科学者道化師コラボのお話です。
こういうシリアスがふとやってみたくなりまして…←
*attention*
科学者道化師コラボのお話です
シリアスなお話です
ある意味カルセのトラウマネタ?です
フィアとムッソリーニさんとの絡みもやりたくてああいう風に…
カルセは案外心配性です
意識薄くても大丈夫だよって言おうとするムッソリーニさんが書きたくて…←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
いつも通りの午後……
穏やかな日差しが降り注ぐその時間帯……――
金髪の少年、ムッソリーニは食堂の椅子に腰かけて俯いていた。
小さく息を吐き出す彼の顔色は、お世辞にも良いとはいえない。
俯く彼の吐き出す息は少し浅く、弱い。
彼はぎゅっと自分の左腕を押さえた。
まるでそこが痛むかのように……
「ムッソリーニ?」
そんな彼に声をかけたのは、亜麻色の髪の少年、フィア。
珍しくこんな時間に此処で座っている彼にに驚いて、こうして声をかけたのだった。
ムッソリーニはそんな友人の声に驚いたように顔をあげた。
そして、にこりと微笑む。
「よぉ、フィアの嬢ちゃん。元気?」
そんな彼の問いかけに、フィアは幾度か瞬きをした。
そしてその後小さく頷きながら、言う。
「あ、あぁ……元気、だが……
それは、俺が逆に問いたいところだな。
大丈夫か、ムッソリーニ……?」
顔色がよくないが、とフィアは言う。
言い方こそそっけないが、表情は心配そうにしている。
ムッソリーニはそんな彼を見て、にっこりと微笑んだ。
「俺?俺は、大丈夫……」
大丈夫だよ、と彼は言おうとした。
それより先に、彼の額に何かが……基フィアの掌が触れた。
それにムッソリーニは大きく目を見開く。
「ぅ、冷た……」
「熱があるな……やはり体調が悪いんじゃないのか」
フィアは心配そうな声色でそういう。
ムッソリーニはそんな彼の言葉に幾度も瞬きをした後、椅子から立ち上がった。
「大丈夫だよ、フィアの嬢ちゃん手が冷たいだ……っ」
冷たいだけだ。
そう言おうと思った。
しかし、ぐらりと目眩がして、体の自由が利かなくなる。
「ぅ、あ……っ」
ふら、と体が傾ぐ。
倒れかけた彼の体を、慌てたようにフィアが抱き止める。
「ムッソリーニ!大丈夫か?!」
「は……ぁ……平気、だいじょぶ……」
ごめんな、と言いながら彼は体を起こそうとする。
フィアはそんな彼の言葉に顔を歪める。
「何処が大丈夫なんだよ……医療棟にいくぞ」
フィアはそういいながらムッソリーニの体を支えながら歩き出す。
ムッソリーニは小さく息を吐き出しながら、首を振る。
「い、や……平気……」
「平気そうに見えないからいっているんだ!ほら、いくぞ!」
フィアはそういうと、ムッソリーニの体を支えて、医療棟に向かって歩いていく。
ムッソリーニも彼の腕の強さに抵抗を断念して、歩き出した。
「いいよ、フィアの嬢ちゃん……俺一人で行けるし」
ムッソリーニは自分を抱き抱えるようにしてあるいている彼に言う。
フィアはそんな彼を見て顔をしかめると、しっかり彼の体を支え直しながらいった。
「冗談。見るからにふらふらのお前を一人でいかせるほど俺は薄情じゃないぞ」
フィアはそういう。
ムッソリーニはそんな彼の言葉に少し戸惑ったように視線を彷徨わせる。
こんなに華奢な少年に支えられて歩いていくのは恥ずかしいし、
何よりほとんど体に力が入らない自分を支えている彼に申し訳がない。
「う、……でも」
「嫌だと言うなら今すぐ姫抱きにして歩いていくぞ」
フィアはきっぱりとそういう。
自分にはそれくらい簡単に出来るぞ、と……
ムッソリーニは大きく目を見開いた。
そして、ふっと苦笑を漏らす。
体に力が入らないのは事実。
一人で歩いたら途中で完全に意識を失いそうだと言うのも事実だ。
今はおとなしく彼に支えられていた方がいいだろう。
ムッソリーニはそう思いながら意識を保つのに必死になりつつ、
フィアに支えられたまま医療棟に向かって歩いていったのだった。
***
それから、暫くした頃……
フィアはムッソリーニを医療棟につれていった。
静かな午後の医療棟。
今日は患者も少ないらしく、静かで病室もすいていた。
ムッソリーニはすぐにベッドに寝かされた。
ジェイドが診察してくれたのだけれど、彼は困ったような顔をした。
「風邪、ですかね……でも、それにしては……」
ジェイド何か引っ掛かるところがある様子で、少し考え込む表情だ。
ムッソリーニはぼんやりとした意識のままに彼の顔を見つめた。
こんな風に体調が悪くなったのは、腕に怪我をした時からだ。
任務中に怪我をして、でも浅い怪我だから大丈夫だと思って放っておいた。
そうしてからこうして熱が出たのだ。
だいじょうぶだろう。
そう思っていたのに、次第に体の怠さや息苦しさが出てきて、
風邪を引いたのだろうか、と思うようになった。
けれど、いつもなら簡単になおる程度の症状なのに、
どれだけ待っても症状は軽くならず、微熱も引かない。
おかしいと、思った。
それと同時に、原因も何となく思い当たるような気がした。
だから……
反射的に腕の傷を押さえたのだった。
それと、同時。
ジェイドがはっと何かに気がついたような顔をした。
その瞬間に袖を捲られる。
そしてそこにあった傷を見た彼は、顔を歪めた。
―― どうして?
どうしてそんな顔をするんですか。
何か、まずいんですか?
ムッソリーニはそう問いかけたかったのだけれど、気だるくて声をあげられない。
ぼんやりと薄れていく意識のなかで最後に見えたのは、
慌てたように部屋を出ていくジェイドの後ろ姿だった。
***
ふわふわと、遠い意識。
呼吸が浅くて苦しい。
熱いのに寒い。
変な感じがして、怖かった。
薄く、目を開ける。
視界もぼんやりと霞んでいて、ものが見えづらい。
誰かが傍にいてくれるようだけれど、誰なのかもわからない。
いったい、どうして?
どうして、こうなったんだろう?
体調が悪いのを、放置したから?
それが、こんなにいきなり悪くなったの?
ムッソリーニはそう思うが、問いかけることも出来ないし、答えも出ない。
そんな状況に、彼は更に恐怖した。
それと、同時。
霞んだ視界に誰かの姿が入ってきた。
ぼんやりとぼやけているが、わかる。
淡水色の髪。
濃い藍色の瞳。
眼鏡をかけている。
「かる、せ……さ」
掠れた声は、彼に届いただろうか。
彼の表情はよく見えない。
けれど、彼はそっとムッソリーニの手を握った。
優しく、でも力強く。
そんな彼の手に少しほっとする。
そしてどうにか力を込めて彼の手を握りかえそうとした。
しかし、それより先……
唇を塞がれてそれどころではなくなった。
強く押し付けられた唇。
そこから何か、液体が流し込まれる。
苦い、苦いそれ。
思わず吐き出しそうになるムッソリーニだったが、
カルセはそれを許してくれない。
「っ、ぅ……」
小さくうめきつつ、ムッソリーニはそれを飲み込んだ。
薬、だろうか?
カルセは彼が飲み込んだのを見て少しほっとしたような間を空けた後、
彼は優しくムッソリーニの額を撫でて、もう一度強く手を握った。
ムッソリーニはその時、おかしなことに気がついた。
ムッソリーニの手を握るカルセの手が、微かに震えている。
いったいどうしてだろう?
そう思うムッソリーニだけれど、ムッソリーニの意識も薄れていく。
大丈夫だよ、と言うように一度彼の手を握り返すと同時、
完全に意識が途切れて、なにもわからなくなった。
***
「ん……」
ぱち、とムッソリーニの目が開いた。
前に目を開けた時のように視界が霞むことはない。
少し、体の怠さも収まっている。
「!ムッソリーニ?」
聞こえた声は他でもない、カルセの声。
ムッソリーニは少し体を起こしながら彼の声の方を見る。
「カルセさ……」
彼を呼ぶのと同時……
ぎゅっと、強く抱き締められた。
それは他でもない、愛しい彼……カルセの腕で。
「……良かった」
小さく聞こえたその声は、震えていた。
何かをとても恐れているかのように……――
「……わかって、いるんですか……?」
「え、何を……?」
ムッソリーニは困惑したようにカルセに問いかける。
カルセは一度彼の体を離すと、彼の服の袖を捲った。
それは、彼が怪我をしたところ。
そこには丁寧に包帯が巻かれていた。
「あ、これ……」
「怪我を、したでしょう?魔獣の攻撃で」
問いかけるカルセの声は静かだ。
ムッソリーニは少し戸惑いつつ、頷く。
「え、はい……」
「……クレースと、同じ病気に罹っていたんですよ、ムッソリーニ」
カルセは静かな声でそういった。
ムッソリーニは彼の言葉に大きく目を見開く。
「え、それ、俺……」
「ともすれば死んでいた、と言う話です」
カルセの言葉に、すっと背筋が冷えた。
クレース……かつてのカルセの恋人。
彼が命を落としたのと同じ病に自分は罹っていたと言う。
「どうしていたつもりだったんです?
ジェイドが貴方の症状がそれだと気がつかなかったら?
私の薬の処方が遅れていたら?
……私にもう一度、恋人を失えと?」
カルセの声は震えていて、悲しげで……怯えているようだった。
事実、怯えただろう。
愛しい恋人。
それを、また失いかねない状況に陥った。
しかも、かつてと同じ原因で……
薬は、開発した。
それでも、処方が、効きが遅ければ、意味はない。
彼が死んでしまう可能性はいくらでもあった。
ムッソリーニは瞬きをしてから……ぎゅっと、カルセに抱きついた。
「ごめんなさいカルセさん……でも、ありがとう」
助けてくれて、ありがとう。
ムッソリーニは彼に言う。
彼が、助けてくれたのだ。
自分を、助けてくれたのだ。
カルセはそんな彼の言葉と行動に、グッと唇を噛む。
そして、小さく溜め息を吐き出すと、"当分は絶対安静ですからね"と呟くようにいい、
優しく彼の頬にキスを落としたのだった。
―― 恐怖と、安堵と… ――
(貴方を失うかもしれないと恐怖した
もう二度と愛しい人を失いたくないと…)
(貴方をどれほど恐れさせてしまったか、理解した
ごめんなさい、でもありがとう)