●5章前編2
時は遡り、黒兎に導かれレイルイがバッドエンドの世界にやって来たシーン。
とにかく片っ端から探すしかないと思い覚悟していた二人だったが、歩いている最中も黒兎が道の先に現れ、ふとした時に消えてはまた現れて此方を待っている。
白兎の記憶の断片なのか、願望が形になったものなのかは分からないが、まるで幽霊のようなその現れ方に、レイは背筋を震わせる。ルイはそんな弟の手を取り、安心させて二人で先を急ぐ。
歩いて行くと、白兎の家が見えてきた。そこまでたどり着くと、黒兎は急に姿を消した。
すると消えた場所から今度はアリスにが現れ、家の中へ入っていく。
その途中、一枚の紙を落としていったので、レイは拾って届けに行こうとするが急に家は廃屋のような外観に代わり、朽ちてしまった。
唖然としているとまた黒兎が現れ、道を走っていく。着いていく先々に思い出の場所があり、アリスは紙を落としていく。
最後にモノクロの樹の下でアリスは二人を見て「ありがとう」と呟き、今度こそ消えてしまった。
モノクロの樹から、ひらひらと最後の紙が舞い落ちてくる。レイはそれをー……
<分岐選択>
●掴んだ。
その最後の紙を束に重ねると、紙の束が一冊の日記になっていた。それは主治医のシラヌイに言われて書き始めた、現実のライの日記だった。
誰かに対する文句こそ多いが、様々な出来事が楽しそうに書かれていた。
あの楽しかった日々を思い返せば、白兎もアリスの代わりを作ろう、その為に邪魔な存在は殺してしまおうなんて思えなくなる筈だ。
二人はこれを持って、現れた扉を潜る。そこには組み合っているシアン達がいた。
駆け込んだ二人は、日記を白兎に見せる。読み始めた白兎は段々と泣きそうな顔になっていく。しかし、最後のページを読んだ瞬間、白兎は勢い良く日記を閉じた。
「これを見せて…僕が改心すると思ったの?」
白兎は怒りの表情で睨んでくる。「この…最後のページを見て…僕が涙を流して、ごめんなさいなんて…言うとでも思ったの!?」
その最後のページには、短い謝罪の文章と現実のアリスが飛び降りをして命を経った日付が生々しく残されていた。
しまったと思うレイだったが、もう時遅く、白兎はナイフを間近にいたシアンに突き立てる。お腹に刺さり、シアンは崩れ落ちるように倒れ込む。
ライの悲鳴が響く。「兄ちゃん、兄ちゃん! 兄ちゃん!!」その姿が、自分の弟の姿と被る。白兎は次にレイへと標的を変え、ナイフを降りかざす。
咄嗟に庇おうとしたルイは、背中を刺されてしまう。崩れるルイを、レイは泣きながら抱き締める。
再起不能になった四人を見下ろし、白兎はライの腕を引く。
「僕と一緒に行こう、アリス」血に濡れた兄の姿から視線を離せないライは、半狂乱になって白兎の手をふりほどこうとする。