ねえ、こっち向いてよ。
ああ、なんていい笑顔で笑うのでしょうか。
まったくもう、お調子者で、気分屋で、高飛車で、なんて可愛いんでしょうか。
薔子、転びますよ。
久しぶりに会った友人が、薔子いたく可愛がっていってくれたので、なんだか満足そうに見えます。
ああきっとこの子は誰かに愛されていたということが理解できたのだと、勝手に思い込むことといたしましょうか。
日差しがだんだんと暖かくなり、そうしてそろそろ夏が来るのでしょう。
きっと今年も暑いのでしょうね。
何か涼しげな、可愛らしいお洋服が欲しいね。
涼しい顔して笑って、今年も私をほんのちょっぴり苛々させるのでしょうか。
薔子と迎える、2度目の夏がやってきます。
いつぞや「この子はうちの子と違って黒が似合いませんね」と言われてから、お洋服はピンクや白の淡い色にしていました。
いつだって、新しい色に挑戦することはありませんでした。
赤も、似合うだなんて。
もっと早くから、もっと色々な色を着せればよかった。
次は何色を着せようかな。また一つ、楽しみが増えました。
いつの間にか四月も終盤、来月は薔薇が美しく咲き誇る五月です。
桜ももう葉の方が多くなりました。
何だか寂しいような、切ないような。
薔子、今度一緒に薔薇を見に行きましょうか。
二人で行ったら、きっとお気に入りの薔薇が見つかるね。
妖精みたいね。
薄い、透けるような桃色の羽があったらどんなに似合うのかしら。
春の陽気に誘われて、そろそろ蝶々が舞い始める頃でしょうか。
薔子の頭に蝶々が止まって思わず笑ったのは、昨年の春であったでしょうか。
どんなに美しいセットよりも自然の中の方が麗しい。
甚大な被害を及ぼすのも自然ですが、こうして心を和ませ、優しく包んでくれるのもまた、自然なのですね。