赤加味金髪コラボのお話です。
ナハトさんが回答してくださった紹介バトンのなかで、
ライニさんがアネットのからだの傷に関して気にしてくださっていたので…←おい
*attention*
赤髪金髪コラボのお話です
ほのぼの?なお話です
傷跡ネタなお話です
しょっちゅう怪我をして帰ってくるアネット
ついでに彼は嘘が下手ですしライニさんは見抜くの上手いだろうな、と…
ちょっとデレ気味?でアネットを心配するライニさんを書きたくて…←こら
きっかけは答えていただいたバトンと言う(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
鮮やかな夕焼けが空を染める時間。
任務を終えた騎士たちが続々と城に戻ってきている。
彼らは仲間と合流すると、賑わい始める食堂に向かっていった。
そんな時間帯。
長い、騎士の棟の廊下。
そこを歩いていく美しい金髪の少年……ハイドリヒ。
その足取りはいつもより若干早い。
彼が向かうのは、炎豹の騎士たちの部屋が並ぶ場所だった。
その一室の前にたつと、ハイドリヒは小さく溜め息を吐き出した。
部屋のなかからは、気配を感じる。
いつもならば、任務が終わり次第すぐに自分のところに来る赤髪の彼……アネット。
此処は彼の部屋の前だ。
もうとっくに帰ってきているはずなのに、アネットはやはりまだ此処にいる。
つまるところまだハイドリヒのところに来ていない。
自惚れではないが、それは異常なことだ。
いつもならば、真っ先にハイドリヒのところに来たあげく、
上官であるアレクへの報告を忘れて怒られるくらいなのに……――
こういう時は、ハイドリヒのところにいけない理由があると、相場が決まっている。
その事をハイドリヒもよくよく理解している。
ハイドリヒは小さく溜め息を吐き出すと、軽くドアをノックした。
室内からはすぐに"どーぞ"と返事がある。
どうやら返事が出来ないと言う状況ではないらしい。
その事に若干ほっとしつつ、ハイドリヒはドアを開けた。
「あ……ラインハルト……」
アネットは開いたドアから入ってきた人間を見て大きく目を見開いた。
そして視線をあちこちへ彷徨わせる。
「帰っていたんですね、アネットさん」
「ん、おう、ただいま、ラインハルト」
そういってアネットは笑うが、やはりその表情は何処かひきつったようなものだ。
いったい、どうしたのだろう?
そう思いつつハイドリヒはまじまじとアネットを見つめ……
美しい碧眼を細めつつ、いった。
「布団を体に巻き付けるほど寒いのですか、アネットさん」
そう。
彼の指摘通り、アネットは自分の体に毛布を巻き付けていた。
暑がりな彼だと言うのに。
案の定、ハイドリヒの指摘にアネットはぎょっとしたような顔をした。
そしてすぐにハイドリヒから目をそらしつつ、"何でもねぇよ"と言う。
ハイドリヒはそんな彼を見て溜め息を吐き出した。
そしてつかつかとアネットに歩み寄ると、やや強引に彼が巻き付けた毛布を剥がした。
「っ、いて……」
アネットは小さく悲鳴をあげた。
ハイドリヒが剥がした毛布の下……
正式に言えば、アネットが身に付けている白いディアロ城騎士団の制服……
それは、赤黒く染まっていたのだ。
「ほら、見たことですか……」
ハイドリヒはやれやれと言う顔をする。
こういうことだと、思っていた。
体調が悪くて顔が見せられないか或いは怪我をして動けない、
或いは、その怪我をハイドリヒに見せたくなくて、来ない。
それくらいしか彼が来ない要因は思い付かないのだ。
「一体何をどうしたらこうなるんですか……」
ハイドリヒは彼の座っているベッドの上に座る。
そして、彼の方を見ながら、顔を歪めた。
「また任務の時に?」
「あぁ、まぁな……大丈夫だよ、大体魔獣の返り血だからさ」
そういってアネットは笑う。
ハイドリヒはそんな彼をじっと見つめた。
彼が嘘をつけない性分であることは、ハイドリヒが一番よく知っている。
彼を見ていれば口にしたことが本当か嘘かくらい簡単に見抜ける。
今のは……嘘だ。
ハイドリヒは溜め息を吐き出した。
そして、アネットの服に手をかける。
それと同時にアネットがびくっと肩を跳ねさせた。
「いっ、やめ、ラインハルト……!」
小さな悲鳴。
それを聞いてハイドリヒは顔をしかめつつ言う。
「痛いって言う時点で、おかしいでしょう」
返り血だけなら痛いはずがない。
そういいつつ、ハイドリヒはアネットの服の留め具を外して、服を脱がせた。
そして、露になった肌を見て、顔を歪める。
アネットの肌には新しい傷が幾つもついていた。
彼は元々部隊柄怪我が絶えない。
深い傷も浅い傷もいくつも作ってくる。
その傷が治りきらず、肌にいくつも痕を残しているくらいだ。
そんな、日に焼けた肌……
そこに新しくついた傷は、恐らく魔獣の爪でつけられたであろう傷だった。
「ほぅ……これで、大体が返り血だと?」
「う……だから、見せたくなかっ……!」
ハイドリヒはそんなアネットの肌に触れる。
傷口に触れられてアネットはぐっと唇を噛んだ。
「な、にすんだよ、ラインハルト……」
「医療棟にいっていないでしょう?」
傷を見るに、とハイドリヒはいった。
その言葉にアネットはやはり息をつまらせる。
図星な訳ですね、といいながらハイドリヒは何度目になるかわからないため息を吐く。
「せめてちゃんと手当てしてもらってきてくださいよ……
放っておいたら痛いでしょう」
まったく、と呟くように言うハイドリヒ。
アネットは彼の言葉に唇を尖らせる。
「ヤだよ……だって、絶対ジェイド様に叱られる……」
また無茶をしてって、とアネットは呟く。
怒られるであろうことが想像出来るような傷を負ってこないでほしいのだが……
それをアネットに望めないことは、ハイドリヒもよく知っている。
そして、この傷となると、下手をしたら病室に閉じ込められかねない。
周囲もよく知っている通りアネットはすぐに無茶をするタイプで、
任務で怪我をしたのだから暫し休めと言われても、
休むことなどせずに出掛けていってしまうような騎士なのだ。
そうなることを見越しているのは医療部隊長。
彼の手にかかれば患者を部屋に閉じ込めることくらい容易い。
そうなれば、ハイドリヒもアネットに会いづらくなる。
それは無論寂しいと思うし、下手をしたらアネットは病室を抜け出して、
ハイドリヒのところに来かねない。
そんなことをしたらまた叱られるのは、必至だ。
「……アネットさん、一式の治療器具は持っているのですよね」
ハイドリヒはアネットにそういう。
彼の言葉にアネットはきょとんとした顔をした後、こくりと頷いた。
「一応、消毒液とか絆創膏とか位は……」
「それ、貸してください」
私がなんとかしますから、とハイドリヒは言う。
アネットはそんな彼の言葉に少し戸惑いつつ立ち上がって、
彼が仲間にやや強引に持たされている医療器具をとってきた。
ハイドリヒはそれをまさぐって、消毒液や絆創膏等を取り出す。
そして上着を脱がせてむき出しにしたアネットの体についた傷に処置をする。
「いってぇ……しみる」
「我慢しなさい。
放っておいて化膿したらもっと痛いですよ」
ハイドリヒはそう脅しつつ、アネットの傷に手当てをする。
流石に少ししみるらしく、アネットは唇を噛み締めていた。
とりあえず消毒をして、傷に絆創膏をはる。
大きな傷にはガーゼを当てて、軽く包帯を巻き付けた。
これは何度か取り替えてやる必要があるだろうなとか、
恐らくまたこの傷は体に残るのだろうな、とハイドリヒは思う。
「……心臓に悪いのですが」
ハイドリヒはぽつりとそう呟いた。
そんな彼の声にアネットはぱちぱちとまばたきをする。
「ラインハルト?」
「いちいちそうして傷を増やして帰ってこられると、心臓に悪いんです」
やめてください、とそっけなく言いつつ、ハイドリヒは消毒液をしまう。
これで一通り処置は終わった。
もしかしたらジェイド辺りに手当てしてもらえば、
もう少し綺麗に治ったかもしれないけれど……
こうして自分で手当てをしたのはちょっとした独占欲の表れだ。
アネットはじっと自分の恋人を見つめる。
そしてふっと微笑むと、ハイドリヒを軽く抱き寄せる。
そして彼の頬にキスをしながら、いった。
「嫌いか?」
「何が……?」
そう問いかけるハイドリヒの華奢な手をつかんで、
アネットは露になっている自分の肌に触れさせる。
そこには、古い傷跡が残っている。
「きれーな肌じゃないけど……嫌いか?」
アネットはそう問いかける。
ハイドリヒはそれを聞いて幾度かまばたきをした後、溜め息をひとつ。
「……嫌いでは、ありませんよ」
ハイドリヒはそう呟くようにいった。
事実、嫌いではない。
こうして戦いの痕が残るアネットの肌。
それは彼らしいと思うし、嫌いではない。
でも……
「心配するのは、事実なんです。
だから……あまり、むちゃくちゃをするのはやめてください」
良いですね、と言うと、ハイドリヒはアネットから離れた。
そんな彼を見て、アネットは笑う。
「りょーかい。なるべく、気を付けるよ」
ごめんなといいながらアネットは上着を着る。
ハイドリヒはそんな彼を見て溜め息混じりに、
"口先だけはやめてくださいね"といったのだった。
―― 見慣れたもの ――
(その肌に刻まれた傷も血に染まった制服も
見慣れたと言えば見慣れてしまったけれど……)
(貴方は大切な相手だから。
心配になるのは、事実なのですよ…)