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第三話




朝は珈琲一杯だけで覚えたての
煙草をふかしながらマンガを読む。



薄暗い店内の高い天井に
吊された古びたライトの光の中で
ゆらぐ煙草の煙を見上げながら…
「キングクリムゾンの宮殿」
(イギリスのロックグループの
デビューアルバム)を
聴きながら過ごす時間にも
心地好い青春を感じていた。



所々小さくかけたくすんだ
珈琲カップに…バネの壊れた
革製の椅子、安物のスチール製の
灰皿が無造作に置かれたテーブル…


ここが俺達のベースになっていた。






そして10時になると天神の
パチンコ屋に行く、といった
自堕落な日々を過ごしていた。
そしてパチンコで勝った時は
天神の地下街を何往復もし、
女の子をナンパして遊んでいた。




第二話



あれは俺が高校を卒業し大学受験に失敗して福岡の予備校の寮にいた18の夏だった。温暖化が取り沙汰されている今よりも暑い…そう…日照りが続き福岡も給水制限が実施されていた夏だった。




予備校にも慣れ、同じ寮の同じ階にいた宮崎出身の村上晴彦という悪友ができたばかりの頃だった。晴彦は身長は低く160ちょっとしかなく、髪は茶髪でクルクルと如何にもおばさんパーマをかけたような天パーだった。




5月も終わりになる頃には早くも俺達は予備校の授業をサボるようになっていて、毎朝8時に寮を出ると予備校でタイムカードを押し、そのまま予備校とは反対の道、当時は予備校生ばかりが通るということで、通称「親不孝通り」と呼ばれていた通りを天神方向に200メートル程行き左に曲がったところにあった、一見洒落た「パッション」という名の喫茶店に行く。




そして薄暗い店内の茶色の革が所々破れた穴を黄色のガムテープで繕った、ちょっと体重をかけるだけでギシギシと壊れそうな音をたてる古い椅子に座る。



第一話




29になる今までに俺が好きになったり付き合ったりした女は12人。その半数の6人の女がもういない。「いない」というのは俺の近くにもういないというのではなく、この世にもういないという意味。


俺が殺したわけではないが、女達にとって俺は死に神だったのかも知れない。


6人の女達の中で、不思議と心の奥底にへばりついて決して消えることのない女がいる。その女は佐々木結(ゆい)。
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