蛇一家

大蛇を飼う者がいた。
飼ううちに、毎晩蛇に体をくるんでもらって眠るようになり、蛇との間に不思議な絆を感じていた。

ある日その蛇が何も食べなくなった。
それは何週間も続き、飼い主がなにくれと手を尽くしても改善することはないため、心を痛めた飼い主は病院へ連れて行った。

症状を聞いて獣医は、
「夜、蛇と一緒に寝たり、あるいは蛇があなたのすぐ近くで体を伸ばしてすり寄ってきたりしましたか?」
と尋ねてきた。

飼い主が、全くそうだ、毎晩一緒に寝ていても、何もしてやれることがなくて途方に暮れていた。
と答えると、

医師は言った。
「この蛇は病気ではなく、あなたを食べるための準備をしていたんですよ。」

「毎晩あなたの体の大きさを測って食べたあとどのくらい体が膨れるか確認していたんです。
そして、あなたを消化するために胃を空っぽにしていたんですよ。」



蛇の真髄は毒牙ではない。
確実に獲物を食うための周到な頭脳にある。

毒はそのための、ひとつの道具に過ぎない。


蛇の飼い主は蛇の牙を抜いていたようだが、蛇というものを知らなかったのであろう。