あの方がわたしを見つめて下さらなくなったのはいつからでしょうか。
いいえ、そう言ってしまっては語弊があります。
最初からあの方がわたしを見てくれていなかったことに、わたしは気付いていたのですから。
あの方はわたしをその逞しい腕で抱いて下さったけれど、一度だって愛しては下さらなかった。
わたしをたっぷりと夜に酔わせた後、まだ深くなる闇の中をご自分の部屋へ帰られるあの方に、愛されたかった。愛されたかった。
久方ぶりに宮に呼び寄せられたわたしは、同じ立場の同じような身分の姫君の数に驚き、そしてまた、あの方の比類なき寵愛を一身に受ける彼女の、その露骨すぎる待遇に、噂には聞いていたとはいえ驚きました。
あの宴の席でも、あの方の視線の先には、彼女がいました。
彼女は大胆にも、舞ってみせました。
それはわたしが今までに見た、どんな踊りとも違ったのです。
どうしてそんなことができるのかわたしには分かりませんでした。
彼女のその美しさが妬ましかったのです。
そして彼女自身にその自覚がないことがまた、一層わたしには妬ましかったのです。