ワルキューレコンビ&フォルのお話です。
シリアスなお話をやりたくなりまして…
色々暴走かましてすみません…←おい
*attention*
ワルキューレコンビ&フォルのお話です
シリアスなお話です
悪戯堕天使の呪術で隔てられる二人を書いてみたくて…←
フォル相手に本気で切れたり、目を覚まさない大佐殿に泣きそうになってるヘフテンさんだったら可愛いな、と…
そして大佐殿とフィアとの絡みもやりたかったのです(^q^)
もしかしたら、もうちょい続くかも…?←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かな、静かな、夜の医療棟。
この城のなかに人なんていないのではないかと思うほど静まり返ったその場所……
そんな医療棟の一室で眠っているのは黒髪の少年。
ゆっくりと上下する胸をみる限りただ眠っているだけのようなのだけれど、
呼吸はあまりに深くゆっくりで、ぴくりとも動かない。
眠っていても、人間は時々寝返りを打ったり声を漏らしたりするものなのに、
それも一切なく、ただただ静かに眠り続けるその姿は、
さながらお伽噺に出てくる眠り姫のようだ。
目を閉じたままの、愛しい人。
その小さな手を握り続けて、いったいどれくらいの時間が経っただろう?
ぎゅ、と一度強く黒髪の少年の手を握りしめた金髪の少年は小さく息を吐く。
小さな声で呼べど彼は目を覚ます様子を見せなかった。
「大佐……」
彼が眠ってしまってから、いったいどれだけの時間が経つだろう。
彼の左手の甲に浮かぶ逆十字の痣が、忌々しい。
片方残された腕。
そこに当てられた呪術が、こうして彼を眠らせているのだった。
「まだ傍についてたんだ」
不意に聞こえたその声に、ヘフテンははっとした。
素早く顔をあげて、そちらをみる。
そこにいたのは亜麻色の髪の青年だった。
その姿をみて一瞬驚いたように目を見開いた後、ヘフテンは険しい表情を浮かべた。
そして、椅子から立ち上がりながら、振り絞るような声で言う。
「よくも大佐を……」
そう。
彼に呪術をかけたのは、この堕天使……フォルだった。
ヘフテンとシュタウフェンベルクが一緒に任務に赴いた帰り、
彼が突然現れて、攻撃を仕掛けてきたのである。
そして彼が放った呪術がシュタウフェンベルクに当たって、
こうして彼は、深い深い眠りについたのだった。
「僕は君を狙ったんだよ?
憔悴する様は彼の方が面白そうだったし」
そういいながら悪びれた様子なく笑う、堕天使。
その言い方からして……
いずれにせよシュタウフェンベルクを苦しめるつもりだったことが窺える。
ヘフテンは空間移動術で自分の武器を取り出した。
強い威力を持った、実戦用の小型爆弾と、小銃。
それをフォルに向ける。
「今すぐ呪術を解け!そうでなければ撃つ!」
鋭い声で、ヘフテンはいう。
フォルは彼の行動にも言葉にも動じた様子なく、肩を竦めた。
「無理だよ。僕がかけた呪術は"ある条件"を満たさないと解けない。
かけた僕にでさえも、ね……?」
そういいながら、フォルはにっと笑った。
意味ありげな笑み。
ヘフテンは険しい顔をしながら、彼にいった。
「条件って何だ」
「教えないよ。教えたら面白くないし……
何より、君が聞いたことを後悔すると思うんだよね」
だから教えない。
そういってフォルは笑う。
ヘフテンはぎりっと唇を噛み締めた。
その強さに唇が切れて、血が伝う。
反射的にフォルに攻撃を仕掛けようとしたが、
彼の"止めた方が良いよ"という一言で、冷静に戻った。
此処は、病室。
あげく目の前には眠っているシュタウフェンベルク。
こんなところで爆発なんて起こせば、大騒ぎになるし、
愛しい彼にまで怪我をさせかねない。
フォルも恐らくそれをわかっているのだろう。
「っ、卑怯者……!」
「卑怯で結構。僕は堕天使だからねぇ……
人間(ヒト)が焦ったり苦しんだりしてる姿をみるのが好きなだけだ」
僕が好きな人たちのそれは除くけどねと涼しい顔をして言いながら、
フォルはシュタウフェンベルクのベッドに歩み寄って、彼に触れようとする。
それと同時、ヘフテンが素早く魔術を使って彼の手を弾いた。
炎属性の魔力に驚いて、フォルは手を引っ込める。
「大佐に触るなッ!」
「わー、怖い。怪我するとこだった」
たいして怖がった様子もなく、フォルはそういう。
そして、シュタウフェンベルクの手の甲に浮かんだ自分の魔術の印をみて、
満足そうに微笑みながら、言う。
「どれくらい経つっけ、二日?三日?」
「煩い……」
「その間中君はずっと此処にいたの?
もう傍にいても手を握っても、どれだけ呼んだって彼は目を覚まさない……
無意味だから止めた方が良いよ?」
「煩い!」
そういうと同時、ヘフテンはフォルに向かって発砲した。
騒ぎになったって構わない。
シュタウフェンベルクには死んでも当てない。
そんな思いで。
確かに当たったと思った。
しかしフォルの姿は既にそこにはなくて……――
「無駄だよ。人間は僕に勝てないんだ」
すぐ後ろで声がした。
びくりと体が強張る。
すぐ後ろ。
ともすれば、すぐにでもヘフテンを殺せる位置だ。
そんな彼の心情がわかったのだろう。
フォルはくすくすと笑った。
そして、言う。
「あはは、殺さないよ。
殺すことが目的じゃない。
僕は人殺しをしたいだけの狂った殺人鬼じゃない……」
―― 僕がほしいのは、苦しみだからね。
そういって笑うと、フォルは姿を消した。
部屋のなかには再び静寂が戻る。
すぐに銃声に驚いたジェイドが駆けつけたけれど、
なんでもないといって追い払った。
「大佐……嘘ですよね?
もう目を覚まさないなんてこと……ないですよね?」
ヘフテンは縋るように、彼に問いかけた。
いつもならば自分を励ますように、慰めるように撫でてくれる彼。
しかし今は、ぴくりとも動かない……
ヘフテンはそんな彼の手をぎゅっと握る。
その手は、声は、微かに震えていたのだった……――
***
―― そんな、一方。
「ん……」
シュタウフェンベルクは静かに目を開けた。
それは、いつも通りの自分の執務室……
ディアロ城で借りている執務室のようだった。
随分長く眠っていたような気がする。
そう思いつつ、彼は体を起こして……おかしなことに気がついた。
「……ヘフテン?」
周囲を見渡して、彼は自分の副官の名前を呼ぶ。
いつもならば傍にいる彼。
朝も、なかなか目を覚まさない自分を彼がいつも起こしに来る。
それがないのは、ちょっと異常だ。
どうしたのだろう。
そう思いつつシュタウフェンベルクは体を起こして、着替える。
手伝ってくれるヘフテンがいない分、いつもより少し時間がかかった。
いったいどうしたのか。
体調でも悪いのだろうか。
そう心配になりつつ、彼は急いで部屋を出る。
と、ちょうどそこで誰かにぶつかった。
「わ……っ」
相手の方が小柄で、長身のシュタウフェンベルクにぶつかった彼は転ぶ。
シュタウフェンベルクは慌ててそんな相手を立たせようと手を差し出した。
「っ、すまない、怪我は……」
そこで漸く誰にぶつかったかを理解した。
それは、雪狼の騎士……フィアで。
「あ、ああ、大丈夫だ、すまない」
そういいつつフィアは一人で立ち上がる。
そして軽く服を叩きながら、いった。
「お前を呼びに来たんだ。遅いから」
フィアがそういう。
彼の言葉に驚いて、シュタウフェンベルクは瞬きをした。
今まで、そんなことはなかった。
そもそもヘフテンが起こしに来てくれたから寝坊することはなかったし、
遅れかけたところで呼びに来るのは彼の友人であるクヴィルンハイム辺りで……
とはいえ、だ。
呼びに来てくれたのだからと、彼は礼を言う。
「すまない、ありがとう。
私も、ヘフテンのところに寄ったら直ぐにいくから……」
「え……」
シュタウフェンベルクの言葉にフィアが驚いたような顔をした。
その反応に、シュタウフェンベルクは怪訝そうな顔をする。
どうかしたか、と問いかける彼に視線を揺るがせて、フィアはいった。
「……シュタウフェンベルク、寝ぼけてるのか?」
「?何が、だ?」
彼の言葉にシュタウフェンベルクは更に怪訝そうな表情を浮かべる。
フィアはそんな彼をみて困惑したような顔をした。
そして暫し悩んだような顔をした後、いった。
「……ヘフテンは、いないだろう」
彼の言葉にシュタウフェンベルクは大きく目を見開いた。
……いない?
「!?何を……」
何を、言い出すのか。
シュタウフェンベルクはそういう。
フィアは彼をみて、顔を歪めた。
そして、小さく息を吐き出しながら、いった。
「お前の、仲間は……」
―― "あのとき"皆、死んだだろう?
彼の言葉に、一瞬全ての時が止まった気がした。
信じられない。
信じたくない。
そもそも、そんな記憶……ない。
「あの、時?」
シュタウフェンベルクは放心したようにフィアに問いかける。
フィアは彼を見ながら、心配そうにいった。
「……どうしたんだ、ほんとに」
「いいから、教えてくれ、あの時って……」
あの時とは何なのか。
シュタウフェンベルクはそう問いかける。
フィアはそんな彼を怪訝そうな目で見つつ、いった。
「お前たちが、クーデターを起こした、あのときだよ。
あのとき……お前以外は、皆死んだ。
お前の兄も、友人も……ヘフテンも」
彼の言葉にシュタウフェンベルクは目を見開いた。
「!そう……」
そう、だったのか。
一応そう呟いたけれど、シュタウフェンベルクのなかでは何も解決していない。
死んだ?
皆、死んだ?
クーデター。
それは確かに、起こそうとしたものではあるけれど……
いつ実行に移した?
……わからない。
でも、もしそうだとしたら……
ヘフテンが自分の部屋に来なかったことに、納得がいく。
こうしてフィアが迎えに来たことにも。
フィアはそんなシュタウフェンベルクを見ながら、心配そうにいった。
「本当に大丈夫か?もう、乗りきったものだと思って……」
思っていたんだが。
そんなフィアの声は一瞬遠退いた。
ふらりと、体がかしぐ
フィアがそれを慌てて抱き止めた。
「おい!」
大丈夫か?と問いかけるフィアの焦った声。
シュタウフェンベルクはすぐに体勢を立て直した。
「っ、すまない、大丈夫だ」
すまない。
少し、外の空気を吸ってくる。
シュタウフェンベルクはフィアにそういうと、ふらふらと、一人で中庭に出ていった。
そしてまじまじと自分の手を見つめた。
手を握ったり開いたりを繰り返した後、自分の太股をつねる。
痛みが、あった。
「夢じゃ……ない……?」
夢じゃ、ないんだ。
シュタウフェンベルクはそう呟くと、顔を手で覆った。
「ヘフテンも……メルツも、兄さんも、いない……?」
先刻のフィアの発言から、それを想定する。
胸が強く締め付けられるのを感じた。
「嘘だ……」
掠れた声でそう呟くが、彼の声に応える人間は誰もいなくて……――
―― 恐れる世界 ――
(それはきっと、ただひとつ
愛しい人がいない世界だ)
(呪いに隔てられた二人。
苦しみを、悲しみを、癒してくれる彼はいなくて……――)