本日8月8日はナハトさん宅の双子さん、アントレ君とソルティちゃんの誕生日です。
ナハトさんとのおうちオフ会のれぽの合間に書きました(笑)
お誕生日おめでとうございます二人とも♪
*attention*
双子ちゃん&お医者様コンビのお話です
ほのぼのなお話です
双子ちゃんのお誕生日ネタ
思わぬサプライズバースデー
小さい子が花冠被ってるのってかわいいと思うのです←
アントレ君とソルティちゃんのリアクションの違いを書きたかった…
お二人とも可愛いです(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした……!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
八月の、よく晴れた日のこと。
金髪碧眼の双子は、いつものように二人で中庭に出てきていた。
今日は兄であるアントレの講義もなし。
彼が講義の間はさんざん退屈をしているソルティは上機嫌で、
兄とお喋りをしたり、傍に咲いている花を摘んだりしていた。
「みてアントレ!花冠!」
ソルティは無邪気に笑って、この前アルから作り方を聞いたのだという花冠を掲げる。
アントレはそれをみて微笑みながら"綺麗だね"といった。
それと同時彼女はアントレの頭にそれを乗っける。
「わ?!」
何?とアントレは驚きの声をあげる。
そんな彼をみて、ソルティはくすくすっと笑った。
「似合うよアントレー」
そういいながら笑うソルティ。
アントレはそれをみて青い瞳を瞬かせると、
頬を赤く染めつつ、むくれたような顔をした。
「ソルティ、これは自分が被ればいいじゃないか」
「いいのー、アントレも似合うから」
もうひとつ作るから、といいながらソルティはアントレに被せた花冠をそのままに、
せっせともうひとつ花冠を作り始める。
外を駆け回る方が好きそうな彼女にしてはこういったものを作るのが珍しいが……
「一応僕は男なんだけどな」
これが似合うと言われても、と言いつつ、アントレは自分の頭の上の花冠をいじる。
そして小さく溜め息を吐き出した。
妹思いな彼。
花冠をむしりとるようなことはしない。
そのままにしておいて害があるわけではない。
……少し、恥ずかしいけれど。
そうしてソルティがもうひとつの花冠を作り終えた頃……
「アントレ、ソルティ様」
聞こえた、二人を呼ぶ声。
それを聞いて二人は驚いたように顔を上げた。
不意に声をかけてきたのは、雪狼の騎士であるフィアだった。
ソルティは彼の姿にぱっと顔を輝かせる。
「フィアさん!」
ソルティはフィアのことを兄……否、姉のように慕っている。
それはひとえに、フィアがソルティたちと同じ、天使の魔力を有する者であり、
面倒見が良いからだろう。
そうでなくとも女性の扱いがとても丁寧で、子供好きらしい彼は、
ソルティにたいしてもとても親切で、歌を教えたり、
アントレが講義で不在の時に彼女の相手をしたりしている。
アントレにたいしても、男性として振る舞うためか口ぶりはそっけないが、
根っこや行動は優しくて親切だ。
フィアはゆっくりと、でも少し駆け足で二人の方へ来た。
アントレはそんな彼を見ながら、小さく首をかしげた。
そして、問いかける。
「フィアさん、どうしたんですか?」
彼は確かにソルティと親しいが、こういう時間帯に声をかけてくることは珍しい。
彼だって任務や訓練があるわけだから、この時間に此処にわざわざ来るのは珍しい。
フィアは彼らを見つめて、ふっと微笑む。
そして、柔らかな声でいった。
「メンゲレとジェイド様が、探していましたよ。
何処にもいない、と」
そんな彼の言葉に、アントレとソルティは顔を見合わせる。
そして、まばたきをしつつ、ソルティはいった。
「今日、なにかあったっけ?」
父上様やジェイドさんから呼ばれるようなこと、とソルティは言う。
アントレは首をかしげた。
「あったっけ……今日、七日だよね?」
アントレは小さく呟く。
今朝部屋の日めくりカレンダーをめくったときに見た数字。
それは、七だった。
ソルティもそう記憶しているようで、こくこくと頷いた。
今日は別に、なんの用事もないはずだ。
講義もないし、呼ばれるようなことをした記憶もない。
フィアはそうして首をかしげる二人をみて、青い瞳を細める。
そして、二人の背中をポンと押した。
「とりあえず、お部屋にいってみたらどうですか?
何か、大事な用事だったら困るでしょう?」
結構一生懸命探していましたよ、とフィアは言う。
そんな彼の言葉に、アントレとソルティは少し焦ったような顔をする。
自分達が忘れているだけで、何か大事な用事があったのだろうか。
だとしたら、早くいかなくてはならない……――
「ありがとう、フィアさん、いってくる!」
「ありがとうございます、フィアさん!」
そう言って双子は急ぎ足で駆けていく。
そんな二人を見送りながら、フィアは青い目を細めていた。
「七日、ね……」
ふ、と意味深に笑ったフィアは、そのまま城の方へ引き返す。
その表情は穏やかで、楽しそうなものだった
***
フィアからの連絡で、急いで部屋に戻ったアントレとソルティ。
彼らは自分の父親であるメンゲレの部屋に入った。
「父上様!」
「お父様、何か僕たちに……」
用事がありましたか。
アントレがそれを問いかけると同時。
パァンっと、破裂音が響いた。
それに驚いて、アントレとソルティは固まる。
部屋に広がる、火薬の匂い。
そして何よりヒラヒラと舞い落ちる……紙テープ?
「え?」
「何これ……」
二人が驚きの声をあげると同時。
ふわり、と二人を温もりが包んだ。
それに驚いて、二人は更に大きく目を見開く。
彼らを包んだ温もり。
それは、彼らの父親であるメンゲレの抱擁。
「お誕生日おめでとう、アントレ、ソルティ」
そんな柔らかな声に、双子はシンクロして瞬きをする。
誕生日?
おかしい。
今日は、七日だ。
自分達の誕生日は明日……八日のはずで。
そうして固まる双子。
メンゲレはそんな彼らを離して、にこりと微笑む。
彼を見つめた後、双子は困惑したようにいった。
「え?父上様……?」
「今日、七日では……?」
僕たちの誕生日は明日だよ、と二人は言う。
そんな彼らの反応をみて、メンゲレはくすくすと笑った。
そして、後ろを振り向く。
「ジェイドさん、成功みたいです」
そう彼が声をかけたのは、後ろにたっていた緑髪の男性……ジェイド。
彼はメンゲレの言葉に楽しそうな笑みを浮かべる。
「ふふ、良かったです」
「え?成功ってなに、ジェイドさん」
好奇心旺盛な妹、ソルティが彼にそう問いかける。
ジェイドは彼らにウインクをして見せると、いった。
「貴方たちにちょっとした魔術をかけたんですよ。
ある種の錯乱魔術ですが……害はないものなのでご安心を」
「え?それ、て……」
もしかして、とアントレは呟く。
頭の回転が早い彼。
メンゲレの机の上にある日誌を見つめる。
それは、草鹿の騎士たちが交代でつけているもの。
毎日、つけているものだ。
アントレは確認するようにメンゲレを見上げる。
メンゲレはふっと笑うと、彼に向かって頷いてみせた。
それをみて、アントレは日誌のページをめくった。
ぱらぱらぱら……
最後のページの、日付をみる。
日誌はいつも夕方に担当の騎士に渡しにいくから、これは昨日の日付だ。
そこにある日付は……八月七日。
それはつまり……今日が、八月八日であることを示している。
「え、アントレ?どういうこと?」
今一つ意味を理解しきれていない様子のソルティ。
彼女はきょとんとした顔をしている。
アントレはそれを見つめるとふっと笑って、いった。
「ジェイドさんが、僕たちに魔術をかけたんだよ。
"今日が八月七日だって思い込む"魔術を。
だから僕たちは今日が七日だと思っていたけど実際は……」
「え。今日は、八日なの?」
漸く頭が追い付いたらしく、彼女は驚いたように顔をあげて、
メンゲレとジェイドの方をみる。
彼らは正解だと言うように微笑んで、頷いた。
「でも、どうして?」
アントレは彼らに訊ねた。
いったいどうしてそんなことをしたのか、と。
その問いかけにメンゲレは微笑んで、言う。
「サプライズの方が、楽しいでしょう?
でも、普通にしていたら面白くない……
ならば、本当に二人が驚く形にしてみましょう、ってジェイドさんが」
提案してくれたんです、といいながらメンゲレはジェイドの方をみる。
ジェイドは笑って、いった。
「今日が七日だと思い込んでいれば祝われるとは思っていない。
だからこそ今、驚いたでしょう?
私はもう貴方達の魔術を解きましたから……」
今日が八日だとわかりますよね、とジェイドは言う。
彼の言う通り……
さっきまで何故今日が七日であると思い込んでいたのかわからない。
「でも貴方達の姿が見当たらないので、フィアに探してもらったんです。
同じ魔力を持つあの子なら、貴方達をすぐに見つけてくれるだろう、ってね」
ジェイドはそういって言葉を締め括った。
こんなアイデア僕には浮かびませんよ、とメンゲレは笑う。
アントレとソルティは再び顔を見合わせる。
今日は、誕生日。
彼ら二人は普通の誕生の仕方をしたわけではないけれど、
やはり、誕生日は嬉しいものだ。
何より……こうして祝ってくれる人がいることが、嬉しい。
こういう驚く形で誕生日を祝ってくれた二人にたいして、
嬉しさと照れ臭さ、感謝が沸いてきた。
「ありがとう、お父様!ジェイドさん!」
「ありがとう、父上様、ジェイドさん!」
そういいながら二人はジェイドとメンゲレに飛び付く。
二人の保護者も優しく彼らを抱き止めて、再び"おめでとう"と言った。
そして、揃いの花冠をつけている彼らをみて、いった。
「さ、食堂にいきましょう。
草鹿の皆が、パーティの用意をしてくれています」
「かわいい主役は二人とも綺麗に飾っていますしね」
そういいながらメンゲレは二人の頭の上の花冠を軽く撫でる。
アントレとソルティは少し照れ臭そうに笑いつつ、
メンゲレとジェイドの後ろについて歩いていったのだった。
―― 今日の主役 ――
(かけられていたのは勘違いの魔術
でもそれを解かれたときに感じた喜びは一入で)
(綺麗な花冠で飾った主役。
さぁ、彼らを拍手で迎えて、彼らの誕生を祝ってあげましょう?)