その肌に、同情の余地は皆無だ。
獣のように黒く毛深い四肢。汗の迸る肉体の酷使により出来上がった、雄々しく逞しい肉の緊張。骨と血液に忠実に寄り添う、自信に満ち溢れた確実な質量。
男の体臭は、私に獣になれと命じる。私は、それに抗うことができぬ。その逞しさに、自我を忘れてしまいたい一心で、身を委ねてしまう。一度そうしてしまえば後はただ盲目的に、瞬時の迷いさえ無く、もはや義務的とさえ言える慣れた腰付きで内部を暴かれる。対象に対し何の感情も抱きはしない代わり、私はそれを完璧な彫刻と見る。男というマナ的な絶対神。常に私に対峙しているそれは、その時初めて私を引き摺り込み、侵食する。快感とともに絶頂を迎えた二頭の獣は共に果て、息つく間も与えず、寝不足をも厭わず、互いの肉体が朽ちるまで繰り返す。暗幕の向こうでは陽が登り、沈む。次第に損なわれていく私という固有名詞。肌は擦れ血が滲み出し、神経がピリピリと痛み始める。それは血走る眼差しで、わたしの肌に無数のスティグマを刻印する。私はもはや痛みを感じない。恍惚とした盲目の世界の中で、自らを解放し、棄却することができる。
ああ、分かるだろうか。
この、肌を。