別れ
―「最後に一回だけって言ってるじゃん」
そう言って口づけを要求する以前は好きだったかもしれない人を、其の人は鼻で笑いました。
―「あなたには、もう、万に一つも可能性はないのに」
そんなことを言う冷たい人だったなんて、罪悪感はないのか、と言い募る相手を、自分が罪悪感ごときで口づけをする様な人間と思っていたのかと奇妙な程醒めた考えを持って見つめながら、自身のその冷静さに、其の人は些か疚しさを覚えておりました。
新たな購読者様方、本当にありがとうございます。今日の夕飯は、大分奮発してみようと思います。