いつでも出れる準備をしておいて。
さっき親から連絡があった。
長くはない、という意味だ。
血圧も低下してて、尿量も減っている。
身体が乾燥してきている。
もうあまり機能していないみたいだ。
お参りに行って、元気になるよう祈って。
神様でも仏様でも、何でもいいから助けてください。
ホントに、連れていかないで。
まだ、彼女は生きなきゃいけない。
自分の世界は小さいもので、知らないことがたくさんあって、まだ捨てたもんじゃないって、きっと思うから。
今なら、絶対思えるから。
私達は、どこか他人事のような気がしていた。ベッドの彼女は誰か別人で、彼女はフラッと現れるんじゃないかって。
ベッドに寝てても、きっと朝には目覚めて、皆どうしたのって笑うような気がしてた。
実感なんて、沸いてほしくない。
認めたくないよ、ねぇ。
こんなことをしている間にも、彼女は何を考えているんだろうか。
もしも、みんなのこえが聞こえるならば、生きようって思ってくれるだろうか。
一度は諦めた世界を、またもう一度頑張る気になるだろうか。
私が入院してた時に、お見舞いに来てくれたよね。
そして一冊の本を買ってきてくれた。
それは、今思えば、彼女の心を映していたのかもしれない。
なんで、ちゃんと読まなかったのかな。
今更読んでも遅いのに。
後悔ばっかりだよ。
なんで、なんで。
ごめんね。
本当に、ごめんね。
叔母さんは、自分の娘を見たとき、本当に辛かっただろう。
想像しただけで苦しい。
凄く後悔してた。泣いてた。
自分ばかり責めて、責めて。
あの時どうして、そればかり。
あと十分早ければ。
買い物に出掛けなければ。
信じたくなくても、事実は重くのし掛かる。これが現実なんだ。
間に合わないかもしれない。
私は遠いから。
あぁ、何でこんな遠くに来たんだろう。
おばあちゃん、おじいちゃん、叔父さん、まだ連れて行かないで。
生きるのは酷かもしれない。私達の我儘かもしれない。
だけど、生きてて欲しいよ。
今は奇跡を信じよう。
話題:好きな人を思い出す曲。
専門学校の友達とご飯に行って、その時にKから電話がかかってきた。
最近は毎日電話してくれて、そろそろかかってくるだろうと思ってたところだった。
電話をしてるあたしの顔がにやけてた。証拠写真を撮られてて、何かあたしってこんな顔してKと話してたんだなぁって。
確かに、前にKにも言われたことあった。そんな嬉しそうな顔して話してんなよって。
いや、無意識でしたが。
眠ってる時も、Kの着信はあたしの耳に入ってくる。
Kはいつも、いつかけても出てくれてありがとうって言ってくれる。
一緒にカラオケに行った時に歌ってくれたあの歌を、最近何度も聞き返してるよ。
一緒にいる気がするから。
早くケリつけるよ。
Mも王子も、これからのことも、Kが本気なら乗り越えてみせるから。