話題:小野不由美作品

私が初めて手にした小野不由美作品は「十二国記」でしたが、なんの切っ掛けで読み出したのか全く覚えてないんですよね。歳とは恐ろしいもんです(…)。

ただ、あれほどのめり込んだ小説は未だかつてありません。文字通り、寝る間も食事する間も惜しんで読んで一週間ほどで全巻読破したのには自分が驚いた。いや勢いもあったんでしょうけど。そうさせるだけの力があの本にはありました。

その後、「魔性の仔」「東亰異聞」「黒祠の島」と手をつけて辿り着いたのが「屍鬼」。


村という閉鎖された空間において、人の狂気や潜在する罪悪を丁寧に書かれていると思います。それも地理的に心理的に「閉鎖された」村であったから可能だったのかなと。

描かれた悪よりも存在する悪と言いますか、村人や屍鬼にもそれぞれ行動を起こす理由があり、それが正しいか否かを判断するのはどちらでもなく読者なんでしょう。だから「屍鬼」の中には悪も正義も歴然たる線引きはされず、どちらにも感情移入出来るだけの描写がなされている。
それは人の抱く生々しい罪悪を浮き彫りにしたと思います。

全体的にほどよい緊張感が漂い、途中だれた部分もありますが、それを挟んでの最終章にかけては正に怒濤。緩急のある構成は逸品。確かにだれた部分は疲れますが。

静信の描く「カインとアベル」は村にとっての静信なのか、人間にとっての屍鬼なのか、もしくはその逆なのか。何回読み返してもその時々で解釈が変わり、それがこれの面白さでもあります。

活字ばっかりの長編(文庫全五巻、ハードカバー全二巻)大丈夫、最近の読書に飽きた方には物は試しでお奨めです。

これ読むと「黒祠の島」がいくらか物足りなく感じるんですけどね。
その内、他の作品にも手を出したいです。悪霊シリーズはゴーストハントとして漫画で読んでますが、ツボは安原さんだと思います。ナイス。好き。


……ところで疑問なんですが、静信の宗派はなに。作中で静信の髪型に関する描写がなかったので勝手に短髪程度に解釈してましたが、正しかったのか疑問……。

……そこも読者の想像力にまかせるってやつでしょうか。

だとしたら凄いです、小野主上。

でも、もやっとします。