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デスノ途中作品公開×2



突然デスノ熱が再熱して、一週間前から毎日少しずつ書いてたニア作品。

が、何回も書いては消し、書いては設定を変えてを繰り返してたからもうわけわからなくなりましたどうしよう。(笑)


やっぱり当初の予定通りパラレルワールドと言うかパロディにします。最初の文章や大まかな設定は同じにして、もっかい、今度はちゃんとプロット組んで書き直すよ。(´ω`;)





以下、その雛型になるある意味ボツ作品です。なまら中途半端な所で切れている上、見直しなど一切していないので誤字脱字など……とにかくそんな感じで酷いです。←







 Lと再開したのは本当に偶然だった。
 安い割に良い物件が多くあると友人伝に聞き、引っ越し先と新しい職場を探しに来た街で俺は不意の小雨に見舞われた。それはまるでこれからの生活を暗示しているかのようで、思わず吐いた溜め息は重い。
 通り雨とはいえ、スーツを濡らしたくはない。そして、皮肉な程に青い空から降る水滴を払いながら入った喫茶店に、Lはいたのだ。俺は全く変わっていないLの姿に驚き、Lは酷くやつれ細くなった俺に驚いたという。

「借金、ですか」
「うん。あ、でもそんな重い話じゃないんだ。もう半分は返したし、後ちょっとなんだ」

 それから色々話をした。Lはやはり名探偵を続けていて、今は休暇中らしい。変わっていない昔の友人に、俺はなんだか嬉しくなり破顔した。
 レトロな扇風機がお互いの髪を揺らし、俺は水滴を纏ったグラスを掴みストローに唇を寄せ中身を吸い上げる。途端に広がる苦味。――しまった、シロップを入れるのを忘れた。

「借金の額は……あ、いえ。不躾な質問でしたね。すみません」
「ああいいよ、別に。二千万。後八百万返せばいいだけだから」

 そう笑顔を返し、窓の外を眺めた。
 住宅街の中にあるここは、静かでとても気持ちが落ち着く。指先に感じるグラスの冷たさに目を細めると、意識は数日前の記憶へと飛んだ。
 勤めていた会社が倒産し、同時に付き合っていた女性にも振られた。残されたのは亡き両親が作った借金のみ。近々アパートの契約更新もあったが、無職では出来るわけもなく……正直、流石にヤバいと焦ったが、自殺や夜逃げは考えなかった。これでも、一度は人生の底を舐めてる。だから、人間死ぬ気でやればなんとかなる事も知っていた。
 アパートの契約更新まで二ヶ月。俺はそれまでに仕事を見つけようと躍起になっていたわけだが、世の中はどうしてこんなに不景気なんだ? 全く見つからなくまさにお手上げ状態だ。

「##name_1##?」
「――あっ、ごめんっ。ちょっとぼんやりしてた」

 心地の良い低い声が俺を我に返らせ、思わず肩が跳ねた。ヘラリと笑ったが、上手く笑えたかはわからない。その証拠に、Lは唇を紡ぎ、あの深い瞳で俺をジッ、と見つめてくる。
 昔からこの目は苦手だった。まるで全てを見透かされそうで、俺は思わず笑顔を消し真剣な表情でLと見つめ合う。そして――。

「――##name_1##、仕事は見つかりましたか?」
「えっ? な、なにをっ」
「それくらいわかります」
「…………」

 流石は名探偵、と言ったところだろうか。苦笑し観念したように首を振ると、残っていたアイスコーヒーを一気に煽る。カラリと鳴った氷が心なしか暑さを半減させてくれたように感じ、軽く深呼吸をした。
 気が付けば雨は止んでいた。
 名残惜しくはあるが、そろそろ行かなくてはならない。あの世界的有名で多忙な名探偵にここで再開したのも何かの縁だ。アドレスが書いてある名刺を取り出すと、それをLの方へ置き席を立つ。

「じゃあ、俺もう行くよ。久しぶりに会えて嬉しかった。もし、何かあったら連絡ちょうだい?」
「……ええ、必ず」
「うん。じゃあ、またね」

 そして、思っていたよりも早くにLからの連絡があった。それは、あの喫茶店で会ってから数日後――などではなく数分後。店から出て、百メートルも歩いてない所で知らない番号からの電話。もちろんLだった。

「あなたに頼みたい仕事があります」

 再び戻った喫茶店の中で、Lはそう言って一枚のメモ紙を渡してきた。そこに書かれていたのは、住所。どうやらこの近くにあるマンションらしい。
 名探偵からの仕事依頼に、俺は年甲斐もなく気分が高潮し、思わず目を輝かせた。

「ある人物の、身の回りの世話を頼みたいのです」
「……え?」

 ブゥン、と、車が通り過ぎた音が妙に大きく聞こえた。新しく出されたアイスコーヒーを見下ろした後、俺は再びLを上目で訝しむように見上げる。

「――世話?」
「ええ。今仕事で日本に滞在している子なんですが、少し問題があってすぐに助手が辞めてしまい困っていたんですよ」
「え、助手?」
「ああ、いえ、助手と言ってもさっき言ったようにその子の身の回りの世話をお願いしたいのです。難しい事は何もありませんよ――ああ、難しいといえばその子の性格ですかね」

 彼は良い子なんですが毒舌家で人使いが少々荒いのです。ああいや、本当に良い子なんですよ。

「…………」

 正直Lの頼りないフォローに俺は不安しか感じなかった。良い子が毒舌家で人使いが荒いなんて、なんだか多少の矛盾を感じてしまう。
 そんな俺の心境を敏感に察知したLは、再び口を開いた。

「彼が日本に滞在する間だけで構いません。勿論、その後の職も約束しましょう。##name_1##、あなたなら必ず出来ます」

 その自信はどこから来るのか――俺は腕を組み、少し唸って見せた。
 やっても良いとは思っている。だが、世話なんて一人っ子だった俺に出来るのかそれが心配なのだ。
 一人暮らしが長く家事はお手の物だが、人の世話となると――ペットを飼うのとはわけが違う。
 しばらく唸っていた俺を黙って見ていたLは、もう何個目かわからない角砂糖を入れながら、低く、そして簡潔に言った。

「住み込みはもちろん、三食食事付きで月給三十万出しましょう」
「さっさんじゅッ!?」
「やって、頂けますね?」
「……ッ」

 破格だ。今までの不安要素はその条件の中に霞み、迷う事なく頷いたのは言うまでもない。



 ***



 三日後――Lに言われた通り最低限の荷物を持った俺は某高層マンションの前に来ていた。
 ここの二二階に俺が世話をする人間がいるらしい。渡された資料によると、相手は二十歳の青年だとか。とにかく身の回りの世話をと言われてはいるが……二十歳、俺より三歳下とはいえ家事が全く出来ないとはどんなお坊ちゃんなのだろうか?

「……まあ、考えても仕方ないか」

 そう一人ごちると、まるでホテルのようなエントランスに入りルームナンバーを入力してインターホンを押した。

『――はい』

 数秒後。スピーカーから聞こえてきたのは甘く腰に響くようなセクシーな男性の声。思わず硬直してしまったが、不審がられては紹介してくれたLの顔に泥を塗ると慌てて言葉を紡ぐ。

「あっ、はっ、こっこんにちは、えっと、Lに紹介されて来ました。##name_2####name_1##と、」
『どうぞ』
「あ――」

 言い終わる前に通話は切られ、エレベーターの扉が開いた。なんだか今のはちょっと恥ずかしくなり、フロントにいる男性の視線から逃げるようにしてエレベーターに乗った。“閉”を押すと、グングンと上がっていく。

「はあっ、緊張するなあ」

 俺が行くまでは部下の人が世話をしていたと聞いた。だけど、部下の人がやっていたなら俺なんて部外者を雇わずにそのまま部下に継続させた方が、職業的には良いのではないだろうか? ――まあ、俺としてはラッキーだったんだけど。
 考え事をしている間に、エレベーターは二二階に到着した。

「っ」

 呼び鈴を鳴らすと、やたらとハンサムな外国人が迎えてくれた。――さっきの声はこの人だ。あまりの美貌に息を呑んだのは言うまでもないだろう。
 通されたのは、沢山の玩具が散乱する広い部屋。その真ん中に座り込みパズルのピースを弄っている、真っ白で小柄な男性。名前は偽名で――ニア。

「貴方が##name_1##ですか?」
「あ、はい! Lの紹介で来ました。##name_2####name_1##です」
「…………」
「あ、あの……?」



---終わり---



ううん、(´・ω・`)
なあんかしっくり来ないんだよなあ。文章も酷いし。やっぱニアだけの家政婦じゃなくて、ワイミーズ組の家政婦設定にするか? テオはLが一番好きなんですが、今回はニア落ちで。苦労人で総受けとか最高にモエる!

まあそうするかどうかはさておき、次こそは頑張って書くよ!


追記にも↑と似たような中途半端作品。こっちはもろボツです泣き虫は駄目。


それからレスは今日中にしますのでしばしのお待ちを〜。(^ω^)


 
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海賊途中作品公開



途中まで書いたローさん作品。最後は決まってるから、後はそこまで繋げて頑張って書き上げるだけです!


しかし、久々に三人称で真面目に書いた気がするよ。そしてやっぱり三人称が好きだと再確認しました。(笑)



 ***



 くすんだ灰色の空に、何を思うのか。
 トラファルガー・ローは甲板から一人、そんな空を眺めながら目を細めた。今にも雨が降りそうな空気に、船員は海中に潜る準備を忙しなく行っている。そんな喧騒さえも、今のトラファルガー・ローの耳には入ってはいなかった。
 何かが違った。
 空気が何かを告げているかのような、そんな緊張感を含んでいるのだ。
 だがトラファルガー・ローは焦る事もせずに、ただ黙って空を仰ぐ。

「……あ?」

 分厚い灰と黒の雲の間から、何かが落下してくるのが見えた。目を凝らし見ても、ただの黒い点にしか見えない。
 ここは新世界。いつ何が起きてもおかしくない、常に死と隣り合わせの世界。
 あれは真っ直ぐとこちらに向かってきている。船員はまだあの物体には気付いてはいない。トラファルガー・ローは口元に妖しく三日月を描くと、ソッ、とポケットから両手を抜いた。――刹那。

「――なッ!?」

 黒い物体の落下速度が加速し、トラファルガー・ローが能力を出すよりも早く、横を通り過ぎていったのだ。脳裏によぎったのは船の無惨な姿……木っ端微塵はないにしろ、甲板には派手な穴が開くだろう、とそんな考えに冷や汗が流れたにも関わらず、次に聞こえたのは、ボテッ、という鈍い音。軽い衝撃はあったものの、明らかに破壊音ではない。

「…………」

 振り返ると、そこにあったのは少し大きめな歪な黒い球体。思考が追いつかなく、しばらくの間口を半開きにしているとその




はい、本当に中途半端!(笑)
ちなみに主人公君は落ちこぼれで強気だが実は泣き虫の悪魔っ子。

P3プレイしててルシファー使ってたら思い付きました。(^ω^)
まあ天使は既に空島にいるから、じゃあ悪魔に、と。テオさん大好物の人外だよはぁはぁ。


書きかけで言わば裸同然だから、もちろん書き直しとかしてアップする頃には少し変わってると思います。


無事に書き上がると良いなあ。まあ短編ならではの急展開を利用しまくりますがね!(笑)


 

創作-君を守るもの-

*R15 空想世界『人外×少年』



 神々の住む神聖な山〈ルシウス・マグローテ〉のすぐ麓に栄える町〈ナギア〉はその清浄な気と温暖な気候のおかげで作物や果実がよく実り、それを売る事で生計を立てている商業の町であった。
 町外れに住む少年――ユズルもまた、その一人だ。今は亡き両親が残してくれた薬屋と豊富な知識で贅沢とは言えないが普通に生きていけるだけの収入を得ている。今日もまた、首都へ薬を売りに行ってきたばかりらしく、大きな荷物を店先のベンチに下ろし、額に浮いた汗を拭った。

「あらあらユズル、おかえりなさい、今日は随分と早かったのね?」
「あ、シーラさん」

 豊満な胸を盛大に揺らしながら大きな樽を転がしていたのは、町でミルク屋を営むシーラ。三人の息子を持つシーラは、まだ小さいユズルにとって母親代わりのような存在で、いつもこうして声をかけてくれるのだ。

「今日はいつもより人が多くて、四刻で全て売り切れちゃったんです」
「あらまあ! 良かったじゃないの! それなりに纏まったお金が入ったんじゃないのかい?」
「はい! 全部で二万ジールでした。おかげで今日は冬用のブランケットと靴が買えました」

 そう嬉しそうに鞄から出したのは、あまり上質とは言えないごわついた茶色いブランケットに、新品には見えない擦れた黒い靴。それを見たシーラは顔をしかめると、樽から離れユズルの小さな体を抱き締めた。

「わっぷ! し、シーラさっ」

 牛のような乳房に顔が埋まり、慌てて呼吸をする為上を向くと、切れ長の瞳を揺らしたシーラと目が合い、ユズルはハッ、と息を呑んだ。

「ああっ、ユズル……なんでアンタがこんなっ」

 震える声に、頬に落ちた雫。ユズルは何故シーラがこれ程辛そうにしているのかがわからなく、しかし、これは自分のせいだとわかるユズルは、何も言えずにシーラの甘く柔らかな服を握った。
 ユズルが見せたブランケットと靴は、どう見繕ってもせいぜい五〇〇ジール程度の安物だ。恐らくは、安物の粗悪品を高値で売りつけられたのだろう。
 警戒心もなく、薬作り以外には全く無知で世間知らずなユズルはよくこうして騙され金を巻き上げられているのだ。
 シーラや他の村人にも心配され、よく見極めるように、気を付けるようにと言われるが、人を疑う事を知らないユズルにはそれは無茶な話なのである。

「そうだ、今日家に晩ご飯食べに来な! 私の自慢のミルク料理作ってあげるわよ!」
「え、でも……」
「遠慮するんでないよお! 出来たら家の双子を迎えに寄越すから、楽しみにしてな!」
「……ありがとう、シーラさんっ」

 目元を赤くし、はにかむように笑うユズルはどんなに大人顔負けに薬の知識に優れていようと、まだ成人の儀式もしていない子供なのだと痛感する。
 せめてユズルに寄り添い、ユズルを守り、大切に愛する誰かがいれば。どうか、この優しいか弱い少年を守って下さいと、神々に祈るようにシーラは白い霧に包まれた山を見つめた――。


 ***


 シーラと別れ自宅に入ると、嗅ぎ慣れた薬草の香りに頬が緩んだ。

「ただいま、お父さん、お母さん」

 暖炉の上に置かれた両親の写真に笑顔で言えば、買ってきたブランケットをベッドに、靴をベッドの下に置きすぐに壁一面に作られた棚に向かった。

「あのね、今、首都近くの街から人が沢山来てるみたいでね、薬が全部売れたんだよ!」

 迷う手つきはそこにはなかった。次々に棚から薬草を取り出して行くと、擂り鉢の隣に積んでいく。

「だから、明日も売りに行ってくる。まだまだ冬に向けて買う物があるんだ。今ね、首都や近郊の街では風邪が流行ってるらしいから、風邪薬と喉の薬、それから……」

 乾燥したクズカサ草を持つ手が机に落ちると、同時にユズルの元気な声も止んだ。俯いたその表情は柔らかな黒髪によって見えないが、肩は弱々しく震えている。

「っ……ぇっ、えぅ」

 静寂に響いたのは、微かな嗚咽。しかし、それ以上大きくなる事はなく、目をブカブカな服の袖で乱暴に拭うと、再び手を動かし、黙々と作業を続けた。
 そこにさっきのような明るい話し声はなかった――。
 どれ程時間が経っただろうか。気付けば手元が薄暗く、窓の外を見れば暗闇に包まれていた。

「……ふう」

 息を吐き、机の端に置かれていた古びたランプに火を灯すと、軽く伸びて凝った肩を揉んだ。

「……っ、ぃッ」

 刹那、腹部に鈍い痛みが走り息を詰めた。揺らめくオレンジ色に照らされた室内。痛みと苦しさは徐々にその強さを増し、ユズルは慌ててブカブカのシャツを捲った。

「――ッッ!?」

 左側の下腹部付近に浮かぶ、黒い、模様。その周りは赤く脈打ち、酷く不気味だ。その未知の恐怖に苦痛は増し、凄まじい激痛に立ってなどいられなく、ユズルの小さな体は薄汚れた床へと派手に倒れ作りかけの薬を撒き散らした。

「ぐッ、ぐうゥッ、あッ、あ゙あうッッ!!」

 死んでしまいそうな苦痛の中、ユズルは微かに声を聞いた。それは、どこから聞こえてくるのか、何を言っているのか――わからない。

「ぁッ、ぎッうッ、あ゙……おと、さ……お母、さんッ」

 両親の顔が、脳裏に浮かぶ。光を失った瞳から涙がボロリと溢れると、ゆっくりと瞼が下がっていった。

「ユズル!」
「ユズル!」

 重なる声。それはさっき聞こえたものではなく、よく知った声。
 朦朧とする意識の中、抱き上げられ額と頬、そして腹部を撫でられたのを感じたのを最後に、ユズルの意識は完全に途切れた。


 ***


 夢を見ていた。
 まだユズルが幼く、両親が傍で笑っていてくれていた頃の夢だ。
 ユズルは両親に挟まれたベッドの中で幸せそうに甘え、父親の左手の甲をしきりに撫でていた。そんなユズルに、両親は温かな眼差しを向け、そしてユズルと同じ黒髪黒眼の父親が不意に口を開く。

「ユズルも大きくなれば、きっと体の何処かに“印”が浮かぶよ」
「本当? 僕も、お父さんみたいな綺麗な模様が出る?」
「ああ、きっと」
「……嬉しい。綺麗だもん。なんか、お花みたいだ」
「印は神々に選ばれた者のしるし。ユズルは優しい子だもの。必ず、神々の祝福と加護が与えられるわ」
「僕を、守ってくれるの?」
「そうだよ。だから、私達に何かあっても、きっとその印に宿る――……」

 夢は黒く染まり、幸せは終わりを告げた。

「……んー」

 瞼を上げれば、そこは見慣れない白く美しい天井。しばらく瞬きを繰り返し視界を慣らすと、ゆっくりと起き上がり辺りを見回した。

「わ」

 白く広い部屋の中央にユズルは寝かされていた。しかし驚いたのはそこではない。

「なんでっ、服っ」

 細く肋が浮いた貧相な肢体を隠すものは何もなく、その慣れない開放感に慌てて体を隠すように丸めた。ユズルを中心に丸く囲むようにして散りばめられている青い花には見覚えがあり、ユズルは恐る恐る体を浮かす。――刹那。

「その陣から出てはいけないよ」

 部屋に響いたのは男の優しい声。それは、入り口から聞こえ、見れば白髪の背の高い男を筆頭に、白いフードを被った数人が部屋に入ってきた。その手には複雑な細工が施された剣が握られている。
 ユズルはその刀に怯え、涙の浮いた瞳は縋るように先程の男を見つめていた。男はそれに気が付き、持っていた白い剣を背に隠すように持つと、目を細め微笑む。

「おめでとう、ユズル・アリア」
「……え?」

 不意に紡がれた祝福の言葉に、思わず首を傾げた。

「君はその純潔な精神と肉体を神に認められたのだよ」
「え?」
「下腹部に浮かぶ印をごらん」
「……あ!」

 気を失う前、ランプの明かりの元で見た酷く不気味に脈打つ模様が、今はハッキリと肌に刻まれていた。触れても凹凸はなく、周りの肌と同じでサラサラとしている。

「それは神々の加護と慈愛により刻まれた、神々の祝福。君だけの印だ」
「い、ん? 祝福?」

 混乱する脳は男の言っている意味を上手く処理出来なく、しかし、印、神々という単語に、さっきの夢を思い出す。夢の中の両親は、確か似たような事を言っていた。

「……君は、ナギアに住んでいるのに印の事を知らないのかい?」
「…………」
「まあいい。詳しい事は後で話してあげよう。まずは、君の中に生まれた神を解放してさしあげなくてはいけない」
「僕の、中に?」

 剣を上げ目を瞑ると、周りの人間も似たように剣を抜き中央――ユズルに向ける。刹那、空気が変わった。
 周りを囲む全ての人間が聞き取れない程の早さで呪文を詠唱していく。窓もない室内に風が吹き、青い花弁が宙を舞い、そしてユズルの髪を揺らした。

「っ、いたッ」

 下腹部に感じた痛みに、心臓が跳ねた。脳が、体が、心が記憶した気を失う前のあの激痛。それがまたくるのかと、ユズルは恐怖した。

「やッ、痛いッ、痛いッ、やだ止めて!」
「落ち着きなさい、ユズル。力を抜いて、印に感覚を集中させるんだ」
「やだッ、やだッ、痛いィッッ!!」

 風が強くなると同時に、痛みも増し瞳から零れた涙が次々と舞う。仰向けに倒れ、不意に印を見れば、そこは盛り上がり、光が漏れ何かが出ようとしているのが感覚でわかった。
 その想像を絶する恐怖に、ユズルは喉の奥から擦るような悲鳴を上げた。だが、それは自分の耳には届かず、気付けば体が弓なりに浮遊し、風がユズルを中心に巻き上がっている。その気流に花弁が舞い、見ている者はその神秘的な光景に息を呑んだ。

「――来る」

 男は目を細め、呟いた。

「あッ、あ゙ぁああ゙ああァァ゙あ゙ッ、――ッッ!!」

 全身が大きく痙攣した瞬間、光がいっそう強まり、その場にいた者全てが目を瞑り暴風に体を浮かせた。
 男もまた例外ではなく、壁に叩きつけられた衝撃で一瞬、意識を飛ばしたが、風と光が収まっている事に気付き、慌てて体を起こす。

「――お、おおっ!」

 全ての者が息を呑んだ。
 ハラリ、ハラリと舞う花弁の中、気を失っているのかクタリと脱力するユズルを抱き締める者がいた。
 しなやかで逞しい体に、癖のある美しい白銀の髪。その美貌は見る者全ての呼吸を凍らせ、同時に男の茫洋たる雰囲気に、痛い程の威圧感を感じた。

「おお、神よ……貴方様の名を知る権利を我々にお与え下さいませっ」

 男は些か興奮に頬を染め頭を垂らしながら懇願した。それを見たフードの者達も慌てて膝を付き同じく頭を垂らす。

「――クラウス」

 呟いた甘いテノールは、耳を通じ脳を震わせた。中には声を聞いただけで射精した者達もいて、男も例外ではない。しかし濡れて不愉快な筈の股関を気にせず立ち上がり、二人に近付くと持っていた剣を持ち上げ十字を切る。

「神に愛されしか弱き人の子に加護と慈愛の契約を。少年の全てを受け止め命の共有を」
「――ユズル」
「……、ン」

 重なる唇が熱く、何かが自分の中流れ込んでくるのをユズルは感じた。だが疲労感に瞼が上がる事はなく、口内に入る柔らかな何かを赤子のように吸い、その甘さに安堵感を覚えた。
 さっきとは打って変わり、穏やかな寝顔を見せるユズルの頬を撫で、男――クラウスは小さく微笑んだ。



end
2011.9.27
追記に蛇足→→→
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