私はバンドに憧れたことも、何かについて誰かと熱く語ることも、たかだか二つや三つ歳の離れた男の子に恋をすることもなかった。友達と長々とメールをすることも、休みの日に私服で遊んだりすることも、長電話をすることも、なかった。
 そしてとりわけ特筆すべきは私はそれら諸々のことを心から軽蔑していたのである。私は総じて他人が嫌いだった。誰かと何かを分かち合うという行為が反吐の出そうなぐらいに嫌だった。好きな音楽も好きな本も好きなアーティストも好きな言葉も好きな人、も、私は誰にも打ち明けたりしなかった。全部全部、私だけの秘密だったのだ。

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