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+ 真っ白な中の彼

深深と雪……

ごうごうと風……

ただ白い大地……

恐怖……



此処は何処だ

先は見えず……



深 深 深 と降り積もる雪の上を、此処まで辛うじて踏んで来たのだ

辺りは白色に覆われ、薄い絹の裏側から当てた光のように、程良い明るさが目には優しい

とはいえ、耳障りな風は、ごうごうと無駄に脳を働かせるような音を響かせ、煩わしい


─風の音はどこから発せられているのか…?


此処にまた、無駄な思考を費やすが、あまりの耳の痛さに考えるのを止めた



振り返らなくても、今来た道にはもう、自分の踏んで来た足跡は残っていないであろう事はわかっている

ごうごう深深と冷たく重い降り物が、瞬く間に覆い被さり、『今』だけを残すのだ

過去の歩みはこうも簡単にかき消され、ただ…今だけの自分が白い大地に立っている

見渡す限り真っ白な此処には、先行く道も、足跡すら埋め尽され、ポツリと佇む自分の立つ場所が


『今』だ



相も変わらず、風はやかましく、切るように冷たい…

僅かな光に優しさを感じるものの、目を見開く事等到底出来そうにない

騒音のようにも聞こえるごうごうは、止めたはずの思考をまた知らぬ間に動かし、耳にぶつかって音を出しているのだと気付く

そのものに音等なく、自分にぶつかり初めて、鬱とうしい音を出すのだ…


─いつまで降れば気が済むのだろうか…


冷たい雪は、もうかれこれ永遠とも思える程ずっと以前から降り続け、これでもかと言う有り様には、


─空の雪はやけに沢山あるのだな


と、馬鹿げた妄想にまで及ぶ始末だ

もちろん見る限り、大地を埋め尽す程の雪が大量に存在するようには見えない

そんな現実からずれた、粋狂な事まで考えてしまう自分が可笑しい

防寒具の一つでも身に付けてくれば良かったのだが、割りと急ぎ足でここまで来てしまった

こんな事なら、最低限の準備もしておくべきだったと悔やんでも、今更どうする事も出来やしない

見事なまでに、東西南北、四方八方、同じように真っ白になってしまい、

─どうしたもんか…

と、途方に暮れる

もちろん、方角などすでにわからない


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約束の身体


その身に纏った幾重もの衣を
全て取り払ったお前の肌は

さらけ出され空気に触れられ
色彩を妖艶に漂わす

ひと肌の仄かな温もりが
薄い膜を肌に作るように

俺の指の侵入を待ちながら
敏感さを向上させている

暖かいその膜の内側に
欲を帯びた指を滑り込ませ

お前の肌に直接触れると
小さな振動で伝わるお前の『淫』

指で無く体いっぱいを使い
無心に抱き締めた身体からは

溢れた欲情が俺をも満たし
その時すでに交わりは始まっている

指、腕、息、唇、身体

指と髪、指と舌、指と肌、指と……

最後にお前自身に潜り込んだ時には
既に何度となく一つになった後だ

こうして俺は約束を果たす

瞳はその身体を映す為

鼻は汗の匂いを嗅ぐ為

耳は吐息の漏れを聞く為

髪はお前に撫でられる為

指は途切れる吐息を誘う為

唇は身体中に愛を伝える為

舌はお前を潤わせる為

俺自身はお前の中に入る為

それぞれに決められた約束を守り

俺の身体は役目を果たす

お前を愛する絶対欲の約束

そこに愛の言葉なんて



時として全く必要としない





笑夜


+ 水、何時かは


上流から流れ来る水の群れ

岩場にぶつかり

段差で泡立ち

ザワザワと音を立てながら

しかしまだ視界から消えぬ内に

地は穏やかな平地になり

水は音もなく緩やかになる

流れてはいるのであろう事は

水面の揺らめきで辛うじてわかる


激しく泡立ち音醸し出す水

ゆらゆらと煌びやかに漂う水


どちらも同じ水の群れ

これが流れに身を任すと云う事だ

やがて群れは巨大な幅を造り

大海原へと辿り付くのだ

やがて性質すら変化させ

上も下もなく引力に留まる

それでも尚、波になって

大きな流れに身を任す

更には太陽に乾かされ

天に昇り、また留まり

恵みとなるのを繰り返し

ただ繰り返し待ち続けるのだ

次から次へと流れ行く水の音を

ただ目を閉じたまま聞き

そんな事を考えている俺は

流れを止めた水溜まり

どれだけの歳月を股にかけようと

激しくも緩やかにも

形や性質すら変えようと

留まらない水の群れは恵に変わる

留まるだけの水溜まり

いつしか腐り濁るのを待つだけ

いっそ乾ききる事が出来れば

天に漂い、天に留まり

またやり直せるものを……





笑夜



+ 67億/1、1割る67億


67億もの人が居る

俺はその67億分の1だ

面白い……

消え入りそうな数字だもの

数にするとそんな感じ

その中の誰かたった一人

その悩みを67億で割ると

俺の持ち分はどの位だろう

俺の持ち分と俺一人の悩み

同じ大きさならどうしよう

それではあまりに不公平だ

俺の悩みは軽すぎるじゃないか


ならこうしよう……


67億全ての悩みを足して

67億で均等に割ればいい

全ての人が平等に悩めばいい


でも何だ


結局今より悩むんじゃないか


俺もまだまだだな





笑夜



+ 憧れのヒーロー


俺の憧れる人物

それは、坂本龍馬でも

それは、前田慶次でも

それは、ファンバステンでも

それは、ボブ・マリーでも

それは、ジョセフ・ジョースターでも

ましてや、尊敬する父親でもない


心の中に居る架空の人物

それが俺の憧れるヒーローだ


信念確固として揺るぎなく

闘志は脈々と内に秘め

優しさはき違える事なく

自惚れに悠々と打ち勝ち

誇り歴然と高く

寂しさ身を持って知り

人知れず僅かな涙流し

強固な器は底知れず

立ち姿、凛と一筋に

瞳、輝きつつ憂い

掴みどころに困惑させ

臨機応変に不自然ななく

星の数程の引き出しは

さながら未来のポケットの様

空は飛べずとも

踊るように前進し

ベルトがなくとも

常にヒーローな彼

名前なんてない

変身ポーズもない

腕力は程々に

それでもいつも、いつでも

臆する事無く敵と闘う

そんな心の憧れのヒーロー

彼の様になりたい

でも少し無理がある

彼の闘う最大の敵は

俺自身なんだから……





笑夜



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