ロゼル兄弟でのお話です。
こういうべったりな兄弟好きなのです…♪
クオンはああ見えて結構甘えん坊なのです。
リスタはそんな彼を甘やかしたがりな性格なので、ちょうど良い兄弟だったりします…(笑)
二人の距離が近い気がすると言うんはご愛敬←こら
ともあれ、追記からお話です♪
静かな、夜の寝室……
リスタはそこで一人、ベッドに転がっていた。
もう日付は変わっている。
いつもならば仕事のためにも眠っているところなのだが……
寝付くことができずに、こうして転がっているだけになっているのだった。
寝よう寝ようと思えば思うほど、眠気は遠退く。
仕方がない。
起きて本でも読むか……
リスタがそう思って体を起こすと同時、リスタはスッと目を細めた。
「ん?」
感じたのは、ドアの外の気配。
此処は実家なのだから敵でないことは間違いない。
少し探ってすぐに理解した。
その魔力は、他でもない……大切な、弟のそれだ。
「クオか。どうした?」
ドアの外にたっているであろう彼に声をかけた。
一瞬の間を空けた後、ドアがゆっくりと開いた。
そして中に入ってきたのは、銀髪の少年、クオン。
いつもならば結んでいる髪も、今は下ろしている。
「兄さん……一緒に、寝てもいい……?」
そう訊ねるクオンはぎゅっと拳を握っていた。
もうすでに二十歳を越えている彼。
それがこうして一緒に寝たいというのは、勇気がいるだろう。
しかし……
そんな風に彼が声をかけてきた理由は、リスタもよく知っている。
それにこれは、別段珍しい事態でもなかった。
リスタは体を起こして、ベッドの隅にいく。
そして弟ににっこりと笑いかけて、いった。
「いいよ。おいで」
そういうと、クオンはおずおずとリスタの方へ歩み寄ってきた。
今一つ決心がつかない様子の彼を、リスタは抱き寄せる。
シングルベッドに男二人で寝るというのは、少し狭い。
クオンもリスタもあまり体格が良い方でないために、
どうにか一緒にいられるけれど……――
リスタの胸に顔を埋めつつ、クオンは小さく息を吐き出した。
そして、呟くような声で言う。
「……ごめんね」
小さな声。
詫びる声。
それを聞いて、リスタは銀灰色の瞳を細める。
そして優しく弟の背中を擦ってやりながら、いった。
「大丈夫だよ。俺としては嬉しいくらいだ」
こうやって、一緒に寝たいといってくれたこと。
こうして、自分の近くにいてくれること。
どうしても辛いと思ったときにこうして自分のところに来てくれたこと……
それは、嬉しいのだと。
リスタはそっと、彼の体を抱き締める。
華奢な、弟の体。
寝ている時に抱き締めたことはあまりなかったけれど……
普段昼間にはよくこうして彼を抱き締めてやっている。
と、リスタはなにかに気がついたような顔をした。
そして、少し眉を下げつつ言う。
「でもクオ……ちょっと痩せたな」
そんな彼の言葉にクオンはきょとんとした顔をする。
わざわざ自分の体重を測ったりしないから、わからない。
「え、そう?」
そんなことないと思うんだけどなぁ、とクオンは呟く。
リスタはそんな彼を見てふっと息をはくと、軽くクオンの脇腹を擽った。
「っ、兄さん、なに、やめ……っ」
くすぐったい、とつまった息を洩らす彼。
それを見てひとしきり笑うと、リスタは真剣な顔をした。
「やつれた、とも言う。……無理すんなよ?」
お前すぐに無理するから、とリスタは言う。
兄の言葉にクオンも真面目な顔をする。
そしてこくりと頷きながら、いった。
「うん……」
わかってるよ、とクオンは言う。
リスタはそれを聞いてふぅと溜め息を吐いた。
そして優しく彼の頭を撫でてやりながら、いった。
「仕事、大変か?」
「大変、だけど……やり甲斐はあるよ。だから、頑張れる」
そう言って、クオンは微笑む。
リスタはそれを見て微笑むと、優しく彼にいった。
「そっか。お前は強くて優しいもんな」
その言葉にクオンは大きく目を見開いた。
そして、顔を歪める。
「……っ、兄さん」
クオンは掠れた声で兄を呼ぶと、ぎゅっと彼の体に縋った。
小さく啜り泣く声が聞こえた。
リスタはそれを聞いてふっと笑う。
そして優しく彼の頭を撫でてやりながら、いった。
「どうしたクオ?相変わらず泣き虫だな」
泣き虫な、弟。
昔からそうだ。
父親や母親、祖父母の前では決して泣かなかったけれど、
リスタの前での彼は、泣き虫だった。
ぼろぼろとこぼれる涙は止まらない。
クオンはリスタに詫びた。
「ごめん……」
「いいよ、甘えて……
お前はちょっと泣くくらいがちょうどいい」
たまにガス抜きしてやらないとな、とリスタは呟く。
クオンは彼の言葉にさらに激しく泣き出した。
リスタは優しく優しく、彼の頭を撫でる。
そして"大丈夫だよクオ"といった。
自分の大切な弟。
周囲に不要と言われるのが怖くて、自分を犠牲にしても能力を使い続ける彼。
それを慰めて、涙を拭ってやるのも兄の仕事だと思う。
「ほら、ちゃんと寝ないと明日が大変だぞ、クオ」
そういいながら、リスタはクオンの頬に、額に、キスを落とす。
涙で濡れている、彼の頬。
目の端からこぼれ落ちるその涙の所為で、彼の頬は塩辛い。
「大丈夫だよ、クオ……俺はいつでも、クオの味方だからな」
リスタはそういいながら優しくリスタの体を抱き締める。
華奢なその背を擦りながら、リスタは愛しい弟の名前を呼び続けた。
大丈夫。
大丈夫。
俺は、いつでもお前の味方だから。
その涙をみせてくれていいから。
苦しみも、ちゃんと話してくれたらいいから。
だから。
だから……
―― 一人で壊れるのは、やめて。
リスタはそう呟くと、そっと弟を抱いたまま、
昔聞いた子守唄を小さな声で口遊んだのだった。
―― Lullaby ――
(眠れ、眠れ、愛しい弟よ
君の心が少しでも、安らぎますように)
(愛している。どんなに距離が開こうとも
どんなに遠くにいても、お前を愛し続けているよ)