久々のお医者様コンビのSSです。
リレー本編でも登場されたスコルツェニーさんとメンゲレさんとが同じ武装親衛隊の出身だと言うことを聞いて…
こういう話もよいかな、と思って…←おい
*attention*
お医者様コンビのSSです
ほのぼの時々少しシリアスもありなお話
今でこそ草鹿所属のメンゲレさんですが元々は…
ジェイドはたぶんそれを聞いたら驚くだろうな、と←おい
時々こういう大胆なこともしてみるジェイドさんでした
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
―― 冬の日の、ある穏やかな午後……
ディアロ城の図書館の大きな扉が開く。
中から出てきたのは緑髪の男性と黒髪の少年。
どちらも分厚い本をたくさん抱えている。
黒髪の彼はドアを開けてくれた緑髪の男性に礼をいって、歩きだした。
そのまま二人は自分達の部屋がある方……
医療棟に向かって歩いていく。
大量の本を積み重ねて持っている黒髪の少年の方を見て、
緑髪の魔術医……ジェイドはすまなそうに詫びた。
「すみませんね、メンゲレ。手伝わせてしまって」
今彼らが抱えている本はジェイドの研究資料のための本だ。
細かい医学や薬学について書いてある本であるため、分厚くてかなり量もある。
一人でこれを持ち出そうと思っていたジェイドなのだが、
図書館に向かう途中で出会った彼の部下が手伝うと申し出てくれて、
こうして一緒に来たのだった。
「いえ、僕がお手伝いさせてくださいと頼んだのですから……大丈夫ですよ」
そういって黒髪の少年……メンゲレはおっとりと微笑む。
彼もジェイドと同等の本を抱えてはいるが、無理をしたようすはない。
純粋にジェイドを手伝いたいと思ったが故にこうしてついてきているのがよくわかる。
穏やかで優しいその表情にジェイドもふわりと微笑んだ。
と、中庭に面した廊下に差し掛かったところで、
メンゲレはそれとはなしに視線をそちらへ向けた。
午後の中庭ではたくさんの騎士たちが剣術や魔術の練習をしている。
そのなかには見慣れた騎士たちの姿もあった。
ジェイドもメンゲレにつられたようにそちらを見る。
そして翡翠の瞳を細めた。
「おや、ヒトラーも外にいるのは珍しいですねぇ……」
そう、ジェイドの視線の先には彼と同じような立場……
夜鷲の統率官を務める騎士、ヒトラーの姿があった。
ジェイドはそんな彼の方を見つめ……
そしてその前に立っている人物を見て、ジェイドは怪訝そうな顔をした。
普段ヒトラーと一緒にいる彼の親友であるクビツェクでもなく、
彼の部下のなかでも見たことがない人物だった。
ヒトラーと同じ黒髪。
そして遠目にいてもわかる、頬に残った傷跡……
ここ最近ディアロ城に訪ねてくるようになった人物ではあるが、
昔から此処に来ている騎士ではない。
「彼も来ていたのですね」
その見慣れぬ人物をジェイドがじっと見ていると、メンゲレがそう声を漏らした。
彼が示しているのが自分が今見つめていた人物だと理解すると、
ジェイドは小さく首をかしげる。
「彼……?」
「えぇ。総統と今お話をしている彼……
武装親衛隊中佐、オットー・スコルツェニーという人物ですよ」
メンゲレは微笑んでそういった。
あっさりとそう紹介したということは恐らく顔見知りなのだろうと理解できる。
「あぁ、最近時折姿を見ますね。
直接話をしたことはありませんが……知り合いですか?」
ジェイドの問いかけにメンゲレは幾度かまばたきをした。
そして深緑の瞳を細めつつ、言った。
「元々は僕も同じ組織に属していた人間ですからね」
その言葉に珍しくジェイドが驚いた表情をした。
幾度も瞬く、翡翠の瞳。
メンゲレはそんな彼を見て不思議そうに首をかしげる。
何かおかしなことが?と彼が訊ねると、ジェイドは小さく呟くようにいった。
「え?それでは、メンゲレも武装親衛隊の所属……?」
「えぇ。そうですよ。
……あれ、僕お話していませんでしたか?
彼とは所属こそ違いましたけれど同僚と言うか、何と言うか……」
僕もそこの騎士でしたよ、とメンゲレは言う。
ジェイドは相変わらず驚いたように翡翠の瞳を瞬いていた。
頬に傷のあるあの青年……
スコルツェニーには何となく似合う気がする"武装親衛隊"の言葉。
しかし、今自分の隣にいる黒髪の少年には、
そんな物騒にさえ聞こえそうな言葉は不似合いな気がした。
相変わらず驚いた顔をしているジェイドを見て、メンゲレは笑う。
「ふふ、そんなにおかしかったですか?」
「いえ、おかしいと言うよりは……少し、意外で。 それに……」
ジェイドは一旦そこで言葉を切った。
そしてメンゲレの方を見つめつつ、いった。
「メンゲレが此処の所属でなかったことを、既に忘れかけているのですよ」
ジェイドはそういいながら自分の傍にいる黒髪の天使を優しく撫でた。
メンゲレはその手を受けながら微笑み、呟くようにいう。
「それは、僕にとっては嬉しいことかもしれません」
その声は少し、物憂げなものであった。
かつての自分を、存在意義を守るために必死に保ってきた偽りの姿とはいえ、
死の天使として戦っていたあの頃を……
愛しいと思う彼に忘れてもらえるならば、それは嬉しいことで。
彼の記憶のなかに残ってほしいのは、今の自分の姿だけだ。
アントレやソルティと戯れ、アルたちに講義をして、
ジェイドの傍に寄り添っている、穏やかな天使としての姿……――
目を伏せているメンゲレを見てジェイドは小さく溜め息を吐いた。
彼がこういう顔をしている時何を考えているか、流石にわかるようになっている。
「メンゲレ、此方を向いてください」
「え……」
呼び掛けに顔をあげるメンゲレ。
ジェイドは片腕に本を抱え直すと、その頬をもう一方の手で包む。
そして、驚いた顔をしている彼にいった。
「貴方にそんな顔は似合いませんよ。笑っていてください」
「な、何……」
いきなり何をいうのか、という顔をするメンゲレにジェイドはそっとキスをする。
その事にメンゲレはさらに驚いた顔をする。
「じ、ジェイドさん……っ」
人目につく場所で彼がこういう行動に出ることは、正直稀だ。
幼い騎士が多い草鹿の統率官であるジェイドとその部下であるメンゲレとが
"こういった関係"であることを知らしめたくはないのだろう。
そんな彼が、ほんの一瞬とはいえキスをしてみせた。
「笑っている貴方が好きですよ、僕は」
泣き顔や悲しそうな顔は好きではない。
その姿を実際見ているときに少し嫉妬はするけれど、
アントレやソルティたちと一緒にいる時のような幸福そうな笑顔や、
アルたち……教え子たちに魔術や医学を教えているときの笑顔が一番好きだ。
ジェイドがそういえば、メンゲレは僅かに頬を赤くして、照れ臭そうに笑う。
「ありがとう、ございます」
「ふふ、いえ。事実をのべただけですよ。
さぁ、部屋に本をおきにいきましょう。
それが終わったら僕たちも中庭に出てゆっくりしましょうか」
そんなジェイドの言葉に穏やかに微笑んで、メンゲレは頷いた。
ジェイドはそっとそんな彼の頭を撫でながら、もう一度中庭に視線を向ける。
彼と元々同僚だったと言うあの青年ともまたいつか話してみたいな、と思いながら、
メンゲレと一緒にゆっくりと歩き出した。
―― Belong to… ――
(元々所属していた組織の名に少し驚いて
改めて貴方が僕の傍にいてくれることを嬉しいと感じるのです)
(久しぶりに見た同僚の姿
彼と同じ組織出身だと話したときの驚いた彼の表情は何だか新鮮で)