ザイス=インクヴァルトさんとリトのお話です。
リトのトラウマネタをやりたくて…←おい
ちょっとずつでも二人の関係が近づいたらいいな、って…!
*attention*
ザイス=インクヴァルトさんとリトのお話です
シリアスちっくなお話です
リトのトラウマ状況をやってみたくて…
少しずつでも二人を親しくしてみたくて…
何とか名前を呼んでいただきたかったのでした←おい
お手数おかけしますザイス=インクヴァルトさん…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
大きな雷鳴が轟く。
急に降り出したその大雨を避けて小さな小屋に逃げ込んだ影が二つ。
一つは小さく、ひとつは大きい。
大きく息を吐き出した黄緑髪の青年……
ザイス=インクヴァルトは小さな窓から外を見た。
「凄い雨ですね……」
「夕立かなぁ……いきなり降ってきたからびっくりした……」
そう声を上げる小さな少年、リト。
彼は一度ザイス=インクヴァルトが閉めたドアを少し開けた。
ざぁざぁと降っている強い雨。
それが窓の隙間から見える。
どういうわけかそうしてドアを開けたリトを見て、
ザイス=インクヴァルトは怪訝そうな顔をしている。
雨が吹き込むから、閉めれば良いのに。
部屋が薄暗いのは致し方ない。
使っていないこの部屋……
明りが通っていないのだから暗いのはどうしようもない。
窓やドアを開けたところで部屋の中の暗さはどうにもならないというのに……
ザイス=インクヴァルトが再びそのドアを閉めようと歩き出した、その時。
ぐらりと、地面が揺れた。
大きな揺れ。
立っていた二人は、床に倒れこむ。
「わっ?!」
「地震、ですかね……」
ぐらぐらと揺れる地面。
此処まで大きなものは珍しい。
近くに大型の魔獣でも生息しているのだろうか。
ザイス=インクヴァルトは床に倒れこんだままにそう考える。
暫くして、地震はおさまった。
ふぅ、と息を吐き出して二人は体を起こす。
「大丈夫か、アルトゥール?」
リトは身体を起こしつつ、ザイス=インクヴァルトに訊ねた。
そして周囲を神経質そうに見渡して、ある一点に目を止めると、大きく目を見開いた。
「あ、ぅ……ドア、が……」
リトが開いたために開いていたドアが、閉じている。
先程の振動で閉まったのだろう。
「閉まってしまいましたね」
ザイス=インクヴァルトは冷静にそう呟く。
リトはふらりと立ち上がった。
そして、小さな声で呟く。
「あ、開けて……」
その声の弱弱しさに、ザイス=インクヴァルトは少しだけ驚いた顔をする。
いつもの明るく元気な彼のこんな姿は見たことが無い。
「え?」
「開けて、ドア、開けて……」
戸惑いの声を上げるザイス=インクヴァルトにリトは言う。
揺れる、揺れる、金色の瞳。
少し怯えたような声色。
ドアを開けてというのなら、自分で行けば良い。
そう思うのだが……
リトの足は震えていて、立ち上がることさえままなっていない。
「?え、えぇ……」
仕方ないですね、といいつつ、ザイス=インクヴァルトはドアの方へ歩み寄った。
そして、ドアノブを回してドアを開けようとしたが……開かない。
「ん、開きませんね。
先程の地震で歪んでしまったようです」
どうやら先刻の揺れでドアが歪んでしまったらしい。
ドアが、開かない。
それを見てリトは更に大きく目を見開いた。
そしてふらりと立ち上がると、ドアの方へ歩み寄る。
「っ、退いてて、アルトゥール……っ!」
ザイス=インクヴァルトにそういうと、リトは指先をドアに向ける。
そして、そのまま魔術を使ってドアを破壊しようとした。
しかし、彼の指先から魔術が発されることはない。
そんな状況にリトは動揺した表情を浮かべる。
「な、なんで?魔術……」
そう呟く、リト。
ザイス=インクヴァルトはそんな彼を見つめて、目を細める。
魔力が安定していない。
そのせいでまともに魔術が使えないようだ。
それは、ザイス=インクヴァルトが見ても良く分かるのだけれど……
一体何故彼が唐突にこんな行動に出たのか、
何故こうもドアを開けたがるのかが理解出来ない。
と、その時。
リトがぺたりとその場に座り込んだ。
それにザイス=インクヴァルトが驚いている間に、リトが震える声をあげた。
「や、やだ……」
「?どうしたんですか?」
異様なリトの様子にザイス=インクヴァルトは彼の方へ歩み寄る。
そして屈むと同時、リトに縋りつかれた。
その勢いに驚くザイス=インクヴァルト。
リトはそんな彼の様子にも気が付くことなく、彼に縋って震える声をあげた。
「やだ、怖い……狭いとこ、怖い……っ」
その言葉にザイス=インクヴァルトは金の瞳を見開く。
リトの体は小さく震えていた。
「怖いよ……ぉ、アルトゥール……」
泣き声でそう訴えるリト。
明るくて元気の良いリトがそうして泣いている姿は幾度か見たけれど、
こんな泣き方をする彼は初めて見た気がする。
ザイス=インクヴァルトは戸惑いつつ、自分に縋りつく彼の背に腕を回した。
そしてゆっくりとその背を擦ってやった。
別に、彼のことが嫌いなわけではない。
それに泣いているのを放っておくわけにはいかない。
泣いている彼を慰めて、ザイス=インクヴァルトは声をかける。
「……大丈夫です、よ……
一人でいるわけでは、ないのですから」
一人でいるわけではない。
だから、怯える必要はない。
ザイス=インクヴァルトがそういうと、
「アルトゥール……」
「大丈夫ですよ、……リトさん」
「!アルトゥール……っ」
リトは小さくザイス=インクヴァルトの名を呼ぶと、更に強く抱き付いてきた。
そして声を上げて泣き出す。
慰めるつもりだったのに何故逆に激しく泣き出すのか。
そう思いながら、ザイス=インクヴァルトが困った顔をしていると……
「名前、呼んで、くれた……」
リトが、涙声でそういった。
それを聞いて、ザイス=インクヴァルトは驚いたような顔をする。
そして、すっと目を細めつつ、小さく呟くようにいう。
「それだけ、なのに……」
ただ、名前を呼んだだけ。
それだけなのに、彼は……――
ぎゅ、とザイス=インクヴァルトに縋るリト。
彼は泣きながら、繰り返し繰り返しいう。
「傍に居て……怖い、怖いよ、アルトゥール……」
どうしてこうも怯えているのか。
どうしてこの空間がそんなにも嫌なのか。
それは何一つわからないけれど……
彼がこうして怯えているのならば、ひとまず傍に居てやるくらいのことは出来る。
彼が落ち着けばドアを壊して外に出るくらいは出来るし、
どうせ今外に出てもずぶ濡れになるだけだ。
そう思いながら、ザイス=インクヴァルトはリトを優しく宥めてやったのだった。
―― Never seen ――
(見たことが無いような怯え方をする彼。
それを放置することは、出来なくて……――)
(記憶に残る闇。
嗚呼、嫌だ、怖い、でも…傍に居てくれるお前が居てくれるのは嬉しくて…)
2014-7-31 20:28