暗闇の中、泣いていた。



決意


彼の顔、手を当てていたら手が少し濡れた。なんだろう、思いつつも特に気に留めてはいなかった。

ベッドの上。目をつむっている彼に『寝るの?寝そう?』何度か聞いた。その度に彼は「眠くないよ」って答えるのだけど、あまり信じていなかった。
疲れてるなら寝かせてあげたいけど、でもさみしいなって思う気持ちも確かで。

何度目かの問いかけ。「あっち向いてて」と言う彼。言われたとおり彼に背を向けると後ろから抱きしめられた。

「正直言うとね、いま泣きそう。」

抱きしめる力が強くなる。

「仕事でね、ちょっと。ごめん、一回思い切り泣いてもいい?」

はい、答えると、後ろから涙、噛み殺す声が聞こえた。抱きしめる力が弱まると、ベッドにうつ伏せになった彼。頭を撫でると嗚咽が聞こえた。

子どもみたいに泣く彼に、自分も胸が痛くなった。たしかに、今週の彼は大変そうで、それが理由なのか森田にはわからないけれど、でも、どうして気づいてあげられなかったのだろうかと。

彼を思いやれるひとになりたいと、そう思っていたはずなのに、森田はけっきょく自分のことばかり考えていたんだ。


『誤魔化さないで。素直に感情吐き出してください。』
「もぅーうるさいーー」

せめて、想いを素直に吐き出してくれたらと。




『さっき泣いてた?』
「少し」
『一人で泣かないでください』
「……俺は年上だしさ、仕事でも先輩だしさ、難しいんだよ…」


泣いたのは初めてだと彼は言った。いままではパチンコとか言って誤魔化してたと。今日は安心して泣いてしまったと。

男のひと、しかも年上に泣かれたらヒくってひといるかもしれない。けど森田は、愛しいと、そんな気持ちが溢れたのです。それと同時に、彼にとって安らげる、弱音の吐ける場所であろうと、改めて誓ったのです。

森田がしあわせにしてあげたいのです。