ぺルとシャムのお話です。
この二人でのやり取りも好きなので、他に書くネタがないかなぁと思いつつ…←
ぺルとシャムは仲良しです。
まぁ、シャムはぺルの表情読み解ける唯一の存在なのでね(笑)
二人でこういうやり取りしてるのいいなぁって…
ただ、なんだか微妙にシリアスな感じになりました←
ともあれ、追記からどうぞ!
一度死に、一度は消えた自分達。
その存在はもはや生き物とさえ言えない。
作り物ですらないのかもしれない。
だって、俺たちはどういう存在なのかわからないんだから。
***
吹き抜ける風。
それに吹かれながら、短い黒髪の少年は自分の武器を磨いていた。
肩に担ぐような、大きな剣。
それを磨きながら、小さく息を吐き出す。
暗い森の奥。
そこに差し込んでくる微かな木漏れ日。
それを反射して、銀色に光る。
「もう、これを使うこともほとんどないんだろうな」
そう呟いた彼……シャムの肩を、誰かがつついた。
控えめなつつき方。
それが誰のものかは、シャムもわかっている。
振り向いて見れば、そこには長い黒髪の少年がいた。
吹いている風が長い髪を揺らしている。
それをみてシャムは小さく笑っていった。
「よぉ、ペル」
今日は此処にいるんだな、とシャムは言う。
ここ最近よく出掛けている彼……ぺル。
今日は珍しく、此処にいるらしい。
「シャムが外にいるから、来た」
一人で、退屈。
ぺルはそういうとシャムの隣に座った。
彼の武器は小さなナイフだし、彼はマメに手入れをしているから、
今此処で手入れをする必要はないらしく、ただ座っているだけだが。
「退屈って……俺もこれ終わるまで構ってやれないぞ?」
「構わない」
此処にいるとぺルは言う。
そのままぼうっと座っている彼を一瞥した後、シャムは作業に戻った。
その合間にも、シャムはちらちらとぺルの方を気にしていた。
彼は相変わらずただ静かに座っている。
まばたきさえもほとんどしないために、人形のようにさえ見えた。
長い髪。
大きな瞳。
華奢な体躯。
その所為か女の子のようにも見える。
そんなシャムの視線に気がついたらしく、ぺルは彼の方を見た。
そして小さく首をかしげる彼。
シャムは苦笑すると、彼にいった。
「や、ぺルとこうして二人でゆっくりすんの、久しぶりだなと思ってさ」
シャムがそういうとぺルは何度か瞬きをした。
そして、そうだね、と小さくうなずく。
「僕、さいきん出掛けてる……シャムとゆっくり、しないね」
「そうだな……なぁ、ぺル」
シャムはぺルの名を呼ぶ。
ぺルは小さく首をかしげた。
そんな彼を見つつ、シャムは言う。
「ぺルさ……ちょっと、寂しがりになった?」
シャムの言葉にぺルは少し驚いたような雰囲気だった。
相変わらずに表情は変わらないため、なんとも言えないけれど……――
シャムも、ぺルの表情が変わったのは一度しか見たことがない。
その一度は、彼らの二度目の死の時だ。
もうさよならだ。
そういったとき、彼は笑った。
あのときの笑みは、今も忘れられない。
あの笑顔以外の表情をシャムは知らない。
怒った顔も、泣いた顔も見たことはない。
でも、さいきん彼は表情豊かになった。
微笑んでいるように見えることもあるし、
寂しそうな顔をしているように見えることもある。
でもいまだに……彼が泣いているのは、見たことがない。
泣くような辛い目には、たくさんあっているはずなのに。
彼は、泣くのだろうか。
それとも、泣けないのだろうか。
彼が泣くとしたら……それは、いつだろう?
自分が、消えたら。
彼は、泣いてくれるだろうか……?
シャムはそんなことを考えていた。
それと同時。
「シャム?」
ぺルの声ではっとした。
シャムは彼の方を見る。
「……僕、寂しがり、かな」
よくわからない、とぺルは言う。
シャムはそんな彼の言葉に驚いたように瞬きをした。
彼が自分の先刻の問いかけに答えてくれたことに気がつくまでに少し時間を要した。
そしてそれを理解すると笑いながら言う。
「はは、そっか……俺は、お前が昔より寂しがりになったように思うよ」
「……そう?」
そうかも、と言いつつぺルは足をぶらぶらさせる。
その表情はいつも通りの無表情だ。
「……なぁ、ぺル」
「?何?」
シャムは彼に呼び掛けたけれどすぐに首を振った。
何でもないよ、といった後視線を逸らして、剣を磨く作業に戻ったのだった。
―― If I… ――
(もしも俺が死んだら?
お前は、泣いてくれるだろうか…)
(でもその問いかけはするだけ無駄だって知ってるから。
だから、俺はその問いかけを胸にしまって、これからも生きていく)
2014-8-21 23:01