涙の傷口

昔の事、大人が、誰かが俺に言った

「人の前で泣く事は恥じるべき事なんだよ」

小さく無知な自分はそれを信じて過ごし

いつも泣く時は誰にも“泣いた事”は悟られないように

ひっそり声も嗚咽も漏らさず静かに泣いた

誰かにに言われたその一言を

呪文のように繰り返し言うとおりにした

今でもその癖が今でもとれなくて、

大声を上げて泣きたいのに声は出ず

静かに泣く事しか出来なくなっていた

声を上げて泣けば、誰か、気づいてくれるのに

救いの手をさし伸ばしてくれるかもしれないのに

そんな事も出来ないなんてな

泣いてる時の、声の出し方さえも忘れてしまった

とでも言うのか

声なんて叫んで枯れてしまえ