フォルとノアールのお話です。
この二人の距離感って微妙な感じだなぁ、と思って…
変に色っぽくなるのはフォルのせいです←おい
単純に指を加えさせたいなって思ったのです(笑)
本当はもっとBLちっくにしてやろうと思ったのですが、
二人ともコラボで恋人さんがいるのでね、自重しました ←
やっぱり恋人さんと一緒が一番です←←
ともあれ、追記からお話です♪
美しい満月が輝く夜。
人気のない森の奥……
そこに佇む、大きな廃墟。
その一室にいるのは、亜麻色の髪の青年と、黒髪の青年。
黒髪の彼……ノアールは一人窓辺に腰かけて本を読み、
亜麻色の髪の彼……フォルはテーブルでチョコレートのかかったパフェを食べている。
甘いものが好きなフォル。
この前街中でいった喫茶店のそれが気に入ったらしく、
似たようなものを作ってくれないかとノアールに頼んだのだった。
ノアールも決して料理が得意な方ではないのだが、
主人であるフォルがほしいと言うものだから、
見よう見まねでつくって、彼に渡した次第である。
まあ、あるものをうまく飾り付けただけのようなものだ。
味は悪くなるはずはなく、フォルは幸せそうにそれを口に運んでいた。
甘いものを夜に食べると太るなんて世の女性たちは気にしているようだけれど、
目の前にいる青年はそんなこと一切気にした様子なしだ。
確かにものをたくさん食べる方出はないのだけれど、
食べる時間は不規則だし、食生活も整っているかと言われたら答えはNO。
極端に苦手な食べ物はないようだが、甘いものばかり食べているイメージがある。
甘いものが好きで、辛いものが苦手な嗜好は、天使の特徴なのかもしれない。
正式に言えばフォルは堕天使なのだけれど、
彼の妹であるフィアも同じだから、恐らくそうなのだろう。
ノアールは彼を見ながらそんなことを考えていた。
と、その視線に気がついたようにフォルが顔をあげた。
ノアールの漆黒の瞳を見つめつつ、彼はにっこりと微笑む。
そして、指先で軽くグラスの縁をなぞった。
そのまま、クリームやチョコレートのついた指先を差し出す。
「あげる」
聞こえた声にノアールはきょとんとした。
その言葉の意味を理解するまで暫し固まっていた彼だったが、
それが"指を舐めろ"と言うのを意味しているのだと言うことに気がつくと、
ノアールは慌てたように首を振った。
「し、しかし……」
「嫌なの?」
そう言いながらフォルは小さく首をかしげる。
悪戯っぽく笑うサファイアの瞳。
彼がからかっていることは、よくわかった。
からかわれていることがわかるのと、それを拒絶するのとは別の話だ。
ノアールにとってフォルの言葉は絶対だ。
逆らうことは、できない。
……それが躊躇われるような要請だとしても。
ノアールは彼の言葉に視線をあちこちに彷徨わせた。
その後目を伏せて、小さく息を吐き出す。
「……いえ」
わかりました、と言うとノアールはフォルの傍に歩み寄った。
そして椅子に腰かけている彼に向かって身を屈めると、
おずおずといった調子で、フォルの指先をくわえた。
チョコレートのついた指先に軽く舌を這わせる。
甘い味が口に広がった。
フォルが軽く指を曲げてノアールは驚いたように目を見開く。
彼はそんな彼の反応にサファイアの瞳を細めると、自分の指を引き抜く。
ノアールは小さく息を吐く。
「っ、主……っ」
「ふふ、かーわいい」
予想通りの反応だね、といいながらフォルは笑う。
どうやらこうやってからかってやりたかったらしい。
フォルはにこにこと笑った後、すぅっと青い瞳を細めた。
そしてノアールの手に自分の手を絡めた。
びくっと体をこわばらせる彼の耳元に口を寄せて、言う。
「というか、ちょっと色っぽかったよ、ノアール」
「っ、主、やめ……」
耳元で囁かれるのは、擽ったい。
フォルの声質の所為なのか、変な気分になるし、やめてほしい。
彼とはそういう関係でもないのだから、と思うけれど……
フォルはくすくすと笑いながら、ノアールにいった。
「ねぇ、ノア知ってる?チョコレートって媚薬効果あるらしいよ?」
「……どちらかと言えば、主の声の方が、それっぽいですけどね」
ノアールがそう返すと、フォルは楽しそうに笑った。
それもそうかもね、なんて否定することもなしに言う。
―― 嗚呼。
この人はこういう人だものな、とノアールは思う。
子供っぽい癖に変に大人びた色気があって。
色っぽいわりにそれを上手く誤魔化す子供っぽさがあって。
全く、この人は。
そう思うけれど、そんな彼に一生の忠誠を誓ったのだからどうしようもない。
「ノアール、もう一口いる?」
「いえ、私は甘いものは好みませんので」
そういって、ノアールは断る。
フォルは"やっぱり?"といいながらくすくすと笑った。
そのまま再びパフェを口にいれる。
彼の様子を見て黒い瞳を細めてから、ノアールも再び本に視線を向けたのだった。
―― 距離感 ――
(主従と言う関係は複雑なもの
友人同士と言うにもただの部下と主人と言うにも違う気がして)
(そんな僕と君の距離感
割りと僕はこの関係が嫌いじゃないよ)