いつかの気持ちの良い秋空の日ぶりにこの街へ戻ってきました。久しぶりのこの街はしんしんと雪が降り積もっていて、冬の香りがつんとわたしの鼻を掠めました。何もかもを吸収して、春に溶け出してしまう冬が好きです。


病気

つい二日前に以前から病気にかかっている祖母の容態が悪化したとのことで、急遽実家へ飛んで戻ってきました。

車椅子を押しながら、一緒に話をしたり笑ったりしながら、どんぐりや栗を広い集めた秋の日からそんなに日も経っていないのだけれど、声も出なくなり、痛みに耐え、完全に寝たきりとなっている状態を目の当たりにしました。

死を望む人間に対して、生を望む残酷さ。生を望む人間に対して、死を望む悲痛さ。このやりきれなさだけが、遠い遠い宇宙の真っ暗で深遠なそこらに投げ捨ててやりたいものです。もう二度とわたしや大切な人の目に触れることのないように。

掠れた声で「よく来たね」と言う言葉に、わたしがこうして仕事や学校を放り出して駆け付けたこと、きっと後悔することはないでしょう。握り締めた手の冷たさを、命ある彼女の体に触れられたことを、本当に良かったと思っているのです。

今のわたしには自分が何を望んでいるか分からないのだけれど、どうか、どうかどうか。祈るばかりで。