ボクの携帯の待ち受け画像は『宇宙』。いや、『星空』?
まぁ、どっちでもいいや。
ボクは今日、とても貴重な経験をしました。
貴重と言っても、誰しも人生の内一度くらいはあるんじゃないでしょうかね?
ただ単に、別れました。
ボクの場合、世間一般とは少し、違うけど。
ボクは男。相手も男。
彼はボクに何度も「アイシテル」を囁いてくれました。
彼の「アイシテル」はイコール「抱かせろ」でしたが、ボクはそれが幸せに感じていたので不満はなかった。
彼のマンションの合鍵を貰っていたボクは好きな時に彼の家に出入りできました。
が、いきなり家に行ったら迷惑だろうと、ボクは彼の家に行く前には電話を入れていたのです。
昨日は彼とボクが付き合った日、つまり『記念日』でした。時は流れ彼との交際は驚く事に一年を通過しようとしていた。
流転は万物の基本ですね。
彼を驚かせようと、連絡無しに彼の家に行く事にしました。
皆さんお気づきでしょうが、有りがちな展開ですよ。
寝室から聞こえた男の喘ぎ声。
あぁ、気持ち悪い。
ボクもあんな気持ち悪い声を出していたかと思うと、吐き気が襲ってくるようだった。
そして決定的な言葉、
彼の『アイシテル』
その『アイシテル』が、顔も知らぬ男に囁かれていた。
ボクだけに囁かれていたと思ってた。だけど違った。
ボクが浮気相手なのか、今、彼に抱かれている男が浮気相手なのか。はたまた男もボクも不特定多数の一員なのか。
凄く悲しかった。彼にとってボクは性処理器だったのだろうか?ボクは彼を愛して『る』のに。いや、愛してい『た』のに。
もはや過去形。
愛していたいけど、その気持ちより『裏切られた』という思いが強く、割り切れた。
「お邪魔します」
「な、お前…!ど、して…!?」
寝室に乗り込んだ。
彼は驚きに瞳が開かれ、男は「誰だコイツ。邪魔するな。」と瞳が語っている。
ボクは素っ気ない彼を振り向かせるため必死だった。それはもう、みっともないくらいに。
だけど、今から。
そんなボクにサヨナラさ。
「今までアリガトです。
そしてサヨナラ。」
「ちょ、待てよ…!」
彼は慌ててボクに腕を伸ばすけど、彼は男と繋がったまま。
突っ込まれている男が切な気に鳴いた。続きをねだるように。
もう、彼に愛情は湧かないが、ボクに不快感を与えるのには十分すぎた。
元より、彼の家に私物を持ち込まなかったボク。
この家には多少の未練はあれど、ボクの痕跡はない。
この家の鍵なんて、もう必要ない。ふむ、合鍵は何個あったのかね?無用心だな彼は。
「ね、キミのくれたこの合鍵。一体何個の合鍵が存在したの?
まぁ、もうボクには関係ないけれども。合鍵は返すよ。
じゃあね、今まで、お世話になりました……」
彼に合鍵を投げ付けて寝室を出た。悲しいハズなのに、涙は不思議と出ない。
彼の視線が背中にささる。
ボクは携帯をパカリと開けた
アドレス帳を出して彼の痕跡を消す。そして非通知設定。
待ち受け画像にもどると、広がる長方形の『小さな宇宙』。
その小さな宇宙にボクの瞳が映り気付いた。赤い瞳のボク。
確かに愛していたのだ。
裏切られて悲しくないハズがない。愛も冷めて割り切れはするが、裏切りを見た直後だ。
心に傷がついたのだろう。
『小さな宇宙』をみてボクは思った。小さな宇宙には沢山の星が散りばめられていて、『星空』のようだと。
よく耳にする言葉、『男なんて星の数程いる』って。