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水面(BLEACH/日一)



日一っていうか日→一







きらきらと水面に反射する様を見てふと思った
ああ、とても綺麗だ、と








朝からしとしとと降り注いでいた雨がやんでいるのに気付いたのはいつだったか
期限の迫った書類もすべて片付き、卓上に残すはとくに急ぐ必要のないものばかり
朝から休憩もとらずにやっていたのだ、そろそろ休んだって罰はあたらないだろうとぐ、と背伸びをひとつしてから席を立つ
面倒くさそうにだらだらと書類に目を走らせる副官にすこし休憩がてら歩いてくると声をかけ執務室の扉に手をかければ後ろからはあい、と気の抜けた声が返ってきて
無駄だろうなとは思いつつも、もしサボったりしたらお前の次の休日はなくなるぞ、といつも通りの脅しを忘れずに




昔から、雨のふったあとに歩くの好きだった
ほこりをすべて洗い流し、澄んだ空気の中をなにも考えずにゆっくりと歩く
氷の世界にいるのとはまた違う静かさを冬獅郎はひどく気に入っていた
そっと目をふせ肌で風の流れを感じ、心を休ませる

べつに隊長である事を重荷に思った事はない
若くして隊長となった身、批判ややっかんだ言葉は山程受けてきたがすべてはねのけてきた
せいぜい鳴いてろ
俺は俺の実力で、この地位を手に入れたのだ
何を言われようと痛くも痒くもない


「…冬獅郎?」
ふと声が聞こえゆっくりと振り向く
そこには見知った人物が立っていて

「…冬獅郎じゃなくて日番谷隊長だ、黒崎」
「会うたびそれ言うよなお前……」
「お前がいつまでも俺を敬わないからだろう」
「だって冬獅郎は冬獅郎じゃねえか」
「お前なぁ…」
顔をくしゃくしゃにして笑う黒崎におもわず苦笑
俺を冬獅郎、などと呼び捨てにできるのはコイツくらいだろう
会うたび日番谷隊長と呼ぶようにと求めるもいつも”冬獅郎は冬獅郎だ”などと訳のわからない理論を持ち出し俺の話を聞こうとはしない
…まぁ、今更日番谷隊長などと呼ばれても冬獅郎でいいと言ってしまうのだろうとは思うのだが

「で、冬獅郎こんなとこでつったって何してたんだ?」
「べつに何もしてねえよ。書類も片付いたしちょっと休憩に散歩に来てただけだ」
「ふうん」
目つぶってたからそのまま寝てんのかと思った、と笑う黒崎にんなわけねえだろ、と返し歩き出す
「あれ、戻んの?」
「ああ。あんまり開けると松本がサボってどっかいっちまうからな」
「あー、ね……」

俺にすこし遅れて黒崎が歩き出す
コンパスの差か一瞬で追いつかれ内心むっとするが顔には出さずに前だけを見据える
…俺だって、いつかは黒崎くらいの身長になるはずだ

「おい、冬獅郎!!見てみろよ!!」
「、あ…?」
身長のことばかり考えていたら突然横からぐい、と腕をつかまれる
「おい、黒崎、なに…」
「あれ!すっげえ綺麗!」
腕をはなせ、と言う前に駆け出す黒崎
そのままの流れで引きずられるようにして俺も進む
おい黒崎、今すれ違ったうちの隊士がぎょっとしてこちらを見たじゃねえか
俺の印象どうなっちまってんだ
お前責任とれんのかよ黒崎
”あの日番谷隊長が一護さんにひっぱられてたんだ!”という噂をあの隊士が流さないことを(無駄だと思いつつも)願っていると黒崎が足をとめた
「ほら、冬獅郎!見てみろって!」
「…?」
黒崎が満面の笑みで指差す方を見やれば
「…水たまり?」
「空にかかった虹がうつってんの!」
きれーじゃね?と微笑みながら虹のうつりこんだ水たまりを覗き込む黒崎





――――ああ、これは





「確かに、綺麗だな……」
「だろ!」






きらきらと水面に反射する、橙

虹なんかよりもその太陽のようなお前の笑顔に見とれたと、言えばこいつはどうするのだろうか







男なんかに使うことばじゃないのはわかっているけれど、
ただ、純粋に



(この橙が美しいと、心底思った)



きみがすきだとささやいて





ほう、と溜め息をつきカリカリと日誌を記入するため筆を走らせる目の前の男の長い睫を見つめる
「…のう柳生」
「どうかなさりましたか仁王くん?」
「んー…」
「退屈、ですか?」
待ちあきてしまったなら私など放って先に帰ってくださってもいいのですよ今日は部活もないですしお家でゆっくりするなど良いのではないでしょうかそういえば丸井くんは桑原くんを連れて甘味どころに行くんだと笑っていましたし何か食べに行くのもいいかもしれませんねでもあまり仁王くんはそういう場所に行くイメージはないですしやはりお家で歌でも聞いてゆっくりするのが良いのでは…などとペラペラとよく動く形の良い唇
(噛みつきたいのう…)
「……仁王くん?」
「…ん、ああ、大丈夫じゃ
待っとるけん一緒にかえろ」
な?と言えば少し困った顔をして申し訳ない、でもありがとうございますと優しげに微笑む柳生
きゅっ、と
胸が締め付けられそっと目をそらす
柳生の笑顔は、心臓に悪い
力強く掴まれたかと思うとどくどくと鼓動が早くなり顔が火照ってくるような感覚
つくづく自分は柳生に惚れ込んでいるなと内心苦笑した


好きだ
心底、惚れている
柳生比呂士という人間に。

愛おしくて壊れてしまいそうな程に
お前の名を呟く度胸がしめつけられて
でもそのしめつけは不快ではなくて
口の中で噛みしめるように何度も柳生の名を呼ぶ

柳生

やぎゅう



や ぎ ゅ う 、



「はい?」
「っ!!」
声を出したつもりはなかったのだがいつの間にか音になっていたらしく返事をされびくりと肩がはねた
不思議そうに顔を覗きこまれ慌てて目をそらす
「仁王くん?」
「…なんでもなか」
すまんの、と零せば一瞬きょとんとするもすぐにいえ、とにこりと微笑む目の前の紳士
ああ、もう
(なんでお前はそんなに綺麗に笑うんじゃ)

「…やぁーぎゅ」
「はい」
「…なんでもなか」
「? そうですか?」
「やぎゅっ」
「はい、」
「なんでもなかー」
「もう…」
「やぎゅーしゃん」
「…はい」
「なんでもな」
「仁王くん」

仏の顔も三度までですよ、とぺしりと頭をはたかれてしまった



***



トントン、と日誌が机を叩く音が聞こえ腕枕にうずめていた顔をあげる
「おわったん?」
「ええ、お待たせしました」
「ん、お疲れさん」
「ありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ありません…やはり先に帰っていただいた方が良かったですね」
「何言うとる。俺が柳生さんと帰りたかったから待っとっただけじゃよ」
柳生さんと帰るん好きじゃー、と背伸びをしあくびをかみ殺しながら言う
ちらりと柳生を見やれば
「………え?」
「っ………」
「…や、ぎゅう?」
「ッあ、の……その、あ、りがとうございます……」
「っ―――――…」
私もあなたと帰宅するのが楽しくて好きですよと珍しくうっすらと頬を染め照れくさそうに笑う柳生の姿に目を見開く
(そんな、可愛らしいかお、)
どくどくと心臓が早鐘を打ち息をする事すら忘れてしまいそうで
感情を落ち着かせるよう唇を噛みぎゅう、と拳を握りしめた
「さ、さあ!仁王くん、職員室に寄って帰りまし」
「のう柳生!!」
柳生の言葉を遮るように声を張り上げる
一拍おいたあとコホン、と一つ咳払いをし眼鏡のブリッジをくいっとあげれば目の前の紳士どのは落ち着いたらしく、呆れた表情を投げてよこす(依然頬は紅潮し可愛らしい顔をしたまま、だが)
「…もう…なんなんですか…
私の名を呼ぶだけ呼んで用事はないというやり取りを何度繰り返せば」
「好きじゃ」
「いいんです……か…………え?」
「好きなんじゃ、柳生さんが」
するりと
手に持っていた日誌が柳生の手から滑り落ちる
教室内はドサッという日誌が床に着地した音を最後に無音になった
「…な、に…を…」
「嘘でも冗談でもなかよ
俺は柳生が好きなんじゃ
ずっと、ずっとな」
目を閉じ好きだと呟く
もう、無理だ
止められない。
この溢れ出す気持ちを、誰が止めることが出きるというのだろう
「……………………ッ…ん、な…」
「やぎゅう?」
「…ッ好、きだとか、そんなっ…
仁王くんが、私を…そんなのあるはずが…」
「…残念ながら、本心じゃき」
「ッでも!あなたは何人もの女性と関係を持っていたではないですか!」
私が知るだけでも10人以上の方がいますよと吠える柳生に目を見開く
――そういうのは疎いと思とったのに、知っとったんか
「…それを突かれたら痛いんじゃがのう」
事実やしの、と頭を掻けばやはり…という顔をし肩の力を抜く柳生
――そんなに俺に好かれとうないんか、こいつは
「全員切った」
「え…」
「全員、縁切った。誰も残っとらん。お前だけじゃ」
「っな…!」
「お前だけじゃ、俺が欲しいのは
好きなんじゃ誰よりも
……愛しとる」
「あいっ…!?ッで、でも」
詐欺師の名をもつあなたですよ、信じられるはずありません。…などと失礼な事を言ってくれる柳生にはあ、と溜め息をつく
こいつは多分、人に好かれる事に慣れていないのだ
柳生のファンというものも居るのだがなんせ内気な奴が多いせいで告白も、バレンタイのイベントに乗る事も、その言葉の通り“何も”しない
だから柳生に好意が伝わる事も、柳生自身が好かれていると知る事もないのだ(教えてやれば自信も出るのだろうがわざわざライバルを助けるような真似する必要もないししたくもないが)
初めて告白してきたのが男
しかも詐欺師と呼ばれるダブルスパートナー
信じられないというのも仕方ないのかもしれない。
が、信じてもらわないと困る
この想いを、うやむやにする気はないのだから
「柳生、俺が信じられん?」
「っ……」
「信じられんっていうなら柳生が信じるまで何度でも言うぜよ
…好いとうよ、柳生」
「っあ…」
「のう柳生…好きじゃ…世界一愛してるって言ってもええ
お前さえ居れば俺は…」
戸惑う柳生の腕をひきぐっと強く抱きしめる
「っ苦し…」
「好きなんじゃ、信じて」
お前に信じて貰えんと、俺死んでしまうかもしれん
顔をうずめ小さく呟けば柳生の震える手が俺の背中に回った
「やぎゅ…?」
「見ないでください!」
「っぐふッ!!」
驚き顔を見ようとするも後頭部を掴まれ再び柳生の肩口に強く押し付けられ、動けないようにぎゅう、と抱き込まれる(これは悔しい事に俺より柳生の方が身長が高いせいであり決して俺が抱きつきにいっていたわけではない。というか俺はこれでも抱きしめているつもりだったのだ。最終的に抱き込まれてしまったが。)

「……仁王くん」
「ッ――…!」
仁王くん、とただ俺の名を繰り返す
柳生が話す度に吐息が耳にかかり背筋に痺れが走り抜け目をぎゅっと瞑り耐える

「わ、たしは…」
「……え…?」
「信じていいんですか…あなたのその言葉を」
「なん…」
「あとで罰ゲームだったとか詐欺だったとか…言いっこなしですよ…?」
ゆっくりと頭を押さえつけていた柳生の手が離れる
俺が顔を覗き見ようとするよりも先に
ふわりと
唇に柔らかい感触がひろがった

「っえ……」
「……好きです、仁王くん
私も、あなたの事が
多分あなたが想ってくださるよりもずっとずっと前から
私はあなたの事ばかり見ていました」

耳までを赤くそめあげながら小さな声で告げる柳生

ああ、どうしようか

うまく声が出せそうにない


「や、ぎゅうさん…それ…ほんま?」

肩を掴み緊張の余りひどく震えた声を無理やり絞り出す
なんて滑稽なのだろうか
あの詐欺師の俺が、こんなに無様な姿を晒している

「っ…」
「な、柳生さん。答えて?」
もう一回教えて欲しいと甘く囁く
目の前の紳士殿が小さくばか、と呟きながらもしっかりと頷くのと俺の両腕で力いっぱい抱きしめたのは同時だった






(やーぎゅ!だいすきじゃ!)
(……返品不可、ですからね)
(あほう。返せ言うても返さんわ)


不毛な恋はお止めなさいな(ブンやぎゅ)


ブンやぎゅ←立海





立海テニス部にとって柳生比呂士という者は愛すべき対象である


幸村くんも真田も柳も仁王も赤也もあのジャッカルでさえも
比呂士を心底大切にしていて
願わくば己が恋人になりたいと、そう思っているのだ


今だって

「ね、柳生
この後暇?よかったらお茶でも行かない?」
「なにを…すぐに帰って勉学に取り組むべきだろう
柳生、共に帰るぞ」
「比呂士、お前が読みたがっていた本が手に入ったんだが家まで取りに来ないか?」
「何言うとるんじゃおまんら
柳生はこの後俺の家で作戦会議じゃき
のう、柳生?」
「作戦会議って試合はまだ先だろ?
柳生、どっか寄ろうぜ お前のぶんくらいなら奢れそうだからよ」
「先輩たちうるさいッス!柳生先輩は俺と帰るんスよ!!」


俺だいや俺だと揉める皆にオロオロとする比呂士



ああ、もう




「比呂士!帰るぜ!」
「え、あ、はい」
「ちょっと、やぎゅ…」
「では皆さん、また明日」

さようなら、と律儀に頭を下げ俺の後を追いかけてくる比呂士
ちらりと後ろを見やれば部員たちが悔しげに此方を睨みつけてきていて

ふふん、と勝ち誇ったように振り返り比呂士の手をひく


「ばーか!」

コイツは俺のなんだよ、
立海テニス部に愛される彼の腰を抱きよせ、ライバル達に見せつけるように口付けた






だって比呂士は、俺に夢中なのだから!


不治の病のなおしかた(28)


ああ、ああ!
仁王くん聞いてください助けてくださいどうしたらいいんでしょう!
私はどうやら正体不明の病気にかかってしまったようなんです仁王くんを見ていると胸がきゅっとくるしくなって息をするのすら忘れてしまいそうになるんです
そうかと思えば笑いかけられるとあたたかい気持ちになる、でもその笑顔が他の方へのものだとわかれば泣きそうになるくらいくるしくなって
ああ、ねえ仁王くんこれは一体なんなんですかわたし一体どうしちゃったんですか仁王くんにおうくんにおーくん!


「柳生さん、俺もその病気なってるんじゃ
んでから治しかたも知っとるよ」


それは本当ですかああたいへんだ!仁王くんも同じ病気になっていたなんて!でも治し方を知っているなら大丈夫ですね助かった!ねえはやく治し方教えてくださいよもうこんなつらいのは耐えられないんです!


「あんな、その病気の名前、恋っていうんじゃ
治し方は、」



…え、あの、仁王く…?





ぎゅっと抱きしめ好きだと囁く
のう柳生さん、





この病気は治らんでいいもんなんじゃ、

もっと酷くしていくのがせいかい、
だから俺と付き合ってくんしゃい?



******


いつもとは違う雰囲気の文をかきたかった

28分後のせかい(28)


2→8





炊飯器の米を炊き上げるぐつぐつという音がキッチンに響く
家族は皆親戚の家へ行ってしまい文字通り誰もいないこの連休
まーくんまーくん、といつまでも子供扱いする親戚が煩わしく自分はテニスの練習があるからなどと言い家に残る事にしたが家事(といっても食事の用意程度しかしていないが)をせねばならないくらいなら皆について親戚の元へいけば良かったかもな、と小さくため息をついた
簡素だが既におかずは作り終えている
課題などする気が起きない
シャワーは寝る寸前で充分
暇な時間が出来てしまったが一体何をするか―……
ぐるりと辺りを見渡せばふと、炊飯器に目が止まる
米が炊き上がるまであと28分

もしこの米が炊き上がる28分後、地球が滅びるとしたら俺は今何をするのか

我ながら馬鹿馬鹿しいとは思ったがヒマ潰しだとそのまま考え続ける
28分、
一時間どころか半時間にも満たないその時間ではろくに何も出来そうにない
最後までクリアせずに放置しているゲームも、読みかけた漫画も、欲しいと思ったまま手に入れていないCDも、
28分ぽっちじゃどうしようもない


(あ、)


ふと浮かんだ顔
紳士の異名を持つダブルスの相方
柳生、比呂士

丁寧な言葉使いをし困っている人が居れば放っておけない、そのくせ人一倍プライドが高く負けず嫌い
蓋を開けてみれば腹の中は真っ黒で
眼鏡を手に持ちこんなもの一つで私の真意も読み取れず紳士だ紳士だと持て囃すなんて人間は所詮上っ面しか見ていないんですよ、と笑ったあの時のあいつは多分本当の意味での“柳生比呂士”を俺に見せたのだろう
手の中にあったソレをなれた手つきでかけ直せばいつもの紳士と呼ばれる柳生がそこに居て
細く綺麗な人差し指を俺の唇に押し当て今の話、秘密ですよと微笑んだ時に背筋がぞくりと震えたのは昨日の事のように思い出せる


柳生比呂士
きっと俺は世界が滅びるまでの時間、あいつに会いに行く
肩を抱き寄せ口づけて
そのまま終焉を迎える事が出来ればどれほど幸せか

そこまで考え、ハッ!と笑いとばす
手を握ることすら出来ない関係
なのに口づけるなど無理な話



世界終焉がもしくるとして



それまでに俺はあいつに気持ちを伝える事が出来るのだろうか




炊飯器からはピー、と米の炊き上がったのを知らせる間の抜けた音が鳴った







明日、この話をしてみようか
お前は何をするんだと聞いてみたい
きっとあいつは馬鹿ですか、と俺の好きな笑顔で笑ってくれるはずだから


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