、そこにいられない理由があった。
「……どうした、んだろう」
思わずそう呟く、西。
彼の表情は少し、寂しげで悲しげなものだった。
思い出すのは、いつも通りに化学準備室に行った時の、恋人の様子。
いつもならば笑顔で迎え入れてくれるはずの彼……メイアン。
授業をサボってきたとなると苦笑して"悪い子ねぇ"などというけれど、何処か嬉しそうに笑いながら、迎え入れてくれるのに……
―― あら、来たの?
今日の彼は、そんな感じでそっけなかった。
それだけいうと、別に何を言うでもするでもなく、仕事に戻ってしまった。
仕事が忙しいのだろうか、と思ったが、それにしたって彼はいつでもなんらかいってくれる。
しかし今日は本当に何もない。
ただ一人、もくもくと仕事をこなしていた。
メイアン、と彼を呼べば振り返るものの、どうしたの?という問いかけに首を振れば、彼は眉をよせた。
……やや迷惑そうに。
そんな態度を彼がとることは本当に珍しかったから、西は困惑した。
そして、何を言うことも出来ずに、授業に行くからとだけいって抜け出して来たのだ。
「俺、何かしたかな……」
そう呟いて溜息を吐き出す、西。
彼がこういう行動に出るのはいつだって、拗ねているか喧嘩中。
しかし昨日までは普通にやり取りをしていたし、こんな態度を取られるまで何かをしてしまったという記憶もない。
だから、困惑していた。
謝るといったって謝ることなんてないわけだし……
無意識に何かしてしまったというなら……それがわからないことにはどうにもならない。
ふ、と溜息を吐き出しながら、彼は膝を抱えて座った。
屋上は、あまり良い思い出がある場所ではない。
けれど今は此処にしか、居場所がなかった。
保健室に行くことも考えたけれど、保健室にいる養護教諭……カルセはメイアンの友人でもある。
もしかしたら、彼が保健室に来るかもしれない。
そう思うと、保健室に行くことさえ出来なかった。
独り暇をつぶす。
それがこれほどまでに退屈なものだっただろうか。
そう思いながら、西は俯く。
嫌われてしまったのか。
愛想をつかされたのだろうか。
……でも、どうして。
否、明確なきっかけはなかったかもしれないけれどもしかしたら昔から耐えていたのかも……
嫌われてしまった?
もう、前の用には戻れない?
……もう、好きとはいってもらえない?
暑い。
今日はいつもよりやや湿気も高く、じっとりと暑い。
陽射しも強いけれど、それにも負けない湿度……
これから雨が降るのかも知れない。
そう思いながら西は息を吐き出した。
―― あぁ、くらくらする。
そう思いながら西は目を閉じる。
眠い。
疲れた。
……否、気分が悪い?
そう思うと同時に、意識がふわりと揺らいで、消えた。
***
ひんやりと、冷えた感触。
頬を撫でる優しい手。
唇をそっとなぞる、濡れた指先。
―― ……から、……りすぎだと……
―― ……って、……んなことになると……
聞こえる、二つの声。
呆れ果てたような声と、少し焦ったような声。
それを聞いて、西はゆっくりと目を開けた。
目に映るのは真っ白な天井。
見慣れた、保健室の天井だった。
吹き抜けていく風。
それが心地よく頬をなでていく。
「う……」
その感触に、西は小さく声を漏らした。
それが聞こえたのか、少し離れていた所で話をしていたらしい二人は顔を上げた。
「西!」
聞こえたのは、慣れた恋人の声。
それに西はゆっくりと瞬きをする。
そんな彼を心配そうに覗き込む、緑の瞳……
「大丈夫……?」
そう問いかけてきたのは、西の恋人であるメイアン。
先程のような、冷たい声ではない。
優しい、いつも通りの声。
それに西は少しだけ困惑した。
そんな彼を覗き込む、もう一つの影。
それは、此処……保健室にいる教師、カルセだった。
「気分はどうですか?」
そう問いかけながら、彼はそっと西の額を撫でる。
その優しく冷たい手に、西はゆっくりと瞬きをする。
それから小さく頷いた。
「ん……大丈夫、です」
何故彼が大丈夫か、と訊ねるのか理由はよくわからなかったけれど……
カルセはそんな彼を見て、微笑みながら言う。
「水飲んで休んでいなさい」
そういうメイアン。
その言葉に西は不思議そうな顔をする。
どうして水を飲め、なんて……
そんな彼の表情を見て、カルセは藍色の瞳を細める。
そして、その理由を説明した。
「屋上で倒れてたんですよ。
炎天下、水も飲まずにいたんでしょう」
「あ……」
彼の言葉で全て思い出した。
屋上にいたこと。
そこでどうしてメイアンがあんなに冷たくしたのか考えていたこと。
その時に気分が悪くなってきたことも……
あぁ、なるほど。
熱中症にでもなったのか。
怒られるだろうな、とおもう。
カルセはかなり体調管理に厳しかったから……
と、カルセは小さく息を吐き出した。
そしてちらりとメイアンの方を見て、いう。
「まぁ、原因の一端はメイアンなのでしょうから……」
その言葉に西は幾度も瞬きをした。
どうして彼の所為になるんだ、と。
メイアンは彼の言葉に眉を下げる。
そしてそっと西の額を撫でながら、いった。
「ごめんなさい。私が意地悪した所為でしょう」
「意地悪……?」
どういうこと?
そう言いたげな彼を見て、メイアンは眉を下げつつ、言う。
「いつも私が好きだと言うばかりだから、西をからかおうと思って。
私が冷たくしたら西はどんな反応するかなぁ、って。
……貴方が此処まで思い詰めるとは思ってなかったわ」
そういいながらメイアンはそっと西の頬にキスを落とす。
そんな彼の行動に、西はほっと脱力する。
「そ、うかよ……」
なんだ、という想いを抱く。
先程とは少し違う理由で、力が抜けそうになる。
彼に嫌われたと思った。
それが怖くて、怯えて……
小さく震える体。
しかしそれをメイアンに知られたくなくて目を伏せる。
西はふっと息を吐き出して目を閉じた。
メイアンはそんな彼の頭を優しく撫でていたのだった。
―― 抱いた不安と真相と… ――
(大切な恋人に嫌われたと思った。
だから、悩んで、悩んで…その末に倒れて)
(ごめんね、こんなことになるなんて思っていなかったの。
ただの悪戯だったのよ…)