「では、あなたは今何を見たんですか?」
(創作/キルスティとディックの母)
「見えたのはね、精霊よ」
海の民はそう答えた。
精霊とはシャルエントでは火、地、風、水を司る精神体である。
大精霊は各々一体らしいが、中精霊や小精霊は各地を飛び回っている。
「精霊?何の?」
「…ごめんなさい。よくわからないの」
「まあ。どうして?」
「四大精霊の特徴に当てはまらないの。でも精霊らしい形だったのは間違いないわ」
「もしかして…ゆっ…」
「…ゆ?」
「ゆーれー!い、いやー!!助けて〜!!お父さんー!ディックー!」
女性は慌てて家族を呼びながら逃げてしまった。
少女はもう一度海の方向を視たが、そこには何も視えなかった。
一体、あの薄紫の精霊体はなんだったのだろうか?