ツイッターに投下した、近土でドーナツ話です。
いちゃいちゃというより、真選組でキャッキャしているだけのような…www
ツイッターで2話に分けていた物をくっつけました。
追記から本文
ログイン |
BSR小政と銀魂近土にhshsしています。 妄想垂れ流しなブログ。 時々2.5次元もあるのでご注意。
ツイッターに投下した、近土でドーナツ話です。
この人との日常はいつも唐突だ。
二人して本庁に出向いた帰り道。迎えの車中で突然近藤さんが「ちょっと歩きてぇな」と言い出し、止める間も無くかぶき町にさしかかる信号でそそくさと車を降りてしまった。
一瞬あっけにとられ、次第に小さくなる彼の背中を僅かな時間見つめた後、土方は大きなため息をついた。
そしてこのまま発車していいのかと、此方を泣きそうな目で見つめる隊士に先に屯所へ戻るよう指示し、近藤を追って外に出る。
「近藤さん、何勝手に降りてるんだよ」
「今日は朝からずっと座りっぱなしだったじゃねぇか。体が鈍ってしょうがねぇ。トシだって体バキバキだろ?」
「だからって、真選組局長が隊服着たまま一人で出歩くな」
この人はいまいち自分の立場というものが分かっていない…というか分かっていても敢えてそれをぶち破った行動を起こすことが多い。
現に真選組で最も命を狙われやすい人物だというのに、共も付けずに歩き回ろうとしている。
真剣を携えた近藤の強さは誰よりも知っているが、何が起こるか分からない世の中である。
しかし近藤は悪びれもせず、しれっと答える。
「でもトシも一緒に降りてきたから一人じゃないじゃん」
「そりゃいきなり車降りられたら追いかけるに決まってんだろ」
「それに最近中々二人で散歩なんてできなかったしさ、たまにはいいだろ?な?」
「散歩って…まだ勤務時間だぞ…」
局長としての危機感のなさに苛立つが、朝から会議続きだった上に帰ったら書類の山が待っているこの状況は、確かに少しは体を動かしておきたい。
そして近藤と二人きりで歩けるという境遇ににやけそうになる自分に、隣で局長の安全を守るという大義名分を無理矢理押し付けたのだった。
「トシ、マスドのドーナツ半額だって」
近藤が土方を呼び止めたのは、全国チェーンのドーナツ屋の前だった。
「100円セールはよくやるけど、半額は中々ないよな」
「知らねえ」
甘味に興味のない土方にはこの店のセールになる頻度など知る由もない。
近藤は店の前に掲げられた看板を見つめたままだ。
「近藤さん、そろそろ行…」
「なぁ、買っていこうぜ」
「はぁ!?」
「だって見てたら食べたくなったんだもん」
だもん、じゃねぇよ。可愛くねーんだよ。
「トシはどれがいい?」
「いらねぇ」
「えー美味しいのにぃ」
ドーナツを背に口を尖らせこちらを恨めしげに見詰める髭面の男は、隊服を着ていなければ確実に不審者だ。
「俺が甘い物好かないの知ってるだろ」
「疲れてるときにスイーツは効くんだぞ」
「スイーツ言うな気持ち悪い。いらねぇよ」
「ちぇー、じゃあ俺買ってくるから待ってろよ」
そう言うなり、近藤は自動ドアの向こうへ消えていった。
「えっちょっ…近藤さん!?…結局行くのかよ…」
店内は客で溢れており、近藤が戻ってくるまで多少時間が掛りそうだ。
「ったく…勝手なことしやがって…」
そう悪態をつきながらも律儀に店の前で煙草を片手に待っている自分も大概である。
ゆっくりと煙草2本分を吸い終えた頃、近藤が戻ってきた。
「悪ぃ、遅くなった」
「おー…って、あんたどんだけ買ってんだ!!」
近藤の両手にはでかい袋が4つずつぶら下がっている。
「あいつらにお土産」
あいつらとは勿論、泣く子も黙る真選組隊士のことだ。
土方はムサい男共が揃ってドーナツにぱくつく光景を一瞬想像して、頭を振りかぶった。
「安いからってわざわざ買わなくてもいいだろ」
「どうせなら仲間皆で一緒に食べた方がうめぇじゃん」
こうやって隊士達を部下ではなく仲間として見て労う所が、近藤が絶対的な信頼を得ている所以の一つだろう。
やはりこの人は大将の器だ。
土方は近藤の無意識下レベルのちょっとした行動に改めて尊敬の意を表した。
それと同時にこの人を大将に掲げ、隣にいることができる自分に少しの優越感を持つ。
近藤の一言はいつも唐突に土方の心を掴んでくる。
「でもちょっと買いすぎたかも…あ、勿論トシのもあるぞ」
「だからいらねぇって」
結局、局長だけに荷物を持たせるという状況を見かねた土方が半分持ち、2人共両手にドーナツを抱えて帰路に付いた。
休憩室にたむろする隊士たちに近藤が声をかける。
「ただいまーお土産だぞー」
「局長、副長お疲れ様っす!」
「あっマスドだ」
「今半額セールやってるんすよね」
「うぉーあざーっす局長!!」
あっという間に袋に手が伸びる。
「俺ポンテリング〜」
「おいエンジェルクリーム寄こせ」
「局長何にしますか?」
お前ら何でそんなに詳しいんだ…。
いかつい野郎共の口からポンポンと可愛い商品名が飛び出す様子を土方は若干ドン引きした目で見ていた。
自分の想像以上にミスマッチな光景だ。
土方は砂糖と油の匂いとムサさに胸やけを起こしそうになり、長く居座るのは危険だと踵を返す。
「副長、食べないんですか?」
山崎が声を掛けるも「いらねぇ」とつっけんどんに返す。
「何でもマヨぶっかけて団らんをぶち壊す奴なんざいらねぇでさぁ死ね土方」
両手にドーナツを持ち、モッサモッサ口に運びながら沖田がいけしゃあしゃあと山崎に応える。
「つかてめーは今見廻り中のはずだろ総悟ぉぉ!!」
土方の抜刀を簡単にかわした沖田はドーナツを咥えながら
「いきなり刀持ち出すたぁ…これだからコミュ障はいけねぇや」
ヒラリと姿を消した。
「あんのサボり魔が…っ」
もういい、とりあえず部屋に戻ろう。
今度こそ休憩室を後にした土方だったが、廊下に出てすぐに呼び止められてしまった。
「トシ」
「何だよ近藤さん、疲れてんだよ帰らせろ」
「ほい、これトシの分」
いきなり袋を掌に落とされたので、反射的に受け取ってしまった。
「だから甘い物は…」
「それ甘くねぇよ、パイだから」
「パイ?」
中を覗くと、確かにパイが二つ入っていた。
「ハムマヨとフランクパイ。これならお前食えるだろ」
「マヨ…」
近藤がわざわざ自分にの好み合わせて選んでくれたことへ驚くやら嬉しいやら、そしてその感情を隠そうとした土方の表情は一瞬歪んだものになった。
「こんなもんまで半額なのか」
「や、それは定価」
「へ?」
「トシは特別だぞ。他の奴らには内緒な」
ニカッと笑う近藤の顔を見て、いよいよ土方は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「お、おぅ…」
「で、先に部屋で待ってて。一緒に食おうぜ」
「一緒に…」
「うん、好きな奴と一緒に食うのが一番美味いじゃん」
「好…っ」
今の一言で土方は色々と吹っ飛んだ。
「あと何か飲み物…」
「…部屋には緑茶とマヨしかねぇぞ」
「マヨをカウントするな。じゃあ俺持ってくわ。すぐ行くから」
去っていく近藤が唄う調子っぱずれな鼻歌は、ちょっと前に流行ったドーナツをテーマにした曲だった。
「あぁもう…っ」
本当にこの人との日常は、唐突ばかりだ。
E N D
性 別 | 女性 |
系 統 | 普通系 |
職 業 | その他 |
血液型 | A型 |