24/03/30 12:49 (:FF)
(03/30)_エス光♂

※ヒカセンが男の娘のうさお
※ピロートーク






好きな相手と、初めて身体を重ねた。
2人とも経験がないわけではなかったから、それ自体はすんなりと済み、残ったのは充足感と疲労感。余韻に浸りながら戯れに脚を絡めたり、軽いキスを何度も交わしたりして。彼の手が、らしくない優しさで頭を撫でるのがあまりにも心地良い。ああ、このまま寄り添って眠りたい……そう思って目を閉じかけて、はたと思い当たる。
そっと彼の手を諌めて身体を起こすと、寝転んだまま不思議そうにこちらを見上げてくる。
「どうした、リヒト。」
「ん、寝落ちる前に化粧落とさなきゃ。」
ベッドから這い出してその辺にあったバスローブを羽織り、化粧道具を入れたポーチを手に洗面所に向かう。その後ろ姿をエスティニアンはぽかんと見つめていた。
「そうか……、お前化粧もしてたのか。」
化粧も、というのはリヒトの装いが女物の服だけでなくそこまで、という意味での言葉だろう。
「なにー、気付かなかった?」
「いや、気にしていなかった。」
素直にそう言われれば、それも彼らしくて思わず笑ってしまう。その気安さが心地よかった。
洗面台の隅にポーチを置き、中から取り出したピンで前髪をとめながら台の上に並んだ瓶を見る。さすがメーガドゥータ宮、メイク落としや洗顔から、化粧水やらなんやら全てが洗面台に揃っていた。どれもラザハンの錬金術師達が作った、高品質の物なのだろう。
有難いなあと呟きつつ、手早く化粧を落として肌のケアを終える。
「終わったー。ていうかこのローブでかいんだけど、エレゼン用か。」
羽織っているバスローブを引き摺りながらベッドルームへ戻ってくる。そのままもぞもぞとベッドに潜り込むリヒトに身体を寄せながら、エスティニアンは再びリヒトの髪を手櫛で梳いた。
「どうせならシャワーも浴びてくれば良かったんじゃないか?」
「疲れたからシャワーは起きてからにする……。」
そうか、と納得した彼は、リヒトの髪を指先で弄びながら黙り込む。エスティニアンの方が髪が長いというのに、わざわざ人の髪を弄って楽しいのだろうか。優しい手つきに眠気を誘われてて、彼の胸板に頬を寄せ目を閉じた時、頭上から声が降ってきた。
「なあ、相棒。今度から先に化粧は落としておけ。」
「……え?」
眠気で鈍った頭で、反応が遅れる。
「俺は化粧の有無なんて気にならんし、その方が直ぐに寝られて楽だろう。」
「…………わかった。」
そんな言い方女の子にはしたらダメだよ、とか、今度があるって期待していいんだ、とか。色々言いたいことが頭に過ぎったが、口から絞り出せたのは一言だけだった。
酔った勢い、一夜の過ち。そういった類いのものとして今夜の出来事は終わるのかとリヒトは思っていたけれど、そうでもないらしい。
そっかそっか、そうなんだ。ありのままでも、今夜みたいにまた愛してくれるのか。
募る愛しさと安堵を噛み締めて、結局好きだとは伝えられないままにリヒトの意識は夢の中へと沈んでいった。



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