殺さなくちゃいけない殺さなくちゃいけない殺さなくちゃいけない
目の前の誰かを刺す、刺す、刺す
なんで殺さなくちゃいけないのかなんて分からない、だけど、そう思うから、必死に殺す
そんな俺の後ろに誰かが立って、
「っ・・・・夢か・・・」
最近日課になり始めた朝に色んな意味で息を吐き出す
最近ずっとこうだ、ここに引っ越してからずっとこんな夢を見る
しかも、恐い夢だと言うのに途中で目を覚ます事も出来ない夢
そんな夢ばかり見るせいか最近ではずっと頭が痛い
「引っ越すべきかなぁ」
何度目かになるこの言葉を吐き出すだけ吐き出して行動に出ないのは金銭的にも色々な意味で優しくないからだ
部屋から出るとリビング、共有スペースはいつの間にかハロウィン仕様になっていて辺りを見渡す
リビングから見える小さな庭も、リビングと庭を遮るガラスも、色々な所に溢れ変えるジャックランタンを通りすぎた時机にあった赤い何かがついたナイフに目がいった
ハロウィンようの小道具だろうそれの周りには十字架や赤い液体が詰まった注射器など色々あって、その中でこれだけに目がいったのは、
「なんで、ここに」
このナイフが夢に出てくる、自分が夢で振るうナイフとそっくりだから
無意識に息がつまる
ゆっくり、ゆっくりと手を伸ばす
あと少し、あと少しで手が届くそんなとき
「すごいでしょ」
「世間に合わせて我が家もハロウィン仕様に」
「「してみましたー」」
いきなりの声に肩が震え手が止まる
振り返れば同じ家に住む双子と目があった
灰色の髪を持った二人は、にやにやと生け簀かない顔をしていて、二人してひょろ長いしかしきっちりと筋肉のついた肢体を持っている男で
あまり深く関わったことは無い
そんな二人が自分に声をかけた来た
しかも、楽しそうな意地の悪い顔のまま
ピンポイントに手を伸ばしかけていたナイフを持っていて
「特にこれ、すごいでしょ」
僕が作ったんだ
光を反射してキラキラと刃が光る
偽物だよという声が右から左へと流れる
視線にはあのナイフ
どくりどくりと心臓が跳ねる
視界がぼやける
フラッシュバックする夢
「「ねぇ、*****」」
その声に、表情に、肩が震えた
ごくりと息を飲み込んで、必死に笑顔をつくって、何か、何か言って、怪しまれないように、早く、
焦る気持ちを落ち着けて、二人に背を向ける
出来る限り、怪しまれないように早足で部屋に逃げ込めば見慣れたそこに安心感から力が抜けて座りこむ
どっと汗が吹き出て、息が落ち着かない
ああ、なんで忘れてたんだ
あの二人は、あそこにいた、あの夢にいた
あの二人が自分にナイフを渡して、あの二人が言ったんだ、殺せって、そう言って、ずっと俺を見て笑ってた
そう思うとなおさら怖くなった
なんで彼らが自分の夢に毎日出てくる?なんで彼らがそのナイフを偶然にしても作った?なんで、なんで、なんで
分からないことが次々と沸いてきて、たくさんの恐怖が積み重なってここから出なければと言う気持ちが強くなった、その時
嗅いだことの無い甘い臭いが鼻腔をくすぐる
花のような果物のようなお菓子のような分からない複雑なそれ、どこから来るのかと辺りを見れば小さな部屋にある窓が開いていて、ああ、あそこからと思ったら最後、意識が遠くなっていった
最後に背に持たれたドア越しに誰かの笑い声が聞こえた気がした
気がつけばいつもの夢の中にいた
薄汚い路地のような一本道
いつもならすぐに向こうから誰かが来て、それを殺していくのに、今回は違う
二人、あの双子がそこにいた
瞬間的に恐怖が体を駆け巡る
彼らに背中を見せて走り出す
走って走って走って、彼らを引き剥がした気
いたのに、なのに、彼らは自分の目の前にいて
「逃げるなんて酷いなぁ」
「そうそう、僕たちは君の事を」
「「こんなに愛してるのに」」
その声の後、自分の腹に凄い衝撃が来たと思ったらそのまま頭にも
ぐらぐらと揺れる視界、ぎらぎらとこちらを見つめる四つの目
「「そう、君を夢に呼んじゃうくらい」」
もう離さないから
最後に聞こえた言葉が全てただの夢だと願う