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12



言い訳どころではない。

俺は頭の中が真っ白になって、ただただ、
口をあんぐり開けているしかなかった。

友人も言葉が浮かばないらしく、
こちらを向かずに、俺の脚の方を見つめたまま動かない。

かえって、見られていると言う気恥ずかしさに


「……っ」


余計反応してしまい、
余計酷くなる。

ふと、潮の香りがした。

視線だけを障子に向けると、
半分ほど開いており、
窓も同じぐらい開けられていた。

丁度満月がその枠に納まって
青白い光を部屋へ注ぎ込んでいた。

視線を戻すと丁度友人の黒髪が目に入った。


『やぁっ!!もっと!!』


あの時と同じ、黒い髪。


「……」


あの時と違う、香り。


本能的な生々しいそれとは違った。


「え……」


オードレ・シトラス。







「もう、いっぺん抜くもんヌけ」
「なっ!?」


浴衣の合わせから滑り込んできた指先の感触に
思わず腰が引けたが

「あ、まっ……」

もう片腕で背中を支えられていたので
逃げるに逃げれず、

「やめっ、にぎ、る」
「黙れって。
早くおわんねぇだろ」

下着から抜き出された欲を軽く握りこまれて、
顔をしかめるしかなかった。

既に先走りが伝っていたそれに
指を絡められ、

ゴツゴツした感触が
幹を上下に動いて軽く扱き上げる。

俺はそのリズムが早くなるにつれ息も上がり、

「はっ、くっ……」

必死に閉じようとしていた脚も、
だらしなく開き、その刺激を受け入れた。

遠くから、波の音が聞こえる。

俺はそれに意識を集中させた。

早くこの粟立つほどの快感を終わらせたくて。

「しっかし、立派なもんだねぇ」
「だま、れっ……」
「しっかり硬くして何言うかねこの人はっ」
「くっ!」

先端の窪みに爪を立てられ背をそらす。

そしてヤワヤワとカリをもみしだかれ、
裏筋をなぞられ、
そしてまた、激しく濡れた音を立てる様に追い上げる。

やはりここは同性だからだろうか、
感じる所は同じなのかもしれない。

もう少しで絶頂を迎える。

だが、今ひとつ、何かに欠ける。

俺はこのまま好きにされているのも
なんだか癪だったので、

「……」

友人の背にそっと手を伸ばして、

「え、」

背骨に沿ってすっと指を滑らせると、

「ひゃっ!?」

その刺激に感じ、甲高い声をあげる友人。

それが


『あぁぁっ!!?』


先刻の情事を思い起こさせて、


「くっ!?」


ドクンッと、濃い欲望を放ち、


「あっ……」


その飛沫が友人の顔にかかってしまった。

11



ドウカシテイル


髪に触れていた指先は
するりと首筋をなぞり


アレハマボロシ


滑らかな肩の線を
掌で触れた。


アレハダレ?


そして鎖骨へと流れて、


ココニイルノハ……、





「何考えてんだ!」
「痛っ」


友人に頭を思いっきり殴られ
俺は背を丸めて頭を抱えた。

ズキズキと激しさを増していく頭の痛みに反比例して

「俺、今何した……」
「何もしてねー」
「いや、したから殴られ……」
「疲れてんだよ」


忘れろ。


友人はそう呟いて背を向けた。

ワスレロ。


そう、全ては幻。


俺は、悪い夢を見てただけ。


部屋がシンと静まりかえる。

夜の澄んだ空気が心地よく、
俺は軽く息を吸い込んだ。

すると、

「風呂、入ってサッパリしろよ」

頭を冷やしてこいと言われたような気がした。

だが、

「起きるのも億劫だ」

怠そうに答える俺。

「しゃぁないな」

そうボヤいて友人は
俺の後ろ頭をボリボリ掻くと、

「あ、おいっ」

俺を横から抱きかかえる様にして
上半身を起こそうとした。

また近づいた友人の体温に
俺は先程のこともあり狼狽えてしまった。

それにも関わらず
世話をやいてくれる彼に感心した。



ところが、

「マジかよ」
「え……」

友人の呟きに声を漏らす。

俺は何を言っているのかわからず言葉を待った。

そして言われた呆れに、

「ちゃんと定期処理しろよ」

俺は心底自己嫌悪した。

「は?一体なにを……」


自身の欲が

張り詰めていたことに。

10 現と幻(ウツツトマボロシ)



友人は俺の真横で胡坐をかいて、
顔を覗きこんできた。

薄暗くも、
表情がよく見えるほど近くにある
整った顔立ちを目に、

俺は意外なものを見たような気で
すぐに言葉が頭に浮かばなかった。

それに気づいたのか、
友人が眉間に皺を寄せた。

「何か言えよ」
「女と一緒じゃ……」
「お前なぁ」

手にしていたタオルで額を叩かれ、
後からじわりと来た痛みに顔をしかめた。

「悪い」
「ジューショーですね」

友人は溜息をつき
俺の頬を掌でぺちぺち叩いた。

その指先が冷えているのに気づいて、

「え?」

俺は咄嗟にその手を掴んだ。

思わず声を漏らした友人に
俺はハッとし、だけどその手は放せないでいた。

「何よ、」
「あ、いや、悪い」
「別に悪かないけど」

きょとんとした表情に、
俺は思わず強張った空気が緩んでしまった。

「手、やけに冷たいな」
「あぁ、これだろ」

そう言って俺の眼前にぶら下がれた
褐色色した小瓶。

「元気ハツラツぅ?」
「君のバカさ加減にウンザリだ」
「バカ言え。可愛いもんだい」

いやならようお気張りやすぅ。と言って
また俺の頬をぺちぺち叩いた。

サラサラと揺れる黒髪。

あの時の汗にまみれ、
顔に張り付いた黒髪とは違う。



気づいた時には、



「それは、ちょっと」
「あ、」



俺は友人の髪に触れ、
指に絡めていた。







9



そこには、
少し斜面になった岩の上で、


「あっあっあっやっあっぅん!!!」
「奥までぐっしょりだ」


あの時いた外国人の男の眼前に
日本人の男が大きく脚を開いていた。

立派な肉棒はそそり勃ち、
そこから下を辿った先は、


「もっと!なか、ぐちゅぐちゅ、してぇっ!」
「指が4本でも緩々だな」


太く、長いであろう両手の人差し指と中指を
赤く熟れた秘所が飲み込んでいる。

そこから流れる白濁した蜜は
差し入れられた指を、腕を伝って、
ポタポタと地面に垂れ落ち跡を残す。

俺は悦楽に溺れた日本人の顔を凝視した。

だらしなく口を開き、
呂律の回らない口で激しく鳴き叫ぶ。

ドクン、と大きく心臓が鼓動すると同時に、


「はっ、くっ……」


腰が重くなるのを感じた。

俺はその感覚にハッとし、

「クソッ……」


これ以上ここに居るのが怖くなって、
またその場から駆け出してしまった。








「……お前ホント大丈夫か?」

部屋の中でまた血色悪く立ち尽くしていた俺に
友人は今度は呆れ顔を向けた。

「病院いくぞ」
「いや、本当に違うんだ」
「んな顔して、何が違うっての」

友人が手を伸ばして
俺に触れようとするものだから、

「っ!」
「え?」

俺は思わず体をビクリと、
強張らせてしまった。

その様子に友人は怪訝そうな顔をしたが、

「……もう寝ろ」
「あぁ」

すぐ何事もなかったような顔をして
俺から離れた。

「昼間の女は?」と、俺が尋ねると、


「軽いね」


そう言って部屋から出て行った。







深夜ふと目を覚めると、


「え?」
「お、わりぃ」

友人が俺の額に手を添えていた。

8



俺はその音を耳にした途端、
足を止めてしまった。


くちゅっ


動機が激しくなるのが、
自分でも解る。


じゅぷ、じゅぽ……。


息苦しさで、
眩暈がした。


俺は大きな岩に背を預け、
上下する肩のリズムにあわせ、
必死に空気を吸い込む。


「やっ、あぁ……」


泣き声のような、


「そこ、もっと……あぁっ!くぅ」


悲鳴のような、


「やっあっあっ!こ、こわれる!
奥が、グリって、いって」


男の声。


正面には静かな海原が広がる。

見えない右奥からは
激しさを増す男の喘ぎ声。

俺とそれとの狭間にある


境界線。


俺の中に、
恐怖が支配する。

だが、

それを凌駕する。


「……っ」


本能的な興味。


俺はゆっくり岩から背を離すと、


「……」


境界線の先に足を踏み入れた。


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